仕事内容・年収・向いている人 CRA(臨床開発モニター)とは?看護師から転職できる?
治験のデータ収集や進捗管理を行うCRA(臨床開発モニター)。あまり耳馴染みのない職種ですが、近年、看護師から転職する人も増えてきています。
気になるCRAの転職事情や仕事内容、年収などについて解説します。
目次
CRA(臨床開発モニター)とは?看護師から転職できる?
CRA(Clinical Research Associate)とは、新薬開発において「治験が適切に行われているか」をモニタリング(監視)する仕事。
臨床開発モニターとも呼ばれ、被験者や症例に関するデータの収集や、治験の進捗管理を担います。
近年、看護師からの転職が増えている
近年、看護師を対象にしたCRA(臨床開発モニター)の求人数が増えており、CRAに転職する看護師も増えてきています。
治験業界では医薬品の安定供給に向け、治験数を増やそうという動きがある一方、CRAの数は足りていません。
そこで、カルテが読め、医療機関での立ち回り方も理解している看護師に、CRA人材としての注目が集まっているのです。
看護師からCRAになるには、CROへの転職が一般的
看護師からCRA(臨床開発モニター)になるには、CROへの転職が一般的です。
CRO(Contract Research Organaization/開発業務受託機関)とは、製薬会社から治験業務を受託代行する専門企業で、CRAの多くがこのCROに所属しています。
一つ注意が必要なのが、CROのオフィスは東京や大阪などの大都市圏にあるという点。転職する場合、その通勤圏内に引っ越す必要があります。
CRAには一部、製薬会社に勤める人もいますが、治験の上流・最終フェーズに関わるため業務の難度が高く、CRA未経験の看護師がいきなり転職できるケースは稀。チャレンジしたい場合、CROで5~10年ほど経験を積んでからが安心です。
看護師からCRAに転職する際のポイントや志望動機の書き方について、くわしくは「CRA(臨床開発モニター)への転職時のポイント|志望動機の書き方」の章で解説します。
CRA(臨床開発モニター)の仕事内容|CRCとの違い
CRA(臨床開発開発モニター)の仕事内容は、大きく治験の「開始前」「実施中」「終了時」に分けられます。
まずは製薬会社が用意したプロトコール(治験実施計画書)に基づき、治験の実施機関と担当医師を選びます。
治験開始後は定期的に医療機関を訪問し、進捗状況やCRF(症例報告書)を確認の上、報告書を作成します。問題があれば医師やCRC(治験コーディネーター)と連携し、カルテなどの原資料との照合・検証(SDV)や、追加検査などを行うことも。
これを治験の終了時までくり返し、必要なデータや文書を揃えるのが、CRAのミッションです。
〈CRAの主な仕事内容〉
- 医療機関・医師の調査・選定
- 実施依頼・契約手続き
- 治験の計画手順に関する説明会の実施
- モニタリング業務
(医師へのヒアリング/CRF(症例報告書)の確認・回収) - SDV(原資料との照合・検証)
- 治験薬の交付管理
- 報告書の作成
…など
一人のCRAが1年で担当する治験は1~3件ほどですが、治験ごとに3~4つの医療機関を掛け持ちするのが一般的です。
経験を積むとプロジェクトを取りまとめるリーダーやマネージャーといった管理職ポジションを目指せるほか、スペシャリストとして特定領域の治験に関わり専門性を高めるキャリアパスもあります。
キャリアアドバイザー
CRAは医師やCRC、薬剤師をはじめ多くの医療スタッフと連携しますが、被験者と直接関わることはありません。
看護業務や医療処置はなく、関係者への報告連絡相談や、書類の確認作成といったデスクワークがメインになります。
CRC(治験コーディネーター)との違いは?
