細胞小器官の機能|細胞の構造と機能(2)

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

細胞の構造・細胞膜の機能|細胞の構造と機能(1)

 

今回は、細胞小器官の機能について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. 細胞質には、さまざまな機能を営む細胞小器官が含まれている。
  • 2. ミトコンドリアはATP合成の場、リボソームはタンパク質合成の場、ゴルジ体はタンパク質を梱包発送する場、リソソームは異物・不要物処理の場である。
  • 3. 小胞体には、リボソームが付着した粗面小胞体と付着していない滑面小胞体があり、細胞工場、物質輸送、貯蔵の場である。

 

〈目次〉

 

細胞小器官〔 organelles 〕の機能

細胞質には、種々の機能を営むミトコンドリア、リボソーム、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、中心体などの細胞小器官が含まれている(図1)。

 

図1細胞の構造

細胞の構造

 

ミトコンドリア〔 mitochondria 〕

細胞が生命活動を営むために必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)を分解するときに得られる。ミトコンドリアは発電所に相当する小器官であり、エネルギー源であるATPを合成する

 

ATPはadenosine triphosphate の略で、アデノシンに3個(tri)のリン酸が結合したものであり、リン酸同士の結合部分にエネルギーが蓄積されている(高エネルギーリン酸結合)。ATPは細胞のあらゆる活動にエネルギーを供給するので、ミトコンドリアは、肝臓腎臓筋肉、神経のようなエネルギー代謝の盛んな細胞ほど発達している。

 

リボソーム〔 ribosome 〕

リボソームは、RNAの一種であるリボソームRNA(rRNA)とタンパク質からできている。からの指令を運んできたメッセンジャーRNA(mRNA)の情報に基づいて、タンパク質を合成するので、リボソームはタンパク質合成の場ともいわれる。

 

リボソームは、直径15~20nmの粒子で、小胞体膜に付着しているものと、細胞質中を自由に浮遊しているものがある。リボソームが付着した小胞体を粗面小胞体とよぶ。

 

小胞体〔 endoplasmic reticulum:ER 〕

小胞体は、細胞工場物質の輸送貯蔵の場である。小胞体には粗面小胞体と滑面小胞体の2つのタイプがある。

 

粗面小胞体〔 rough ER(rER) 〕

膜表面にリボソームが付着しざらざらに見えるため。粗面小胞体で合成されたタンパク質は、粗面小胞体内腔へ輸送され、ゴルジ体を経由して細胞膜に運ばれたり、分泌されたりする。

 

滑面小胞体〔 smooth ER(sER) 〕

膜表面にリボソームが付着していないため滑らかに見える。滑面小胞体は、タンパク質合成にはかかわらず、コレステロールの合成や分解、脂質代謝、薬物の解毒、カルシウムの貯蔵などの機能を担っている。細胞膜を構成する脂質もここでつくられる。sER は、副腎皮質細胞やライディッヒ細胞(精巣)など、ステロイドホルモンを合成する細胞で発達している。骨格筋と心筋のsERは、筋小胞体とよばれる。

 

ゴルジ体〔 Golgi body 〕

粗面小胞体から輸送小胞の形で、ゴルジ体に送り込まれたタンパク質に多糖類や脂質を加え、リポタンパク質や糖タンパク質の合成を行うタンパク質の形に修飾し、荷造りし送り出す(分泌する)。ゴルジ体で修飾されたタンパク質は、細胞外へ放出されるか、細胞内に輸送される(例:小胞体で作られた加水分解酵素などをリソソームに蓄える)。そこで梱包発送の場とよばれる。

 

リソソーム(ライソゾーム)〔 lysosome 〕

リソソームの中には種々の強力な加水分解酵素が含まれ、細胞内に進入した異物や細胞内の代謝物や不要物を消化処理する。そこで異物・不要物処理の場とよばれる。

 

中心体〔 centrosome 〕

中心体は2個の中心小体からできており、細胞分裂の際、紡錘糸を形成し、染色体の移動に関与する。細胞分裂中は、紡錘体極(有糸分裂時の紡錘体の両端部分)としてはたらく。

 

※編集部注※

当記事は、2016年2月1日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

核の機能、タンパク質の合成|細胞の構造と機能(3)

 

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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