看護師の職場として最も多い「一般病院」は、規模や機能などによって仕事内容や働き方が異なります。
よく比較される大学病院との違いを含めて解説します。
目次
「一般病院」と「大学病院」の違いは?
一般病院の最も大きな役割は「地域医療」を担うことです。地域の幅広い医療ニーズに応える総合病院、地域密着型の医療を提供する病院など、施設や規模によって特徴が異なります。
一方、大学病院の重要な役割は「高度医療・先端医療」を提供すること。さらに「疾患や治療法の研究」を担うのも大切なミッションです。患者さんはより重症度の高い方、高度医療を必要とする方が多くなります。
「一般病院」は幅広い!「総合病院」と呼ばれることも
一般病院と言っても、規模や機能、開設者などによってさまざま。
たとえば、次のような特徴があります。
- 中規模以上で、多数の診療科を持つ一般病院
地域医療の中核を担う存在。住民の幅広い医療ニーズに応える。このタイプの一般病院は「総合病院」とも呼ばれます。
- 都道府県立などの公的病院、規模の大きい民間病院
「総合病院」と呼ばれる一般病院の中でも、県立病院や規模の大きい病院は、特に高度・専門医療を担っていることが多く、がん診療や周産期医療などの拠点病院に指定されている場合も。2.5~3次救急にも注力します。
- 小規模な一般病院
より地域密着型の医療を提供。急性期から在宅まで幅広く対応したり、リハビリに特化して在宅復帰をサポートしたりなど、地域のきめ細かな医療ニーズに応えます。
- 単科病院、専門病院など
整形外科や脳神経外科などの単科病院や、がんなどの専門病院として強みを発揮します。
キャリアアドバイザー
「一般病院」には、実は明確な定義はありません。
看護師の転職活動などでは「大学病院以外」の病院を指すことが一般的です。
また、精神科病院や療養型病院とも区別されることが多いでしょう。
一般病院の看護師の仕事内容・働き方
一般病院の看護師の仕事内容や働き方について、主な部署ごとにまとめました。
一般病院の病棟看護師の仕事内容は、多岐にわたります。
具体的には、患者さんのアセスメント、医療処置(点滴・注射など)、服薬管理、清潔ケア、排泄ケア、食事介助、緊急入院や手術・検査出しの対応など。
病棟看護師には幅広いケアの技術と、チームで連携して業務を進めるコミュニケーション力が求められます。
このほか、看護記録の記入やナースコールへの対応などもあり、特に入院患者さんが10日前後で入れ替わる急性期病棟は、慌ただしさを感じる人もいるかもしれません。
また、病棟の働き方で特徴的なのは、やはり夜勤があること。以前は3交代制が主流でしたが、最近では2交代制の病棟が多くなっています。
自分にはどちらのリズムが合っているかも職場選びのポイントになるでしょう。
キャリアアドバイザー
診療科や「急性期・回復期・慢性期」のどれなのかによって扱う疾患、患者さんの重症度やADLなどが異なり、看護師に求められる知識やスキルも変わってきます。
自分の関心や得意分野、希望する働き方などから「自分に合った病棟」を探したいですね。
一般病院の外来の看護師は、通院患者さんの診察や検査がスムーズに進むように補助する役割を担います。
主な仕事内容は、情報収集、バイタルサインの測定、採血や注射といった医療処置など。
また、診察室で医師の診察をサポートしたり、診察の前後に症状や治療方針、生活上の注意について説明を補足したりするのも大切な役割です。
時には、「患者さんが医師には伝えられなかった・聞けなかったこと」をフォローすることも。
たくさんの患者さんが来院する外来業務をテキパキさばく実践力、限られた時間の中で患者さんの状況を的確にアセスメントし、治療意欲を引き出すコミュニケーションスキルが外来看護師には求められます。
また、外来看護師の働き方では、夜勤がないのが大きな特徴。そのため子育て中の看護師さんにも人気の高い職場です。
一般病院の救急外来で働く看護師の主な仕事内容は、「搬送されてきた患者さんに対する救急処置」です。
意識を確認する、気道・血管を確保する、救急蘇生処置をするなどのほか、医師が行う処置の介助や治療に必要な物品・機器の準備など、素早い判断と行動が重要です。
