細胞の構造・細胞膜の機能|細胞の構造と機能(1)
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、細胞の構造~細胞膜の機能について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師
Summary
〈目次〉
細胞、組織、器官、器官系の関係
生命体を構成する基本的単位は細胞である。ヒトの身体は約30兆個ものさまざまな細胞から構成されており、同じ種類の細胞が集まって組織を構成する。さらに幾種類かの組織が組み合わさって心臓や肝臓といった器官となり、それぞれ独自の機能を発揮する。さらに種々の機能をもつ器官が集まって器官系をつくり、器官系が協働することによって特別の機能をもつようになる。
生体はいくつかの器官系から構成され、全体として統一のとれた生命活動を営む個体が形成される(表1)。
表1細胞、組織、器官、器官系の関係
細胞は、生命活動を営むための最小の機能単位であり、いずれの細胞も必要な物質(栄養素や酸素)を細胞外から取り入れ、不必要となった物質(代謝産物)を細胞外へ排出する。
ヒトの身体を構成する細胞は数百種類(約200~300種類)あり、形や役割はさまざまである。ここではすべての細胞に共通する典型的な構造と機能について述べる。
細胞の構造
細胞の内部には核と細胞質があり、それらは細胞膜(形質膜ともいう)で覆われている。リン脂質2重層で構成された細胞膜が、細胞内外を仕切ることによって細胞内外の物質の出入りを制御し、細胞内の恒常性を維持する役割を担っている。
核は、核膜で覆われ、細胞の遺伝情報の伝達やタンパク質の合成等を制御している。細胞質の中にはいくつかの細胞小器官が入っている。細胞小器官は、細胞の生命活動の維持のためにそれぞれ特殊な機能を営んでいる(図1)。赤血球は、成熟の課程で核を細胞外に出す(脱核)ので核を持たない。
図1細胞の構造
細胞膜の機能
細胞の表面を覆う膜は、リン脂質の2つの層(リン脂質2重層)から構成されている。このため、酸素や二酸化炭素などのガス体や脂溶性の物質は細胞膜を自由に通過できるが、水や電解質(Na+、K+、Ca2+等のイオン)のような水溶性の物質は透過できない。
細胞膜は、このように細胞内外の物質の出入りを制御しているが、生命維持にとって不可欠な電解質や栄養素(グルコースやアミノ酸等)の出入りなくして細胞は生存できない。
脂溶性以外の物質の出入りを制御したり、細胞内外の情報交換を行うために、リン脂質2重層の中には特殊なタンパク質がさまざまな形ではめ込まれている(図1)。
これらのタンパク質には、特殊な化学反応にかかわる酵素、情報の伝達にかかわる化学伝達物質やホルモンなどを受け取り、細胞内へ情報を伝える受容体(レセプター)、水溶性物質、特に水や電解質を移動させるタンパク質(チャネル)、ある物質と結合し、細胞内外への物質輸送を行う担体、また細胞膜の外側に頭を突き出したタンパク質に糖質が付着した糖タンパク質(糖とタンパク質の結合体)等がある。
糖タンパク質は、血液型を決定したり、免疫系細胞では細菌やウイルス、毒素と結合する受容体として働くなど、さまざまな役割を担っている。
※編集部注※
当記事は、2016年1月28日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版