転職するならどの病棟?種類や違いも解説! 病棟看護師の仕事内容・役割・給料
看護師が働く場所として最も一般的なのが「病棟」です。病棟看護師の仕事内容は多岐にわたりますが、診療科や病棟の機能などによっても、それぞれ特徴があります。
幅広い病棟看護師の仕事について、さまざまな病棟の特徴とともに紹介します。
目次
病棟看護師の仕事内容・役割
現在、看護師として働いている人の8割以上は病院に勤務しています。その多くは「病棟看護師」です。
病棟看護師は、実にさまざまな業務をこなします。主な業務は、次のようなものです。
【病棟看護師 主な業務内容】
- 患者さんのアセスメント
(疾患や状態に関する情報収集・バイタルサインのチェックなども)
- 清拭・入浴介助などの清潔ケア、排泄ケア
- 採血・点滴・注射などの処置
- ドレーン管理
- 与薬・服薬管理
- 配膳や食事介助
- 看護記録
- 手術・検査出し
- 予定入院の情報収集やオリエンテーション対応、退院支援
- 緊急入院の対応
- 患者さん・ご家族が抱える不安などのケア
…など
病棟看護師は複数の患者さんを受け持ち、それぞれの疾患・状態などに合わせて異なるケア・対応が求められます。
幅広い知識・ケアの技術のほか、必要な情報を整理する情報収集力、優先順位を考えながら行動する判断力、チームで協力して業務を進めるコミュニケーション力などが大切です。
病棟にはどんな種類がある?特徴は?
病棟にはさまざまな種類があり、看護師の仕事内容・働き方も少しずつ異なります。
病棟が担う「機能」ごとに種類と特徴を見てみましょう。
- 急性期病棟
いわゆる7対1、10対1病棟のこと。短期に集中的な治療が必要となる患者さんが入院します。重症度の高い方が多いですが、急性期の入院期間は7~14日などと短く、患者さんの入れ替わりが激しいのが特徴。看護師には、緊張感のあるスピーディーな対応が求められます。
- 地域包括ケア病棟
急性期の治療を終えた患者さんや、在宅で過ごしていて状態が悪化した患者さんが入院します。在宅復帰を目指して治療やリハビリを提供する病棟で、1カ月ほどの入院が多く、急性期よりやや落ち着いた雰囲気です。在宅との連携に関心のある人に向いています。
- 回復期リハビリテーション病棟
地域包括ケア病棟と似ていますが、よりリハビリを重視した病棟です。脳血管疾患や骨折などの患者さんが入院します。看護師には患者さんの自立を促す関わり方が求められ、理学療法士(OT)・作業療法士(PT)・言語聴覚士(ST)との連携も大切になります。
- 慢性期病棟・療養病棟
状態の落ち着いた患者さんが長期にわたって療養する病棟です。介護ケアが多くなりますが、必要な医療処置・ケアも多々あります。看護師の受け持ち人数は急性期よりも増えますが、3~6カ月の長期入院の方が多いので、患者さんにじっくり関わりたい人に向いています。
最も病床数が多いのは「急性期病棟」ですが、上のように、ほかにもさまざまな種類・特徴の病棟があります。
自分の興味・関心や得意分野、働き方の希望に合った病棟を幅広く探してみるのがおすすめです。
このほか、小児科、産婦人科、呼吸器内科、整形外科…など、診療科によっても、必要な知識や手技などに特徴・専門性が加わります。必ずしも希望する診療科に配属されるわけではありませんが、いずれ異動できる可能性も踏まえて検討してみましょう。
現在、最も多くの看護師さんが働いている「急性期病棟」ですが、国は「急性期病棟が増えすぎた」として、その数を減らす方針です。
そのため、2年ごとの診療報酬改定のたび、特に7対1病棟に対して「より重症の患者だけに特化して」「入院日数はもっと短く」などの厳しい条件が出されています。これにより、病棟のベッドコントロールや看護必要度の運用が変わるほか、病院全体の収入にも大きな影響が出ています。
一方で、急性期の代わりに増やそうとしているのが回復期(地域包括ケア、回リハ)の病棟です。診療報酬改定などでも優遇されています。
この流れは、これからもしばらく続くでしょう。
病棟看護師の1日
24時間、切れ目なく看護を提供するため、病棟看護師は夜勤のあるシフト勤務が基本。
