転職しやすさとメリット・デメリット 看護師が「病院以外」で働ける職場まとめ
看護師が「病院以外」で働ける職場を紹介。それぞれの特徴も解説します。
目次
「病院以外」で働く看護師はどのくらい?
約3割の看護師が「病院以外」で働いている
2020年の厚生労働省による調査によると、「病院以外」で働く看護師は約3割。
その中でも診療所(クリニック)が13.2%と最も多く、次いで介護保険施設等、訪問看護ステーション、社会福祉施設、看護師等学校養成所又は研究機関の順になっています。
※出典:令和2年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
※「介護保険施設等」には介護老人保健施設、介護医療院、指定介護老人福祉施設、居宅サービス事業所、居宅介護支援事業所などが含まれます。
※「市区町村」「事業所」「都道府県」「保健所」「助産所」はそれぞれ数が少ないため「その他」として合算。
「その他」には都道府県や市区町村といった自治体や保健所、民間企業などが含まれますが、全体に占める割合は少なめです。
キャリアアドバイザー
同じ看護師として働く場合でも、職場によって働き方は異なります。
ここからは、それぞれの特徴についてくわしく見ていきましょう。
看護師が「病院以外」で活躍できる職場・職種13選
看護師が「病院以外」で活躍できる職場(職種)を13個、紹介します。
それぞれの仕事内容や働き方を比較した上で、自分に合ったところを見つけましょう。
看護師が病院以外で活躍できる職場(職種)
診療所(クリニック)
診療所(クリニック)とは病床がない、あるいは19床以下の医療施設のこと。
クリニックで働く看護師は、外来の診療補助をはじめとし、備品整理や清掃、受付などの業務も幅広く行います。
病院と違い、夜勤がなく休日も曜日が決まっているところが多いため、プライベートとの両立を図りやすい半面、給料は下がってしまいがちです(※)。
※有床クリニックの場合、シフト制で夜勤があるところも。
加えて、クリニックはスタッフ数が少なく、教育体制も病院ほど整っていないところも。
先輩や医師に多くを聞かずとも、適切な診療補助、患者対応ができる人に向いていると言えます。
こうした背景もあり、クリニックの求人は「臨床経験◯年以上」「点滴・注射・採血のスキル」を必須条件としているところがほとんど。
若手でクリニックに興味のある方は、まずは病棟で2~3年程度経験を積み、こうした手技のスキルを習得しておきましょう。
キャリアアドバイザー
クリニックでは毎日同じ顔ぶれで仕事をすることが多いため、人間関係のトラブルにも注意。
面接や見学を通して職場の雰囲気をつかんでおくと、転職後に気持ちよく働くことができます。
美容クリニック
クリニックの中でも、美容クリニックは少し毛色が異なります。
美容クリニックは大きく分けて2種類。シワ・たるみの除去や脱毛などを行う美容皮膚科と、二重整形やバストアップなどの整形手術を行う美容外科です。
看護師の主な仕事内容は、利用者の受付やカウンセリング、美顔器・脱毛器などの操作や手術の介助、術後のフォローなど。
とくに脱毛サロンなどの一部の美容クリニックでは、病院で行うような医療処置はほとんどないため、臨床経験が浅い看護師でも挑戦しやすいでしょう。
美容クリニックは一般的に健康な方が利用することもあり、患者の治療・ケアというよりも、サービス業における接客という側面が強くなります。
そのため、患者とのコミュニケーションの取り方について、病院や他のクリニックとギャップを感じることは少なくないでしょう。
一方、夜勤がない上に給与水準が比較的高いのは大きなメリット。
求人数も多いものの、人気があって競争率が高いため、病院に比べて内定が出にくい点には注意が必要です。
キャリアアドバイザー
若手のうちから美容クリニックに転職した場合、医療処置のスキルアップはあまり望めないため、病棟勤務に戻ることが難しいと感じる人も少なくないようです。
転職する前に、看護師として将来的にどのようなキャリアを積んでいきたいのか、慎重に考えることが大切です。
健診センター
健診センター(健診クリニック)とは、健康な人を対象に健康診断や人間ドックを行う施設です。
看護師の業務は採血をはじめ、身長・体重測定、視力・聴力検査、血圧測定、尿検査、心電図検査など多岐にわたります。
ただし分業制のところも多く、担当する検査・測定のローテーションがない限り、ルーチンワークになりがちな点には注意が必要です。
健診センターには短時間に多くの人が訪れるため、看護師には手早さや効率の良さが求められます。
特に採血のスキルは重視されるため、健診センターで働きたい場合は技術を磨いておくと良いでしょう。
また、美容クリニックと同様に基本的には健康な人が利用するため、接客業のようなコミュニケーションスキルも求められます。