また、患者さん本人の処置だけでなく、突然のことで不安や恐怖を感じているご家族のケアも、救急看護師ならではの役割です。
2次・3次救急では、緊急度や重症度の高い患者さんが多く、急を要する場面の連続です。救急外来の看護師は、患者さんの状態を瞬時に見極める判断力や冷静さ、スピーディーな行動力が磨かれます。
中途採用では、即戦力となる経験者が優先されやすい傾向です。
救急外来は24時間体制なので、看護師も基本的に日勤・夜勤の交代制です。
一般病院の手術室で働く看護師は、手術が安全かつ円滑に進行するためにサポートする役割を担います。
その仕事内容は、「器械出し」と「外回り」の大きく2つに分かれます。
「器械出し」は、手術中の執刀医に必要な器械(道具)を手渡す直接介助の業務です。
正確かつスピーディーに医師に手渡せるように、手術の流れを先回りできる知識や医師とのコミュニケーションが重要になります。
「外回り」は、器械出し以外の部分で手術をサポートする間接介助の業務です。
術前の物品の準備や術中・術後の記録の入力などのほか、手術前に患者さんのもとを訪問し、手術に関する説明や不安のケアなども担当します。
患者さんとのコミュニケーションの機会が少ない部署ですが、専門性の高い知識・技術を身につけることができます。病院によってオンコール対応や夜勤があります。
一般病院の健診センター・検診センターの看護師は、受診者がスムーズに健診・検査を受けられるようにサポートするのが主な役割です。
仕事内容は、各種健診や人間ドック、がん検診などでの採血、身長・体重・血圧などの測定、検査の介助など、ルーティンワークが多いでしょう。受診者の案内や予約事務を行う場合もあります。
保健指導や生活習慣の相談外来を看護師が担当することもあり、予防医療に関心がある人に向いています。
給料は低めですが、日勤のみで残業の少ない働き方が可能です。
テキパキと業務をこなす力や接遇スキルが求められます。
一般病院の内視鏡室の看護師は「内視鏡を使った検査や手術の介助」が主な役割です。
具体的な仕事内容は、手術室看護師と同じように、直接介助と間接介助に大きく分かれます。
直接介助は、医師が行う検査や治療の介助、内視鏡スコープの洗浄・消毒など。
間接介助では、検査・治療前の患者さんへの説明、採血や前処置、検査中のバイタルサインの観察などを行います。
一般的な病棟業務と異なるため、未経験者の転職は少しハードルが高めです。
患者さんの負担が少ない内視鏡治療はニーズが大きく、治療も高度化しています。内視鏡室の看護師にも、内視鏡治療に関する理解や難易度の高い手技が求められ、新しいことを学ぶのが好きな人に向いているでしょう。
「消化器内視鏡技師」の資格取得でキャリアアップも目指せます。
内視鏡室は緊急の対応が少なく、基本的に残業が少ない職場ですが、検査・手術が立て込む日などは残業もあるようです。
一般病院の透析室の看護師は、血液透析が必要な患者さんの透析治療をサポートするのが主な役割です。
具体的な仕事内容は、透析の準備(透析機械の操作、患者さんの状態チェック)、シャントへの穿刺、透析中の患者さんの観察・ケア、抜針・止血、患者さんの生活指導など。
未経験だと、機械操作や専門的な知識・手技など、初めに覚えることが多いでしょう。
透析中に状態が変化する患者さんがいないか、観察力や判断力が求められます。長年にわたって通院される患者さんが多いので、長期的にかかわるコミュニケーション力も大切です。
一般病院の透析室は基本的に日勤のみで、残業の少ない働き方が可能。
子育てと両立したい方にもおすすめです。
一般病院の看護師の年収・給料
一般病院の看護師の平均年収は、およそ380万~550万円です。准看護師の場合、1~2割ほど低めの傾向です。
部署によってもかなり幅があり、給料が高めなのは夜勤のある病棟と救急外来。一方、外来勤務は夜勤手当がつかないため、年収50万~100万円ほど低めになる傾向です。
また、手術室は「日勤+オンコール」で夜勤がない場合、病棟などと比べると、やはり数十万円の年収差があるでしょう。
一般病院で働く看護師のメリット・デメリット
一般病院で働く看護師のメリット・デメリットは、どんな点でしょうか?