大きく2交代制(日勤・夜勤)と3交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)に分かれます。以前は3交代制が主流でしたが、最近では2交代制の病棟のほうが多くなりました。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、自分の働き方や身体リズムに合う職場を選べると良いでしょう。
病棟日勤のスケジュール例
病棟看護師の「日勤帯」のスケジュール例を見てみましょう。
【8:00】始業・情報収集
病棟に出勤したら、患者さんの情報収集を行います。その日の予定を把握し、業務・ケアをスムーズに組み立てるための大切な時間です。余裕があれば、点滴などの準備も。
【8:30】朝のミーティング・申し送り
夜勤中の患者さんの様子について申し送りを受けたり、チーム内で情報を共有したりします。
【9:00】午前の病室ラウンド
入院患者さんのバイタルサインの測定やアセスメント、環境整備を行います。
【10:00】患者さんのケア、検査出し・オペ出しなど
受け持ち患者さんの清潔ケアや点滴などの処置を行ったり、予定の検査・手術がある患者さんを担当部門まで送り届けたりなど、チームで連携しながら業務を進めます。
【11:30】昼食介助・配薬
患者さんの昼食の配膳・介助を行います。昼食前後の配薬や血糖チェックも。
【12:30】休憩
【13:30】午後の病室ラウンド・患者さんのケア
昼食の摂取量を確認したり、口腔ケアを行ったりします。このほか、点滴などの処置・入浴介助・清潔ケア、検査・手術などから戻ってこられた患者さんのアセスメントなども。
【15:00】病棟カンファレンス
カンファでは、気になる患者さんの看護計画や退院支援などについて、チームで話し合ったりします。
【16:00】看護記録の記入・申し送り
日勤帯の患者さんの状態や注意が必要な情報などを夜勤メンバーに引き継ぎます。
【17:00】終業
キャリアアドバイザー
病棟によっては「ロング日勤(8:00~20:00など)」の変則交代制を取っているところもあります。
病棟夜勤のスケジュール例(2交代制)
次に、病棟看護師の「夜勤帯」のスケジュール例を見てみます。
2交代夜勤の場合、1回の勤務時間は「15~17時間」となるケースが平均的です。
【16:00】始業・情報収集・申し送り
病棟に出勤。夜勤帯の患者さんの情報収集や点滴などの準備を行うほか、日勤メンバーからの申し送りを受けます。
【17:00】病室のラウンド
患者さんに挨拶しながらバイタルサインの測定・状態観察、必要に応じて点滴交換などを行います。
【18:00】夕食介助・配薬
患者さんの夕食の時間になったら配膳・介助、夕食前後の配薬・血糖チェックなども。
【19:00】患者さんのケア、就寝前の与薬など
【21:00】消灯
【23:00~5:00】定期的な病室ラウンド、看護記録、点滴チェック、仮眠
定期的に病棟を巡回し、就寝中の患者さんの状態に気を配ります。点滴や排液のチェック、体位交換など必要なケアも。合間の時間で記録を書いたり、1~2時間の休憩・仮眠を取ったりします。
【6:00】採血、バイタルサインのチェックなど
起床した患者さんの採血やバイタルチェックを行います。
【7:00】朝食介助・配薬
【8:30】申し送り
出勤してきた日勤メンバーに、夜勤中の情報を引き継ぎます。
【9:00】終業
キャリアアドバイザー
残業の多い・少ないは病棟によって差があります。
面接の時に待遇や勤務条件ばかり質問するのは避けたいところですが、働き方に制限があるなどで、入職前に残業時間についてどうしても確認しておきたい場合があるかもしれませんね。
そんなときは「こちらのみなさんは何時ごろお帰りになっていますか?」など、やんわりとした聞き方をするのがベターです。「残業は多いですか?」など直接的すぎる質問は、面接では控えましょう。
病棟看護師の年収・給料
病棟で働く看護師の平均年収は、およそ400万~550万円が相場となっています(常勤)。
准看護師の場合、1割ほど低くなる傾向です。
夜勤もこなす病棟看護師は、看護師の中でも稼げる働き方。年50万~70万円ほどの夜勤手当があるので、夜勤のない外来などに比べて、ぐっと高くなります。
ただし、ひと口に病棟看護師と言っても、地域や施設による差も大きいでしょう。