病院に比べて夜勤がなく残業も少ないため、プライベートと両立しやすいのが大きなメリット。その分、給料はやや低くなる傾向にあるようです。
キャリアアドバイザー
健診センターはそもそも求人数が少ないため、気になるところを見つけたら早めの行動が肝心。
ルーチンワークが得意な方、テキパキと業務をこなせる経験者の方におすすめです。
介護施設
介護施設は病院と違い「生活の場」としての側面が強く、入居者や利用者がその人らしく暮らすためのサポートを行うのが、看護師の役目です。
介護施設の看護師の主な業務は健康管理。基本的な療養生活の世話は介護職員が行いますが、バイタルチェックや服薬管理、痰の吸引や褥瘡の処置など、医療・看護的な領域は看護師が担います。
高度な医療処置を行う機会は少ないものの、医師が不在の施設も多いため、日常的なケアにおいては、看護師が自分自身で判断するケースも珍しくありません。
一方で、短期での入退院が多い病院に比べ、利用者一人ひとりと比較的じっくり向き合えるため、長期的なサポートや看取りに関心のある人に向いているでしょう。
給料は施設によってまちまちですが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで夜勤やオンコール対応があるところなら、病棟勤務に比べて極端に低くなることはないようです。
ただ、一口に介護施設と言っても、その形態は下記の通りさまざま。
施設の種類や利用者の医療依存度・要介護度によって働き方や仕事内容は異なるので、事前によく調べておきましょう。
キャリアアドバイザー
介護施設は看護師の人数が少ない上に医師が不在のところも多いため、ある程度の臨床経験があった方が転職しやすいと言えます。
若手で介護施設に転職する場合は、大手の法人が運営していて教育体制が整っている施設を選ぶのがおすすめです。
訪問看護ステーション
訪問看護では、看護師自らが利用者の自宅や地域の介護施設に出向いてケアを行います。
利用者が住み慣れた場所でその人らしく暮らすためのサポートができるため、一人ひとりにじっくり寄り添いたい方におすすめでしょう。
訪問看護ステーションで働く看護師の主な業務は、健康状態のアセスメントや栄養・排泄管理やケア、点滴や注射など。高度な医療処置は少ないものの、在宅酸素など訪問看護ならではの業務も経験できます。
基本的に看護師1人での訪問となりますが、実は経験が浅い若手でも働きやすいのが訪問看護の特徴。慣れないうちは要介護度や病状が比較的軽く、業務の難易度が高くない利用者を担当したり、先輩が同行してくれたりといったサポート体制が整ったステーションもあるからです。
夜勤がない分、病院よりはやや給料が下がりますが、オンコール手当が出るため、クリニックよりは給与水準が高いところも。
オンコールとは、利用者やその家族からの電話相談や、緊急時の訪問に備えて待機すること。月に何度か、当番の日が割り当てられます。
キャリアアドバイザー
訪問看護は高齢化にともなうニーズの高まりを受け、求人数は増加傾向です。
「来年の4月」など、入職時期を先にして募集している施設もあるため「今の職場をすぐには辞められない」という方にもおすすめです。
保育園
保育園で活躍する看護師もいます。
近年、保育園では乳幼児の健康支援や食育に力を入れているため、その役割を担う看護師の求人が増えています。
保育園で働く看護師は保育士1人分としてカウントされるため、看護師というよりも保育士としての働き方に近くなる点には要注意。子どもの健康管理などの医療・保健分野だけではなく、保育士と同様に保育業務全般を担うことが多いようです。
また、基本的には健康な園児を相手にするため、医療行為を通したスキルアップを目指したい人にはやや不向きかもしれません。
夜勤がない分、どうしても病院に比べると給料は低くなりますが、土日・祝日休みで子育てへの理解もあるところが多いため、プライベートや子育てとの両立がしやすいと言えます。
また、子どもが好きな人にとっては大きなやりがいを感じる職場でしょう。
キャリアアドバイザー
子どもを相手にする保育園ですが、小児科での経験が必須なわけではありません。
新卒で受け入れているところもあるため、気になる方は看護roo!転職サポートまで気軽にご相談ください。
他にもいろいろ!看護師が働ける職場や職種
求人数は多くないものの、看護師が活躍できる「病院以外」の職場(職種)には他にもいろいろあります。
看護学校で教員として働く看護師です。
教育現場での仕事となるため、講義やその準備、実習の付き添いなど、教員としての業務がメインになります。出欠や成績管理などの事務作業が多いのも特徴です。
看護教員になるには、大学で教育に関する科目を履修するか、臨床経験を5年以上積んだ上で専門の研修を受ける必要があります。
求人数は全体からすると少なめで、知人の紹介や卒業生の採用などが多い傾向にあるようです。