CRA(臨床開発モニター)と同じく治験をサポートする職種にCRC(治験コーディネーター)がありますが、両者の違いは下記の通りです。
CRAが製薬会社(CRO)の立場から治験の進捗状況をモニタリングするのに対し、CRCは医療機関・被験者・製薬会社(CRO)の三者間の調整役として、治験の現場で準備や被験者対応といったサポート業務を担います。
どちらも看護業務や医療処置はありませんが、CRCの勤務先は医療機関が中心で、被験者対応もあるという点で、CRAに比べるとやや看護師に近い働き方と言えるでしょう。
キャリアアドバイザー
「患者(被験者)さんと関わることが好き」という方は、CRCもあわせて検討してみるのもおすすめです。
CRA(臨床開発モニター)の1日のスケジュール
CRA(臨床開発モニター)の1日のスケジュールについて、午前中は在宅勤務・午後から医療機関に訪問する日を例に紹介します。
【9:00】出勤(在宅)
製薬会社や医師からのメールを確認し、返信します。コロナ禍以降、在宅でリモートワークできる企業も増えています。
【9:30~12:00】書類の確認・作成
CRF(症例報告書)をチェックし、報告書を作成します。必要に応じて医師に連絡することも。
【12:00~13:30】昼休憩・移動
医療機関への訪問は、週に1~3回ほどです。遠方の場合、宿泊をともなう出張になることも。
【13:30~14:30】挨拶回り・打ち合わせ
医師やCRCなどに挨拶回りを行い、ヒアリングや打ち合わせをします。
【14:30~17:00】モニタリング業務
CRF(症例報告書)を回収確認し、ときにはSDV(原資料との照合・検証)を行います。
追加で必要な検査やデータがあれば、各医療スタッフに掛け合います。
【17:00~18:00】帰社・報告書作成
帰社して報告や書類作成などを行い、終業です。訪問先が遠方の場合、直帰することも。
残業や休日出勤はあるの?
CRA(臨床開発モニター)は、治験の開始/終了時が繁忙期にあたり、残業が発生することがあるようです。このタイミングは関係各所への連絡や、確認・作成する書類が多くなるからです。
また、土日は基本的に休日ですが、稀に有害事象が起きた際などに、医師やCRC(治験コーディネーター)から連絡が入る場合も。出勤が必要なケースはほぼありませんが、電話対応やメールの返信をすることはあるようです。
CRA(臨床開発モニター)の年収・給料|看護師やCRCと比べてどう?
CRA(臨床開発モニター)に転職して初年度の年収は、520万~560万円ほどが相場となっています(残業代込)。
CRC(治験コーディネーター)は430万~480万円ほど、クリニックやデイサービスでは400万円に届かないこともあるため、夜勤がない働き方の中ではかなりの高水準と言えます。
また、CRAは経験年数や役職次第でさらなる高収入が目指せるのもポイント。30代のリーダー職では650万円、40代以降で管理職になれば800万~900万円を目指すこともできます。
具体的な年収額はCROによって異なりますが、一般的に日系CROよりも外資系CROの方が給与水準が高い傾向があります。
CRA(臨床開発モニター)のメリット・デメリット|つらい?やりがいは?
CRA(臨床開発モニター)として働くメリット
1夜勤なし・土日休みで在宅勤務も可
CRA(臨床開発モニター)の仕事は日勤のみで被験者対応もないため、生活リズムが崩れにくく、「命に関わっている」というプレッシャーも少なめです。
また、基本的には土日休みなことに加え、フレックスタイム制やリモートワーク(在宅勤務)を導入しているCROも多いため、ワークライフバランスを保ちやすいでしょう。
2給与水準が高くキャリアアップも目指せる
CRA(臨床開発モニター)の年収は初年度で500万円を越えるケースも珍しくなく、これはCRC(治験コーディネーター)や他の「日勤のみ」の職場で働く看護師よりも高い水準です。
また、経験年数に応じて役職が上がれば、600万~900万円とさらなる高収入を目指すこともできるでしょう。
3多くの疾患・新薬について学べる
CRA(臨床開発モニター)はさまざまな領域の治験に関わるため、幅広い疾患や新薬について学ぶことができます。
医師やCRC(治験コーディネーター)といった多職種との連携を通じて、視野を広げることもできるでしょう。
また、近年は国際共同治験(グローバル試験)のプロジェクトも増えており、CROには外資系も多いため、英語のスキルを伸ばすこともできます。
CRA(臨床開発モニター)として働くデメリット
1デスクワーク中心で看護業務がない
CRA(臨床開発モニター)の仕事はデスクワークが中心のため、PC操作に慣れるまでは苦労する場面が多いでしょう。
また、看護業務に加え被験者対応もないため、「患者さんと関わることが好き」という方にとっては、もどかしさや物足りなさを感じることも。
2英語が苦手だとやりづらさを感じることも
CRA(臨床開発モニター)の仕事は、英語に苦手意識があると思うように進めづらいという声も聞かれます。
治験業界では近年、国際共同治験が増えているため、業務にまつわる書類を英語で閲覧・作成する機会が多くあるからです。
特に外資系CROでは業務連絡や会議なども英語で行われることがあるため、注意が必要です。
3遠方への出張が発生することも
CRA(臨床開発モニター)が担当する医療機関は全国にわたるため、プロジェクトによっては遠方への出張が発生することがあります。
日帰りできるケースが一般的ですが、場合によっては宿泊がともなうことも。長時間の移動にストレスを感じたり、家族の理解や協力が必要になったりする可能性があります。
CRA(臨床開発モニター)に向いている人はどんな看護師?