病院の規模や機能によっても異なりますが、次のような特徴があると言えます。大学病院とも比較しながら見てみましょう。
一般病院の看護師のメリット
1幅広い知識・スキルを習得できる
一般病院は、大学病院ほど診療科が細分化されていません。
それぞれの病棟・部署で幅広い疾患の患者さんを扱うため、さまざまな疾患やケアの知識・スキルを習得できます。
診療科間の垣根もそれほど高くなく、異動や研修などで幅広く学ぶ機会も多いでしょう。
また、大学病院では点滴や注射などは研修医が行うことが多いですが、一般病院の看護師はこうした手技を数多く経験できるので、実践力を磨けます。
一般病院の中でも規模の大きい病院や専門病院などでは、特定の領域に特化して専門性の高い看護を学ぶことも可能です。
2地域医療に貢献できる
一般病院は、地域医療を支える医療機関です。
退院後や通院中の生活までを見通して患者さんやご家族を支える看護に、きっとやりがいを感じられるでしょう。
「地域に根ざした病院」を掲げて住民対象の健康教室や地域連携に力を入れる施設も多く、地域医療や在宅医療に関心のある方に向いています。
3職場の選択肢が幅広い
一般病院は施設数が圧倒的に多く、規模・機能・特徴もさまざまです。
求人募集も常に数多く出ています。
大学病院は県内に1か所しかない地域も多いですが、一般病院は複数の候補から、自分の関心や向き不向き、条件に合わせて検討することができ、希望の働き方をかなえやすいと言えます。
一般病院の看護師のデメリット
1看護の専門性を高めにくい
規模などにもよりますが、一般病院で働く場合、看護師は幅広い業務・ケアに携わる必要があるため、専門性を高めにくいという側面があります。
ジェネラリストとしてレベルアップしやすい半面、スペシャリストを目指す方には、やや物足りなさがあるかもしれません。
専門性の高い看護に取り組みたい場合は、一般病院の中でも高度な専門医療を手掛ける、規模の大きい病院や専門病院などを検討してみると良いでしょう。
2新たな知識・スキルを学ぶ機会が少なめ
一般病院でも勉強会や研修会は開催されますが、大学病院に比べて少なめの傾向です。
特に、最新の治療・ケアの知識を積極的に学びたい方には、大学病院などのほうが向いているかもしれません。
3病院による違いが大きい
一般病院とひと口に言っても、その幅はかなり広く、業務内容や働き方、待遇・福利厚生なども異なります。
その分、自分に合った条件を探しやすい良さもありますが、転職先を選ぶ際は、自分の中の「一般病院のイメージ」にとらわれず、慎重に検討する必要があります。
一般病院の中から勤務先を選ぶときのチェックポイント
幅の広い「一般病院」の中から自分に合った勤務先を選ぶには、勤務地や待遇など一般的な条件のほかに、次のようなポイントをチェックしてみましょう!
1一般病院の「規模」
一般病院には、100床前後の小規模な病院から、400床以上の大規模な病院まであります。
小規模な病院であれば在宅医療との距離も近く、より地域密着型のケアを経験できたり、病院の雰囲気もアットホームだったりするでしょう。
一方、大規模な病院では、3次救急や高度医療を展開していることも多く、スキルアップを望む方に向いています。
また、給料や福利厚生、教育体制、休日の取りやすさなども、規模による違いが出やすいところ。この転職で何をかなえたいのかを整理すると、病院の規模も大まかに決められそうです。
2一般病院の「機能」
一般病院と言っても、それぞれに力を入れている分野や強みを持っています。
「救命救急センターがあり、3次救急を行っている」「がん診療連携拠点病院に指定されている」「特定の領域の手術・患者さんが多い」「訪問看護ステーションや介護施設を併設し、在宅との連携に力を入れている」など、病院の機能や理念が自分の関心と合っているか、考えてみるのも良いでしょう。
3一般病院の「診療科・部署」
一般病院で看護師が働く場所は、病棟、外来、手術室…と多様です。
希望の部署や診療科があれば、それを軸に勤務する病院を探すのも効率的です。
病棟の場合、希望する診療科に配属されるとは限りませんが、将来的に異動できる可能性も踏まえて転職先を検討しましょう。
もしも、特定の領域で専門性を高めていきたいと希望している方は、総合病院ではなく、その領域の専門病院のほうが合っているかもしれません。