大学病院は「年収が高い」「高度な看護が学べて、ブランド力もありそう」というイメージで、転職を希望する看護師さんも多いかもしれません。
ここでは、大学病院で働く看護師の給料事情や仕事内容などを解説します。
目次
大学病院の看護師の仕事内容・役割
大学病院は、一般病院では行いにくい高度医療・先進医療を提供するほか、難しい疾患や治療の研究・開発など、研究機関としての機能も果たしています。
とはいえ、大学病院の看護師の仕事内容は、一般病院と基本的に大きな違いはありません。
配属部署にもよりますが一般病院と同じく、病棟での入院患者さんのケア、外来・手術・救急外来などでの診療サポートといった役割を担います。
大学病院の看護師は採血しない?
ただし、大学病院の看護師の業務には、次のような特徴があります。
- 注射や採血、ルート確保などを看護師が行わない場合もある
- 診療科が細分化され、看護師の業務も専門性が高い
- 重症度の高い患者さんや難しい疾患のケアが多い
大学病院の看護師の仕事内容で特徴的なのは、注射や点滴のルート確保などは医師が担当するケースが多いということでしょう。
そのため、大学病院に長く勤務する看護師の中には「採血できない」「点滴のルートの取り方を忘れてしまった」ということもあるようです。
病棟・部署が細分化され専門性が高い
また、大学病院では、病棟・部署の診療科が細分化されています。
たとえば、内科でも「循環器内科」「消化器内科」「代謝・内分泌内科」「腎臓内科」「呼吸器内科」など、領域ごとに病棟が分かれることが多く、看護師の業務内容も専門性が高くなるでしょう。
さらに、高度・先端医療を担う大学病院は、重症度や看護必要度の高い患者さん、希少疾患の患者さん、治療が難しい患者さんが多くいらっしゃいます。
この点でも、看護師に高度な知識・スキルが求められる場合があるでしょう。
大学病院の看護師は年収・給料が高いって本当?
大学病院で働く看護師の年収は、およそ430万~600万円が相場です。
病院や部署によっても幅がありますが、看護師全体の平均年収より高めとなっています。
特に、国公立大学のほか私立大学の病院も集中する都市部では、給料が高くなる傾向にあります。
「国公立か私立か」で給料の違いがあるというよりは、地域差の影響が大きいと言えるでしょう。
大学病院の多くは「特定機能病院」に指定され、高度・先端医療を担っています。そのため、一般の病院よりも重症度や難易度の高い治療・手術を扱うことが多く、その分、病院の収入となる診療報酬も高くなります。
こうした収益が看護師に還元されて年収が高くなる-という仕組みです。
特に、大学病院の看護師の年収の高さは「ボーナスが高い」という面が大きいようです。大学病院によっては、ボーナス額が平均的な一般病院の約1.5~2倍となるケースも。
逆に、月々の給料は同規模の一般病院とあまり変わらないとも言えます。
大学病院への転職は難しい?