- 医療機関以外で働くことに興味がある
- PC操作やデスクワークが苦にならない
- 「夜勤なし」「土日休み」で働きたい
- 薬理や疾患に関する勉強が苦にならない
- マルチタスクやスケジュール管理が得意
- 人当たりが良く説明能力が高い
- 英語のスキルを活かしたい
CRA(臨床開発モニター)はデスクワークが中心で被験者対応もないため、「医療機関で患者さんをケアするよりも、PCや書類と向き合っている方が好き」という方にはオススメです。
「夜勤なし」「土日休み」なので、ワークライフバランス重視の方にもピッタリの職場でしょう。
また、1年に数件ある治験ごとに複数の医療機関を掛け持ちするため、マルチタスクやスケジュール管理が得意な方や、疾患や薬理についての勉強が苦にならないという方にも向いていると言えます。
加えて、医師やCRC(治験コーディネーター)と良好な関係を築けるコミュニケーション能力や、治験の計画や内容について的確に伝えられる説明能力も、大きな武器になるでしょう。
国際共同治験や外資系のCROでは英語を使う機会が多くあるため、英語のスキルを活かしたい・伸ばしたい方なら、大きなやりがいを感じられるはずです。
CRA(臨床開発モニター)への転職時のポイント|志望動機の書き方
CRA(臨床開発モニター)への転職はこんな感じ
看護師からCRA(臨床開発モニター)に転職する際、おさえておきたい3つのポイントを紹介します。
1内科系の臨床経験が3年あると◎
あくまで理想ですが、看護師からCRA(臨床開発モニター)に転職する場合、内科系の臨床経験3年以上あると、選考で有利に働くでしょう(経験年数を必須条件にしていないCROも多くあります)。
臨床経験が3年あれば「疾患や薬理について一定の知識がある」「医師との関わり方を心得ている」と判断してもらえるからです。
特に近年はがんや中枢神経領域での新薬開発が盛んなため、中でも内科系の病棟経験があると評価されやすいでしょう。
キャリアアドバイザー
看護師としての臨床経験以上に、CRC(治験コーディネーター)としての経験があると、内定率はさらにアップします。新薬開発の流れやCRAの業務に理解があると評価されるからです。
CRCにも興味がある場合、あわせて検討してみるのもおすすめです。
2書類はPC作成で、誤字脱字に注意
CRA(臨床開発モニター)に応募する場合、履歴書や職務経歴書はPC作成が基本。誤字脱字にも注意しましょう。
CRAは職業柄、PCでの業務や書類作成が多いため、履歴書や職務経歴書が手書きだったり、誤字脱字があったりすると「適性がないのでは?」という印象を与えてしまうからです。
完成したら一度読み返し、記入漏れや誤字脱字がないかをよく確認しましょう。
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3面接では職種理解や熱意が重要
CRA(臨床開発モニター)の転職では、面接が大きな関門になります。
看護師からCRAに転職する場合、働き方や業務内容がガラリと変わるため、面接官は「CRAという仕事をきちんと理解できているのか」「その上で前向きな意欲があるのか」という、CRAに対する理解度や熱意を確かめようとしています。
応募先のホームページのほか、治験業界やCRAに関する記事や書籍などに目を通し、理解を深めておきましょう。
また、CRAの面接では職種理解や熱意を確かめる質問として、志望動機がよく聞かれます。どう答えるかが合否を大きく左右するので、次の章「【例文】CRAに転職する際の志望動機」を読んで、しっかり対策しておきましょう。
キャリアアドバイザー
CROは製薬会社や医療機関とビジネス関係にあり、CRAも「外部の人」として見られるため、面接中はマナーに問題がないかもチェックされています。
