妊婦加算が「復活」する…!見直しのポイントは?|看護roo!ニュース

病院の会計で妊婦さんが困っているイラスト

2019年1月、炎上の末に凍結された「妊婦加算」が2020年春に“復活”します。

 

あれだけの批判を浴びた妊婦加算、いったいどんな形で再開されるのでしょうか?

 

 

本来は「妊婦を診る医療機関への報酬」

妊婦加算は、妊婦さんが外来を受診した場合に、診療費を上乗せするというもの。

2018年4月の診療報酬改定で新設されました。

 

妊婦加算(凍結前)の診療報酬点数と自己負担額の一覧表。初診は75点(230円)、さらに時間外と休日115点(350円)、深夜215点(650円)が上乗せになる。再診は38点(110円)、さらに時間外と休日70点(210円)、深夜170点(510円)が上乗せになる

 

そもそも妊婦加算は、

 

特別な配慮が必要な妊婦の患者をきちんと診る産婦人科以外の医療機関への評価として、診療報酬を加算する

 

が本来の趣旨です。

 

ですが、

 

▼妊婦自身に上乗せ負担を強いたこと

▼妊婦であることが配慮されなかったような診療にも加算が適用される、不適切な事例があったこと

▼事前の周知不足による突然感

▼「妊婦へのペナルティ」という印象を与えるネーミング

 

などから「妊婦税だ」と批判が巻き起こり、凍結された経緯があります=詳しくは『批判された「妊婦加算」なぜ?』=。

 

 

ポイントは「どんな医療を評価するか」と「誰が負担するか」

医師の診察を受ける妊婦の画像

凍結後、厚生労働省の検討会で妊婦加算の在り方があらためて議論され、2020年度の診療報酬改定のタイミングで、妊婦加算を再開する方針となりました。

 

もちろん、同じ内容で再開するわけにはいきません。加算の仕組みや算定するための条件は見直されます。

 

その詳細は、診療報酬の議論を担当する「中央社会保険医療協議会(中医協)」で決まっていくことになるのですが、ポイントは大きく次の2つです。

 

▼ポイント1:どんな医療を評価するのか

「加算に見合う医療を提供している」と評価する基準・条件は厳しくなる見通しです。

 

妊婦さんは、風邪・インフルエンザ、もともとの喘息や花粉症などで、思いのほか、産婦人科以外の診療科も受診するもの(厚労省の調査では平均で約3回)。

 

妊娠週数によって処方できない薬剤があったり、妊娠中の症状と見分けがつきにくい疾患があったりなど、妊婦さんの診療には、妊娠の継続や胎児への影響を踏まえた特別な配慮や知識が求められます。


検討会では、

 

  • 妊婦を診察・治療するための教育や研修
  • 妊婦の受診時には母子手帳を確認すること
  • 文書での説明や、産婦人科の主治医との情報共有

 

―などが必要だという意見が出ています。

 

これらが「妊婦にとって自己負担に見合うメリットがあると納得が得られる診療」として、評価ポイントになる可能性がありそうです。

胎児と妊婦のイラスト

ポイント2:誰が負担するのか

加算で増額になる報酬を誰が負担するかは、一番の関心事です。

 

世間の批判を踏まえ、検討会でも

 

「妊婦さんの医療負担を抜本的に見直してほしい」

「妊婦の自己負担の額を増やすのは(少子化対策に取り組む)国全体の方向と違う」

 

という指摘が上がっています。

 

一方で、「自己負担を減額あるいはゼロにするのは、今の医療保険の制度上は難しい」と慎重な意見があったのも事実です。

 

最終的にまとめられた意見書では、茨城県など、自治体が独自に妊産婦の医療費を助成する制度を導入していることに触れているのがポイント。「誰が費用を負担するのか問題」は今後、自治体を巻き込んで落とし所が検討されていくとみられます。

 

 

マイナスイメージの妊婦加算、看護師は

導入後すぐにつまずき、マイナスイメージが付いた妊婦加算。

 

来年春の再開に向けて議論が進んでいくにしたがって、患者さんとも話題になったり、看護師にかかわる要件が出てきたりするかもしれません。要注目です。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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(参考)

妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 議論のとりまとめ(厚生労働省)

妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 議事録(厚生労働省)

 

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