精神科病院で働く看護師の仕事内容・役割は、一般科(身体科)と異なる点も多く、具体的にイメージしづらいかもしれません。
精神科病院の看護師のお仕事について業務内容や働き方、給料、やりがいなどを解説します。
目次
精神科病院で働く看護師の仕事内容・役割
精神科病院は、統合失調症やうつ病、依存症、認知症など、精神疾患の患者さんに必要な治療・ケアを提供します。
精神科病院で働く精神科看護師の仕事内容・役割は、主に次の4つです。
精神科病院の看護師の主な仕事内容・役割
- コミュニケーションによる心理的ケア
- 患者さんの状態のアセスメント
- セルフケアの援助
- 与薬
コミュニケーションによる心理的ケア
精神科看護では「患者-看護師間のコミュニケーション」そのものが、重要な看護ケアの一つです。
患者さん一人一人の背景や病期を理解し、信頼関係を築きながら、その人らしい生き方を支援することは、精神科看護師の大きな役割となります。
患者さんの状態のアセスメント
患者さんの心身状態は、精神疾患の症状としてだけでなく、薬物治療の影響などでも繊細に変化します。
また、中には、認知症などで意思疎通が難しい方、急性期の激しい興奮状態にある方、ご自分の病識がない方などもいらっしゃいます。
バイタルサインの異常や、ふとした会話の違和感などから、多様な患者さんについて的確にアセスメントを行い、適切な治療・ケアにつなげることは、精神科看護師の大切な仕事です。
セルフケアの援助
精神疾患の患者さんは、身の回りのことが自分でできなくなっている方も少なくありません。
精神科看護師は、食事・睡眠・入浴・排泄なども含めた患者さんのセルフケアをサポートします。こうした援助を通じて患者さんの生活を整えることも、症状を改善する・生きづらさを解消することにつながっていきます。
与薬
精神科の治療は「薬物治療」が中心となります。
そのため、与薬・服薬管理は精神科看護師の重要な業務。服薬を拒否する患者さんや、うまく飲み込めない患者さんもいらっしゃるので、看護師による適切な管理が必要です。
一般病院と比べて点滴などの処置は多くありませんが、点滴を行う際は自己抜去などにも注意を払います。
キャリアアドバイザー
精神科病院にもさまざまな特色があります。たとえば、超急性期のスーパー救急病棟や急性期病棟を持つ病院、療養型に特化した病院、認知症や依存症の専門病棟がある病院などです。
看護師の仕事内容は、こうした病院・病棟の特性によっても変わります。職場を選ぶときは、どんな特色を持つ病院なのかを確認してみましょう。
精神科病院で働く看護師の1日
精神科病院で働く看護師の1日のスケジュール例(病棟・日勤)を見てみましょう。
【8:30】始業、朝のミーティング・申し送り
夜勤中の患者さんの様子について申し送りを受けたり、その日の予定を確認したり、チーム内の情報共有を行います。
【9:00】患者さんのケア
入院患者さんのバイタルサインの測定やアセスメント、医療処置(点滴など)、服薬管理、清潔・排泄ケアなどを行います。検査のある患者さんの介助業務などもあります。
【11:30】昼食介助、見守り
摂食状況を観察しながら、必要に応じて介助・見守りを行います。昼食前後の与薬・服薬管理も。
【12:30】休憩
【13:30】患者さんのケア、病棟カンファレンスなど
患者さんとのコミュニケーションを通じて心理的なケアを行ったり、看護計画や退院支援についてのカンファを行ったりします。機能訓練や作業療法(レクリエーション活動)の時間を午後に設けている病院も多いでしょう。
【16:30】看護記録の記入・申し送り
その日の患者さんの状態などを記録し、夜勤メンバーに引き継ぎます。
【17:30】終業
精神科看護師の場合、あまり残業は多くなく、定時で終業できる事が多いでしょう。
キャリアアドバイザー
日勤・夜勤のスケジュールそのものは、基本的に一般病院と変わりありません。精神科病院には病棟勤務のほか、外来や通所リハビリを行うデイケア・ナイトケア、訪問看護などがあります。
精神科病院で働く看護師の給料
精神科病院で働く看護師の平均年収は、およそ330万~500万円が相場となっています(常勤)。
准看護師の場合、1割ほど低くなる傾向です。
ただし、精神科病院は残業が少なめで時間外手当がそれほどつかないことなどもあり、一般病院と比べると若干、年収が下がる場合があるかもしれません。
また、日勤常勤など夜勤のない働き方を希望する場合は、夜勤手当がつかない分、上記の年収相場よりも50万円ほど低くなると見ておくのが妥当でしょう。
精神科病院で働く看護師のやりがい・つらいことは?
