転倒や転落で頭を打ったら、明らかな異常なくてもCT検査を推奨!?|看護roo!ニュース

CTを受ける患者さん

 

転倒や転落で頭部を打撲したり、その疑いがある場合は、明らかな異常がなくても頭部CT撮影を推奨するーー。

 

そんな言葉が盛り込まれた転倒や転落による死亡事故の再発防止策を、日本医療安全調査機構がまとめました。

 

医療者からは、「現実的な対応ではないのではないか」「夜中に何度もCT検査をすることになってしまう」など疑問の声が上がっており、SNS等で話題になっています。

 

 

転倒や転落の死亡事故で、一番多かったのは頭部外傷

転倒・転落に関係した死亡事故の死因

出典:医療事故の再発防止に向けた提言第9号「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」(日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター)を基に看護roo!編集部で作成

 

 

機構によると、医療事故調査制度がスタートした2015年10月から2018年12月までに報告があったうち、転倒や転落に関係して亡くなったのは18例。

 

その18例の死因は、16例が頭部外傷で、2例が窒息でした。

 

機構は、ベッド周囲などでの転倒や転落による頭部外傷が原因で亡くなったと考えられる11例に対象を絞って、死亡事故につながらないためにはどうすればよいかという視点から分析。

 

その上で、再発防止に向けた対策を提言としてまとめました。

 

転倒・転落による医療事故の再発防止に向けた提言/1:疑い含め頭部打撲の場合、明らかな異常がなくても頭部CTを推奨/2:抗凝固薬・抗血小板薬の内服患者では頭蓋内出血の可能性を認識しておく/3:頭部CTで異常所見があれば、脳神経外科医の管理下に迅速に手術できる体制の構築(脳神経外科医がいない病院は転送先の体制を構築)/4:頭部への衝撃を和らげる衝撃吸収マット・低床ベッド・保護帽の活用を検討/5:転倒・転落歴が、重要な転倒・転落のリスク要因と認識する/6:転倒・転落リスクが高い患者へのベンゾジアゼピン系薬剤の使用は慎重に/7:環境変化や状態変化時はリスクが高まるので、各勤務帯で情報共有/8:転倒・転落予防に向けた取り組みは、多職種で連携する

出典:医療事故の再発防止に向けた提言第9号「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」(日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター)を基に看護roo!編集部で要約

 

 

頭部外傷が一気に重症化するケースも

以前から、転倒や転落による死因で頭部外傷が多いことは知られていましたが、今回の分析でも同様の傾向がみられました。

 

分析した11例中8例では、発見直後、声掛けに反応があるか、明らかな異常がみられなかったケースで、その後、急速に症状が悪化し、亡くなっています。

 

そのため、疑いも含め、頭部を打撲した場合には、頭部CTの撮影を推奨するとしました。

 

特に、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者では、出血が起こりやすく、重症化しやすいため、注意が必要としています。

 

また、意識レベルや麻痺瞳孔などの神経学的所見とともに、バイタルサインを頻回に観察し、異常があれば医師に報告することを促しています。

 

 

転倒や転落の予防策は、看護師だけでなく多職種で

提言では、高齢者認知症など転倒や転落のリスクが高い患者が増える中、ほとんどの病院で予防策を行っているが、転倒や転落をゼロにすることは不可能と指摘。

 

看護師が転倒や転落を防ぐ対応に追われ、現場の疲弊につながっている現状があるとしました。

 

そのため、看護助手や介護士など、看護師以外の職種の増員なども含めた検討が必要としています。

 

また、リスクアセスメントや予防策などは、看護師だけでなく、多職種で連携して行う体制を整えることが望ましいとしました。

 

勤務する医療機関がこの提言をどう捉え、実際に対策を見直すのか、現場の負担にかかわることだけに気になるところではないでしょうか。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

 

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(参考)

医療事故の再発防止に向けた提言第9号「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」(日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター)

入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析「提言の概要」(日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター)

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