主に新薬の治験に携わる仕事で、いずれも薬剤師あるいは看護師の免許が必須資格とされています。
治験コーディネーターは医療機関や治験施設支援機関(SMO)などに所属し、治験がスムーズに進行するよう、製薬会社と治験担当医師、被験者の間に立ってさまざまな調整業務やサポートを行います。
臨床開発モニターは製薬会社や受託臨床試験実施機関(CRO)などに所属し、治験がスケジュール通りに進行しているか、ルールや薬事法を守り適切に実施されているかなどをモニタリングします。
目の前にいる患者の治療やケアをするよりも、医薬品による医療分野全体の発展に長期的に貢献したいという人に向いているでしょう。
民間企業に所属し、従業員に対して保健指導や医療処置を行う看護師です。
ただ、近年は医療機関に外部委託している企業も多く、産業看護師という言葉自体、あまり使われなくなってきています。
産業看護師の中にはテーマパークに常駐し、体調を崩したりケガをしたりした来訪者の手当を行う看護師もいます。
都道府県や市区町村の役所に所属し、医療福祉課、保健医療課などで働く看護師です。
地域の公衆衛生や感染症にまつわる公共事業・政策の企画立案・実施や、そのための家宅訪問や分析調査などを行います。
「会計年度任用職員」という有期雇用での募集が多いようです。
保健所で働く看護師もいます。
看護師免許のほかに、保健師免許が求められるケースも多いようです。
保健所では主に、結核などの感染症に関する積極的疫学調査をはじめとし、患者の登録や保健指導、管理検診といった患者管理、相談記録作成などを行います。
2020年以降は新型コロナウイルス関連の患者対応、書類作成・データ入力などの業務も発生しています。
自衛隊に所属する看護師もいます。
防衛医科大学校の看護学科に入校し、4年の教育課程で看護師免許取得を目指します。
主な勤務先は全国16か所にある自衛隊病院や、陸・海・空自の各部隊となります。自衛隊病院は複数の診療科が合わさった総合病院が多く、主に自衛官やその家族、紹介者が利用します。
部隊では医務室での医療関連業務のほか、負傷者の手当や搬送、健康診断の実施や衛生教育などを行います。
厚生労働省の本省や地方厚生局で働く、看護師免許を持った行政官です。
看護師として一定の経験年数がある人を対象に募集されています。
看護系技官は事務官や医系技官と協力しながら、主に医療・福祉・介護・保健にまつわる制度の改善や創設、そのために必要な調査や分析、資料の作成などを行います。
一口に看護系技官と言っても、その役割や業務内容は医政局や健康局、子ども家庭局や老健局など、配属部署によってさまざまです。
「病院以外」に転職するときのポイント
「病院以外」への転職を成功させるためのポイントを2つ紹介します。
働き方や仕事内容の違いをよく理解しておく
「病院以外」に転職し、気持ちよく働くためには、転職前にその勤務先の働き方・仕事内容をよく理解しておくことが大切です。
「クリニックは日勤だけで落ち着いて働けそう」「美容クリニックは華やかで楽しそう」など、なんとなくのイメージだけで転職してしまうと、病院との思わぬギャップに苦しんでしまうことも。
実際に働いてみると、クリニックではトイレ掃除や医師のお使いといった仕事も多々あったり、美容クリニックでは接客業のようなコミュニケーションが求められたり……といったことは珍しくありません。
転職後に後悔しないためにも、そこでの働き方の実態について、よくリサーチして理解を深めておきましょう。
教育体制に期待しすぎない
「病院以外」では教育体制に期待しすぎず、主体的に考え行動する姿勢が大切です。
「病院以外」の多くは、病院ほど教育体制が整っていないところが少なくありません。「黙っていたら何も教えてもらえなかった」といったことがないように、率先して動いたり、わからない点は自ら質問したりといったことを心がけましょう。
そうした心積もりを事前にしておくだけでも、転職後に戸惑わずに済みます。
キャリアアドバイザー
病院とそれ以外では、働き方や研修制度だけでなく、給料や休みの取りやすさにも差が出てきます。
その実態は自分で調べるには限界があるので、少しでも不安な点がある場合は、キャリアアドバイザーに気軽に相談してくださいね。
気になる勤務先を見つけたら…転職の流れをチェック
「病院以外」で転職したい場所が決まったら、次は転職活動の流れをチェックしておきましょう。
転職活動は下記のような流れで進むことが一般的です。
まずは具体的な応募先を決め、履歴書を作成・提出したのち、面接を行います。無事内定が出たら、退職手続きを進めましょう。
看護roo!転職ガイドではほかにも、転職活動にまつわるさまざまな記事を用意しています。
具体的なノウハウや気になるポイントをわかりやすく解説しているので、転職活動を進める上で、ぜひ活用してみてください。