一般に「都市部の病院ほど高い」「規模の大きい病院ほど高い」という傾向です。
病棟看護師のメリット・デメリット
病棟で働く看護師のメリット・デメリットをまとめました。病棟の機能や施設の特徴などによっても異なりますが、一般に次のような特徴があると言えます。
病棟看護師のメリット3つ
1看護師としての実践力を磨ける
病棟業務には、看護師としての基本が詰まっています。
病棟で働く看護師は、看護に必要な知識や手技・ケアのスキルを身に付けられるだけでなく、多様な業務のこなし方、患者さん・ご家族への対応、他職種とのコミュニケーション能力など、しっかりとした実践力が磨かれます。
複数の病棟を経験すれば、ジェネラリストとしてステップアップできますし、大学病院や規模の大きい病院、専門病院などの専門性の高い病棟で、スペシャリストを目指す道もあるでしょう。
2給料・年収が高い
夜勤もこなす病棟看護師は、看護師の中でも高い給料・年収を得られるのが魅力です。
特に夜勤への抵抗がないという方で「年収アップを目指したい」「転職で収入を下げたくない」と考えている場合は、やはり病棟勤務が良いでしょう。
3職場の選択肢が幅広い
施設数も求人数も圧倒的に多い病棟。規模・機能・特徴もさまざまで、看護師にとって「自分に合った病棟を探しやすい」のは、なんと言っても大きなメリットです。
大学病院などに限定すると県内に1施設しかない場合もありますが、一般病院であれば、複数の候補から自分の関心や向き不向き、条件に合わせて検討することができ、希望の働き方を叶えやすいでしょう。
病棟看護師のデメリット3つ
1忙しい
病棟看護師は担当する業務が多く、多忙です。
ルーティンの業務・ケアのほか、緊急入院などの割り込みタスクや、その場その場で臨機応変な対応が求められることが多く、予定通りに行かないのが当たり前。急性期病棟では、特に慌ただしさを感じる人も多いかもしれません。
2夜勤の負担が大きい
病棟看護師は業務の多忙さに加え、日勤・夜勤を繰り返す働き方のため、心身の負担を感じやすいと言えるでしょう。
夜勤は睡眠時間などの生活リズムが崩れやすく、体質などによって「どうしても夜勤に慣れない…」という方もいます。そうした方には、夜勤のないクリニックや介護施設、訪問看護などが向いているかもしれません。
また、シフト勤務なので休日は不定期になりやすいですが、その分、クリニックなどに比べて夏季休暇や年末年始の休みは長く取れる傾向があります。
3病院・病棟間の違いが大きい
「病棟」とひと口に言っても機能・診療科はさまざまで、業務内容や働き方、待遇・福利厚生などについても、その幅はかなり広くなっています。
その分、自分の希望に合った条件を探しやすい良さがありますが、転職先を選ぶ際には慎重に検討する必要があります。
「自分はどんな病棟で働きたいか」を落ち着いて考え、病院見学などでもしっかり確認してみましょう。
病棟勤務はこんな看護師におすすめ!
病棟勤務が向いている看護師さんは、次のようなタイプ・特徴の方です。
- 看護師としてこれからもスキルを磨いていきたい
- 医療的な処置も患者さんのお世話も好き
- テキパキと仕事するのが好き
- チームの中で働くのが好き
- 給料・年収は下げたくない
- 夜勤もOK!
- より希望に合った条件で働ける環境を探したい
病棟看護師は業務の幅が広く、疾患やケアの知識・手技を深く学べるほか、患者さん・ご家族・他職種との関わり方でも経験値を積みやすく、看護師としてまんべんなくスキルアップしていきたい方に向いています。
ただ、さまざまな業務をこなす必要があり、スピーディーに動ける判断力や行動力が求められます。
病棟はチームで動くので、同僚ナースはもちろん、医師などの多職種とのコミュニケーション力も大切になります。
病棟勤務は夜勤があるため、夜勤がそれほど苦にならない方、「夜勤なしで年収が下がるよりは夜勤ありで年収維持・アップしたい」という方におすすめです。
また、病棟は求人数が多く、職場探しの幅も広いのが特徴。
「回復期の看護を経験してみたいな」「もう少し自宅に近い職場で通勤の負担を減らしたい」「今よりも働きやすそうな職場ってあるかな」など、さまざまな選択肢の中で転職を検討したい方に良いでしょう。