一般科(身体科)とは異なる視点や技術が求められる精神科の看護。看護師はどんなことにやりがいを持ち、どんなことに大変さを感じているのでしょうか?
精神科看護師のメリット・デメリットをまとめました。
精神科病院で働く看護師のメリット3つ
1個別性の高い看護ができる
精神科の患者さんは症状などの個別性が高く、個々に合わせたケアが求められます。療養期間も長期にわたり、一人一人にじっくりかかわる看護ができることに、やりがいを見出す看護師さんが多いようです。
長期入院の患者さんが社会生活に復帰していく姿や、急性期で入院してきた患者さんが徐々に落ち着いていく姿を見守れるのは、精神科看護師の醍醐味かもしれません。
2コミュニケーションスキルが磨かれる
精神科領域では、ただ寄り添うばかりのコミュニケーションではなく、「看護師と患者」の適切な距離を見極めたコミュニケーションが求められます。
また、言葉による意思疎通が難しい方もおり、患者さんの気持ちを汲み取るスキルなども磨かれるでしょう。
かける言葉や声のトーンはもちろん、自分の動作のスピードや立つ位置にまで配慮するなど、精神科病院で身につく高いコミュニケーションスキルは、看護師として、きっと大きな財産になるはずです。
3日常の業務が比較的、落ち着いている
精神科病院の患者さんは状態の落ち着いた慢性期の方が多く、入退院の入れ替わりは激しくありません。
情報収集なども煩雑にならず、急変対応も少ないので、始業前・終業後の残業が発生しにくいのも特徴です。
そのため、看護師が比較的、落ち着いて日頃の業務に当たれるメリットがあります。
緊急入院を受け入れて短期集中治療を行う急性期病棟では、一般科と変わらない慌ただしさがありますが、その分、より高度な精神科看護が学べる環境と言えるでしょう。
精神科病院で働く看護師のデメリット3つ
1心理的な負担やストレスを感じがち
精神科病院で働く看護師の中には、患者さんの症状・状態に自分自身が引きずられてしまい、一緒になって落ち込んだり、心理的な負担を感じたりする人もいるようです。
患者さんの苦痛に寄り添うことは必要ですが、看護する立場として適切な距離を見失わないことも大切です。
患者さんの気持ちに入り込みすぎるタイプの方には、精神科病院での勤務は「きつい」と感じられるかもしれません。オンオフの切り替えが得意な方のほうが向いているでしょう。
2医療技術のスキルが鈍りやすい
精神科では、採血や点滴などの基本的な手技を除き、医療技術が必要な場面はあまり多くありません。
患者さんとのコミュニケーションや療養上の世話が中心となるため、医療技術のスキルを重視する方には不向きと言えます。
一方で、ささいなことから患者さんの状態を把握するアセスメント力はぐっと磨かれるでしょう。
3一般科に戻りにくい
専門性の高い精神科病院に長く勤務すると、一般科(身体科)に戻ろうと考えたとき、どうしても不安を覚えてしまうかもしれません。
近年は、身体疾患を合併している患者さんも増えていますが、単科の精神科病院の場合、治療できる身体疾患に限りがあるため、「協力病院で身体症状が改善してからの受け入れ」となるケースも少なくありません。
身体疾患を看る機会が減ることは否めませんが、精神科病院でこそ身につくコミュニケーションスキルは一般科でも役立つはずです。
精神科病院はこんな看護師におすすめ!
精神科病院での勤務が向いている看護師さんは、次のようなタイプ・特徴の方です。
- 精神科看護に興味がある
- 患者さんの個別性・その人らしさを大切にしたい
- コミュニケーションやアセスメントのスキルを磨きたい
- オンとオフの切り替えが得意だ
- 患者さんと適切な距離を取ることができる
- できるだけ残業のない職場で働きたい
- 多少給料が下がってもプライベートの時間を大切にしたい
一般科とは異なる精神科の看護に対して自分なりの興味を持てるかどうかは、精神科病院に勤務する上で一番のポイントと言えるでしょう。「学生時代、精神科の実習はおもしろいと感じたな」といった覚えのある方にはオススメです。
また、精神疾患は、患者さんによって症状の現れ方も治療の経過もさまざま。一人一人の背景を理解したケアや対応が求められるため、特に、個別性を重視した看護観を持つ方に向いています。
患者さんとのコミュニケーションスキルもポイント。ただし、患者さんとの距離が近すぎると依存や妄想を招いてしまいます。患者さんに感情移入しすぎない方、医療者として適切な距離を取ることができる方、オンとオフを切り替えられる方が向いているでしょう。
条件面では、残業が少ないので多少の年収ダウンはあり得ますが、プライベートを大切にしたい方、子育てなどで残業を避けたい方にオススメです。