大学病院の看護師の中途採用の求人は、実はそれほど多くありません。
そもそも大学病院の数自体が少ないことに加え、毎年、自大学を卒業した新卒看護師が数多く入職してくるため「新卒から育てる風土」が根強く、一般病院に比べて中途採用の占める割合が低い傾向がみられます。
入職時の教育・研修制度も新卒を中心に組まれていて、中途採用者へのフォロー体制はそれほど手厚くないことも。
「規模の大きい大学病院なら教育やフォローも充実していそう!」と期待して転職したものの、そのギャップに苦労する…といったケースもあるようです。
とはいえ、大学病院が中途採用にまったく力を入れていないわけではありません。
新卒の育成がメインである大学病院は、中途採用には「即戦力となる人材」「組織を活性化してくれる人材」などを期待する傾向があります。
面接などでは、こうした点や「自ら学ぶ意欲」などを意識してアピールすると良いでしょう。
大学病院で働く看護師のメリット・デメリット
大学病院で働く看護師のメリット・デメリットをまとめました。
大学病院で働く看護師のメリット3つ
1専門性の高い看護を身につけられる
高度・先端医療を提供する大学病院では、専門性の高い看護に取り組めます。
病棟・部署の診療科が細分化されているので、担当する領域についてより深く知識・スキルを身につけられるでしょう。
ほかの一般病院では扱わない疾患の患者さんをケアする機会も多く、大学病院ならではの経験を積むことができます。
また、専門看護師や認定看護師などの資格取得をサポートする体制が手厚く、スペシャリストとしてスキルアップを目指す方には良い環境です。
2最先端の医療・看護が学べる
最先端の医療の現場である大学病院では、業務を通じて高度な知識・スキルを学べるのも魅力です。
最新の治療法やガイドライン、技術がいち早く取り入れられ、日々の看護実践にやりがいや意義を感じられるでしょう。
また、院内での勉強会や研究活動も活発で、さまざまな学会に参加する機会や研究発表に取り組む機会があります。
3年収アップが期待できる
大学病院の看護師は、看護師全体の平均よりも年収が高めです。
特に、夏冬のボーナス支給額が他の職場よりも高い傾向にあります。
現在の年収や経験年数、配属部署などにもよりますが、50万~100万円の年収アップも期待できるでしょう。
大学病院で働く看護師のデメリット3つ
1専門が偏り、幅広い看護ができない
大学病院では、担当する領域の専門性が高い半面、幅広く知識・スキルを習得するのは難しい面があります。
また、採血やルート確保などは大学病院では看護師が行わない場合も多いので、注射のスキルが衰えてしまう可能性も否めません。
特定の領域に偏らず、幅広い患者さんをケアしたいというジェネラリストの看護師を目指す方には、大学病院はミスマッチの可能性があります。
これからどんな経験・キャリアを積んでいきたいのか、じっくり考えてみましょう。
2残業が多く、ハードワークになりがち
大学病院の患者さんは看護必要度や重症度が高いほか、入院日数も7日前後などと短く、日常の看護業務はかなり慌ただしくなるでしょう。
さらに、緊急の対応が求められることが少なくなく、突発的な割り込み業務で残業が発生しがち。「大学病院の看護師はきつい…」と感じる方も多いようです。
3委員会や研究活動の負担が大きい
大学病院は研究・教育機関としての役割も担うため、院内の委員会や勉強会、研究活動が盛んです。学びの環境が充実しているのですが、一方、その負担が重く感じられることも…。
終業後や休日の時間が、こうした活動に当てられることもあり、プライベートとの両立に悩むかもしれません。
大学病院はこんな看護師におすすめ!
大学病院で働くのに向いている看護師さんは、次のようなタイプ・特徴の方です。
- 高度・先端医療の現場で専門性を磨きたい
- 勉強が好きで、最新知識を学ぶことや研究活動にも興味がある
- 緊張感の高い現場でテキパキ仕事したい
- プライベートよりも仕事を充実させたい
- ちょっとやそっとの忙しさに負けない自信がある
- 夜勤もこなして年収をアップさせたい
高度・先端医療や研究機能を担う大学病院の看護師には、積極的に専門性を磨きたい方、学ぶことが好きな方が向いています。
勉強会や学会など学びの機会に恵まれるので、学び続けることに楽しさを感じるタイプの方におすすめです。
また、高度急性期の病院として、緊張感のある場面が続くことがあってもテキパキ動けるタフさが求められます。
病棟の患者さんは入院日数が短く、入れ替わりも激しいですが、専門性を生かして患者さんに寄り添ったケアを行うなど、忙しい中でも充実感、やりがいを見いだせる方が向いているでしょう。
さらに、多少ハードでも年収アップを目指したいという方にもオススメです。
逆に、プライベートとのバランスを重視したい方などには、大学病院はあまり向いていないかもしれません。