挨拶やお辞儀を忘れずにするほか、敬語を正しく使い、くだけた言葉遣いは避けるようにしましょう。
【例文】CRA(臨床開発モニター)に転職する際の志望動機
CRA(臨床開発モニター)に転職する際の志望動機において、特にポイントとなるのがCRAに対する職種理解をしっかり伝えることです。
治験業界やCRAに興味を持ったきっかけや惹かれたポイントをふまえ、CRAの業務に看護師としての経験や知識がどのように活かせるのかについて触れましょう。
例文
消化器内科病棟で3年間勤務する中で、新薬によってより多くの患者様の命を救いたいと考え、志望しました。
治験に参加中の患者様の病状が治験薬によって改善したことに加え、「同じ疾患を抱える人の手助けがしたい」とお話しされる姿を見て、新薬開発の社会貢献度の高さを実感しました。
ケアを通じて目の前の患者様のQOLの維持・向上を目指す看護師の仕事にもやりがいはありましたが、CRAであれば薬によってより多くの患者様の命を助けられると感じ、転職を検討しております。
中でも貴社は国際共同治験に積極的だと伺い、インパクトの大きな仕事に挑戦できる環境に大変魅力を感じております。
看護師として常に時間や優先度を考え患者対応をしてきた経験や、その中で培った柔軟性やスケジュール管理能力は、貴社のCRA業務でも活かせるものと思います。
(352字)
履歴書では200字~300字程度が限界ですが、記載内容について面接で深堀りされることも。履歴書には書ききれなかった具体的な内容も、聞かれたら話せるようにしておくことが大切です。
志望動機の書き方や例文については、下記の記事も参考にしてみてください。
「なぜCRCではなくCRA?」と聞かれることも
CRA(臨床開発モニター)の面接では「なぜCRC(治験コーディネーター)ではなく、CRAなのか?」を聞かれることも。「新薬開発に携わりたいから」だけではCRCも同じことが言えるため、CRAに対する理解不足と判断されてしまいます。
CRAはCRCに比べて「関われる治験の種類が幅広い(担当の医療機関に左右されない)」「実施機関の選定やプロジェクト管理など、治験の計画・進行管理にも携われる」といった特徴があるので、自分の経験や適性をふまえ、あくまでCRAの役割・業務に惹かれた理由を強調して伝えましょう。
例文
よりインパクトの大きい仕事をしたいと考えたからです。看護師として多くの患者様と直接関わってきた経験を活かせるCRCも検討しましたが、「より多くの人の喜びや幸せのために」という思いを体現するには、御社のようなグローバル試験が豊富な環境に身を置き、CRAとして世界中の被験者様を対象に仕事をするのが最適解だと考えています。
また、CRCは居住エリアによって担当できる病院や試験が制限されてしまいますが、好奇心や探究心の強い私には、自身の習熟度に応じて特定の疾患を深く追求していけるCRAの方が、より合っていると考えています。
(259字)
CRA(臨床開発モニター)に資格は必要?
看護師からCRA(臨床開発モニター)に転職する際、絶対に必要な資格はありません。看護師免許や運転免許は忘れずに書いておきましょう。
ただし、外資系CROに応募する場合、TOEICや英検などの英語力を証明する試験・資格があれば、加点につながるケースがあります。
また、もし英語を使った実務経験があれば評価がさらにアップするため、点数(級数)とあわせて「外国人患者に対する声がけや服薬指導の経験あり」などと、使用場面や頻度について記載しておきましょう。
キャリアアドバイザー
「夜勤なし」「土日休み」の職場をお探しなら、訪問看護やクリニックなど、選択肢は他にもあります。
下記の記事ではそれぞれの職場の特徴や働き方、年収相場などを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。