特別養護老人ホーム(特養)は、介護施設の中でも要介護度の高い入居者さんが多い施設です。

特養で働く看護師の仕事内容や給料、オンコール勤務の実際について解説します。

【特別養護老人ホームの看護師】仕事内容は?働き方・スケジュールは?給料は?メリット・デメリットは?

目次

特別養護老人ホーム(特養)の看護師の仕事内容・役割

特別養護老人ホームで働く看護師の仕事内容・役割は入居者さんの健康管理が中心です。

長期に入居される方、要介護度の高い方が多いため、看取り急変時の医療対応も、特養の看護師の役割として大きくなってきています。

特別養護老人ホーム(特養)とは

特別養護老人ホーム(特養)は、主に、要介護3以上の高齢者が長期に暮らす施設です。

居住系の介護施設の中でも、入居者さんの要介護度が高いのが特徴です。「介護老人福祉施設」とも呼ばれます。

特養は介護保険が適用され、看護師の配置が義務付けられていますが、24時間の配置は必要ありません。

そのため、特養の看護師は基本的に夜勤がありません

ただ、緊急時の対応として、オンコール体制を取っている施設がほとんどです。

キャリアアドバイザー

特養を運営するのは社会福祉法人や市町村などで「公的施設」となります。有料老人ホームが民間企業の運営が多いのとは異なる点です。

特養の入居者さんはどんな人?

特養の入居者さんは、次の方が対象となります。

  • 65歳以上で、要介護3~5の人
  • 40~64歳で、特定疾病が認められた要介護3~5の人
  • 特例により入居が認められた要介護1~2の人

特養は有料老人ホームなどと比べて費用負担が軽く、入居希望者も常に多い状態です。

公的サービスのため、要介護度の高い方が優先的に入居されます

ですが、「24時間の医療ケアが必要」といった医療依存度が高い方は多くありません

特養で働く看護師の業務は?

特養で働く看護師の具体的な業務内容は、主に次のようなものです。

特養の看護師 主な業務内容

  • 入居者さんの健康管理業務
    (体調確認・バイタルサインチェック、点眼や軟膏塗布の巡回処置など)
  • 医師の指示に基づく医療行為
    (胃ろう、喀痰吸引、点滴、在宅酸素療法の管理など)
  • 配薬準備、与薬
  • 診察介助
    (医師による診療の補助)
  • 入退院のサポート
  • 看護記録
  • 施設全体の感染予防対策、医療上の指示
    (介護職スタッフへの指導なども)
  • レクリエーションの補助
  • 看取り・ターミナルケア

食事や排泄の介助、清潔ケアなどは、基本的に介護職スタッフが担当します。

ですが、嚥下機能が低下していたり、褥瘡などの皮膚トラブルがあったりする入居者さんもいるので、看護師が専門性を生かしてサポートする場面も多いでしょう

また、急変時には、看護師が医師と連携して、医療的な判断・介護職スタッフへの指示を行います。

先輩からひとこと

最近は、看取りケアに力を入れる特養が多くなっています

ご本人や家族がどんな最期を望むのか、看護師が中心となって多職種カンファレンスを開く・看取り計画を作成するなども大切な仕事です。

老健や有料老人ホームとの違いは?

同じ居住系の介護施設である「介護老人保健施設(老健)」「有料老人ホーム」と特養の違いを一覧表にまとめました。

医師が常駐しているか、看護師の夜勤があるかや、入居者さんの要介護度などに違いがあります。

【老人ホームの比較表】以下。項目:特別養護老人ホーム(特養):介護老人保護施設(老健):介護付有料老人ホーム 看護師の配置:〇:〇※1(夜勤有り):〇※2。医師の配置:△(非常勤可):〇(常勤):×。入居者の要介護度:要介護度3以上:要介護度1~5:要支援・要介護。運営:公的施設:公的施設:民間施設。特徴:要介護度が高い・終身入居が可能・入居費などが安い:リハビリに重点・在宅復帰が目的・医療的ケアも:サービス内容が多様・費用負担は高め・施設数が多い。

※1 老健の看護師の夜間配置は義務ではありませんが、夜勤のある施設が一般的です。

※2 有料老人ホームでも夜勤のある働き方が増えています。

 

なお、特養の看護師の配置基準は次のとおりです。

【特別養護老人ホーム:看護師の配置基準(常勤換算)】入居者が~30人の場合:看護師・准看護師1人以上。入居者が31人~50人の場合:看護師・准看護師2人以上。入居者が51人~130人の場合:看護師・准看護師は3人以上

特別養護老人ホーム(特養)での看護師の働き方

特別養護老人ホーム(特養)の看護師は、日勤がメインの働き方になります。詳しく見てみましょう。

1日のスケジュール

特養で働く看護師の1日のスケジュール例です。

【8:30】出勤、朝の情報収集、申し送り

夜勤の介護職スタッフからの連絡事項、記録を確認し、入居者さんの状態を把握します。

【9:00】健康状態の確認・処置など

入居者さんのバイタルサインチェックや、朝の内服の確認のほか、必要に応じて胃ろうや点滴などの処置を行います。この日の入浴がOKかの判断もします。

【11:00】配薬のセットなど

【12:00】食事のサポート

食事介助は、基本的に介護職スタッフがメインで行いますが、嚥下機能の低下した方、健康状態が気になる方などは、看護師がアセスメントを兼ねて食事をサポートします。必要に応じて、食形態の変更などを栄養士と検討したりします。

【13:00】休憩

【14:00】口腔ケア、レクリエーションの補助、定期処置など

肺炎予防としても重要な食後の口腔ケアをサポートしたり、ADLを確認する機会でもあるレクリエーションの補助を行ったりなど、午後のスケジュールに合わせて動きます。

夜の配薬や胃ろうの準備なども。

【16:00】看護記録の入力

【17:00】申し送り

遅番・夜勤のスタッフに申し送りを行います。

【17:30】終業

1日の仕事が終了!

キャリアアドバイザー

早番(7:00~16:00など)や遅番(10:00~19:00など)がある施設もあります。

夜勤・オンコールは?

特養では、看護師が24時間常駐している必要がないため、基本的に看護師の夜勤はありません。

その代わり、夜間はオンコール(自宅待機)体制で対応する施設が一般的です。

オンコールを担当する頻度は施設にもよりますが、月5~10回ほどといったところです。

平均では月9回程度となっています。

オンコール担当の日に実際に電話対応などが発生するのは月2~3回ほどでしょう。

施設まで出勤する必要があることはあまりなく、月1回あるかどうかというイメージです。

キャリアアドバイザー

特養のオンコール手当は1回あたり1000~1500円が相場となっています。

実際に電話対応や出動などが発生した場合、別途、対応手当(1000~2000円前後)を追加するところもあります。

特別養護老人ホーム(特養)の看護師の給料

特別養護老人ホーム(特養)の看護師の平均年収・給料、ボーナス、時給について見てみましょう。

看護roo!「ナースなワタシのお給料」、求人相場、日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査」などから分析)

【常勤】平均年収・給料・ボーナス

【常勤特別養護老人ホームの看護師の給料】月収:23~34万円。ボーナス:40~90万円。年収:350~500万円

特養で働く看護師(常勤)の平均年収は約427万円です。

看護師全体の平均年収(約480万円)と比べると、50万円ほど低い額となっています。

病院勤務と違って夜勤手当がなくなるためです。

必ずしも給料が高いとは言えませんが、「日勤でこの給料なら満足」「夜勤をして稼ぐより、自分には合っている」と感じる看護師さんが多いようです。

また、看護職員の人数が少ない分、管理職になって役職手当が増額されることもあります。

【パート・バイト】平均時給

特別養護老人ホームの看護師(パート・アルバイト)の時給:1,300~2,000円

特養で働く看護師(パート・アルバイト)の平均時給は1500円です。

都市部では比較的高めなどの地域差もありますが、おおむね時給1300~2000円が相場でしょう。

特別養護老人ホーム(特養)で働く看護師のメリット・デメリット

看護師が特別養護老人ホーム(特養)で働くメリット・デメリットをまとめました。

特養で看護師が働くメリット3つ

【特別養護老人ホームで働く看護師のメリット】1.日勤メインで働ける。2.長期的にかかわる看護ができる。3.アセスメント能力などが磨ける。

1日勤メインで働ける

特養の看護師の働き方は、日勤がメインです。

また、急な入退院がある病院のような「突発的な業務」が発生しにくく、残業も少なめ。

「夜勤のある病棟勤務が合わず、身体的につらい」という方、仕事と家庭を無理なく両立させたい方も安心です。

妊娠・出産・育児を経ても長く働きやすい職場でしょう。

ただし、夜間のオンコール担当があるので、担当する頻度や負担感などはきちんと確認しましょう。

2長期的にかかわる「生活の中の看護」を実践できる

暮らしの場である特養では、入居者さんの生活に長期的にかかわり、支える看護を実践できます。

特に、特養は平均の入居期間が約4年と長いのが特徴(例:介護老人保健施設では約1.3年)。終のすみかとして最期まで暮らす方も多くいらっしゃいます。

お一人お一人と長期的に関係を築いて看取りまで行う看護に、病院看護とはまた別のやりがいを感じられるでしょう。

3アセスメント能力、コミュニケーション能力が伸ばせる

特養で働く看護師は、アセスメント能力やコミュニケーション能力がぐっと鍛えられるでしょう。

特養の入居者さんは要介護度の高い方が多く、ご自分の意思や希望を伝えるのが困難な入居者さんもいらっしゃいます。わずかな変化にも気づくアセスメントが大切になります

また、ご家族や介護職スタッフと話し合いを重ね、望む最期のための看取り計画を作成するなども、看護師のコミュニケーション能力を生かす大切な場面です。

特養で看護師が働くデメリット3つ

【特別養護老人ホームで働く看護師のデメリット】1.オンコールがある。2.看護師が少ない職場の不安。3.処置スキルが鈍りがち。

1オンコールがある

特養の看護師は、夜勤がないかわりに、夜間のオンコール対応があります。

オンコールを担当するのは月5~10回ほどで、このうち2~3回で実際に電話対応が発生するというのが一般的なところです。

基本的には自宅待機で、その間は夕食や就寝など、いつもどおり過ごせます。

ただ、「いつ呼び出しがあるかわからない」「行動に制約がある」など、オンコールの緊張感に不慣れなうちは、人によってストレスを感じやすいかもしれません

2看護師が少ない職場への不安

特養では看護師が病院ほど多く配置されていないという点に、プレッシャーや不安を感じる方もいるかもしれません。

ですが、高度な医療処置が必要な場面はあまりなく、状態の安定した入居者さんがほとんどです。

また、急変時のマニュアルが整備され、必要に応じて連携する医師の指示をあおぐことができます。

現場の看護師一人が過度な責任を負うことはありません

3処置スキルが鈍りがち

特養の入居者さんは要介護度は高いものの、医療依存度についてはそれほど高くなく、高度な医療処置が必要な場面はあまりありません

このため、処置スキルが鈍るというデメリットを感じるかもしれません。

「医療処置が好き」「健康管理の業務だけでは物足りない」というタイプの看護師さんは、どうしてもやりがいを見出しにくい面があるでしょう。

転職応援コンテンツ 転職活動がぐっと楽になる便利なガイド

専門のキャリアアドバイザーが疑問にお答え

もっと詳しい情報を聞いてみる