消化器外科・消化器内科ナースの仕事内容とは?役割から勉強法・やりがいまで徹底解説!
消化器外科・消化器内科勤務の現役ナースへのインタビュー取材とアンケートから、消化器科ナースの仕事内容を解説します。
6つのポイントでわかる
消化器外科・消化器内科ナースの仕事内容とは?
【1】消化器科ナースの役割5選
消化器ナースには、どのような役割があるのでしょう?
ここでは、特徴的な役割や、よく行う手技・ケア等をご紹介します。
消化器科ナースの役割1:口腔から肛門まで消化器全般のケア
口腔から肛門までの消化器官すべてのケアに関わるのが消化器科ナースの役割です。
消化器科ナースの第1の特徴は、看る臓器の数が多いこと。
単に多いだけでなく、食べること・排泄することという生活の根源に関わる臓器であることが特徴です。
また、消化器系の疾患から、人工肛門(ストーマ)を造設する場合があります。
ストーマのケアも、消化器科ナースの重要な役割です。
ストーマ造設のためのオリエンテーションから、位置決め、退院後の生活・装具の管理指導まで、そのケアは多岐にわたります。
◆先輩の声
消化器科は、該当する臓器が多いことが一番の特徴だと思います。
言うまでもないことですけど、口腔から肛門まで、すべての臓器が消化器官です。
消化器官の解剖生理すべてを一気に勉強しようとして、その膨大さに新人の頃はよく凹んでいました。
でも先輩が「一つ一つ理解していくことが大切だよ、ぜんぶつながってるんだから」と教えてくれて、その言葉に支えられていますね。
「つながっている」ことを意識して流れで覚えていったほうが、むしろ勉強はしやすいと思います。
食べ物がどういう道をたどって、排泄まで至るのか…。
点の知識が、線になってつながっていくと「こういうことか!」と発見があって面白く勉強できますよ。
(民間病院 消化器外科 看護師5年目)
◆先輩の声
吐血や下血が多いのも、消化器の特徴だと思います。
私は入職から消化器内科なのですが、最初は吐血・下血の量の多さにいちいち驚いていました。
「こわい」という感情が先立ってしまっていたのだと思います。
でも、先輩たちが冷静に対応するのを見て、適切に対処すれば患者さんの安全は守れるんだなと実感していきました。
まずは、吐血・下血が起こらないように観察とアセスメント力を磨くこと。
そして、起こってしまったときには、ショックがないかなど、患者さんの状態を看て、医師に報告のうえで次の一手を考えること。
それができるようになることが、いまの目標です。
(総合病院 消化器内科 看護師3年目)
消化器科ナースの役割2:経鼻栄養チューブの挿入、抜去、輸液ライン管理
消化器内科・消化器外科に入院中の患者さんは、絶飲食となっている場合があります。
その際には、経鼻栄養チューブ(通称マーゲンチューブ、マーゲン)による栄養や薬剤投与、補液などの処置を行います。
そのほか、膵管や胆管に入れるドレーンの管理も消化器科ナースの役割です。
排液の色やにおいなどから、正常・異常を察知して医師に伝えます。
◆先輩の声
私が勤務している消化器内科では、とにかくマーゲンを入れる頻度が高いです。
チューブ挿入のときは、嚥下と一緒のタイミングで飲み込んでもらう必要があります。
「ごっくんと飲み込んでくださいね」と伝えるのですが、そもそも嚥下機能に問題がある方も少なくありません。
チューブ挿入は、患者さんにとって、心地良いことではもちろんなく、苦痛も大きい処置ですので、できるだけ負担がなくなる方法がないか、常に探っています。
患者さんのタイミングに合わせてスッと挿入できている先輩を見ると「すごいなぁ…」と思いますね。
(総合病院 消化器内科 看護師3年目)
◆先輩の声
絶飲食の患者さんが多いので、輸液をはじめ点滴が多いことも、消化器科の特徴だと思います。
数が多い分、確認にも気を配ります。
私が病棟に配属されて先輩に一番言われたことは「点滴はとにかく確認!」ということでした。
急速投与している患者さんの場合は特に、頻回に確認していきます。
(民間病院 消化器外科 看護師5年目)
消化器科ナースの役割3:消化器外科の周術期のケア
消化器外科術後では、腹腔(術式によっては胸腔内)にドレーンが留置されます。
消化器外科手術後、前述のドレーン管理などのほかに、離床に向けたケアへ移ります。
そして、食事を通常食に戻していき、経口摂取ができるようになると、ADLの回復度が速く向上するため、「回復が目にみえるところがやりがい」と話す先輩ナースもいます。
◆先輩の声
私が勤務している消化器外科は、がんなどで手術の適応がある方が入院していらっしゃいます。
術後の化学療法も、外科で継続して行う場合がほとんどなので、周術期だけでなく、がんの治療・ケアの全般を把握していることが必要になります。
(民間病院 消化器外科 看護師5年目)
消化器科ナースの役割4:検査値データの読み取り
消化器系の臓器の治療・ケアを行ううえで、検査値データの読み取りも重要な役割です。
たとえば、肝臓はよく「沈黙の臓器」と言われますが、肝機能が低下していても自覚症状がほとんどない場合があります。
そこで、患者さんとのコミュニケーションから得られる情報だけでなく、各種臓器機能を表すデータの読み取りが大切になってきます。
単純X線やCT画像の読み取りができるようになると、ケアの幅がさらに広がると語る先輩ナースもいます。
◆先輩の声
検査値データの読み取りといっても、血液検査の数値だけではありません。
たとえば、検査前の患者さんのお通じの色を検査することもあります。
だいたい1番から5番の対照表に照らし合わせている病院が多いのではないでしょうか。
「〇〇さんの便、3番でしたー」と先輩に報告することも、私たちの役割ですね。
(大学病院 消化器外科 看護師1年目)
消化器科ナースの役割5:飲水・食事制限などの生活指導
消化器疾患をもつ患者さんは、絶飲食をはじめ飲水制限や食事制限、禁酒・禁煙などに取り組まねばならない方がいます。
消化器科ナースとしては、入院中の病棟生活や退院後の生活の指導を行うことも大切な役割です。
◆先輩の声
生活指導という意味では、膵炎の患者さんに「飲酒は控えてくださいね」と伝えたりする指導が多いです。
私の病棟では、50代以上の男性患者さんの割合が多いので、長年の生活習慣を見直してもらうのは、なかなか簡単なことではありません。
ごくまれに、20代の膵炎の患者さんが入院していらっしゃると、話がスムーズに通じる気がしてほっとしてしまうこともあります。
私はまだ3年目なので、年齢が近いということもあると思うのですが…。
先輩には「年齢は関係ないから信頼してもらえるような話し方を心がけなさい」と指導されます。
まだまだ頼りない感じだと思うので、年上の方々にも信頼されるようなナースになりたいですね。
(大学病院 消化器外科 看護師1年目)
【2】消化器科ナースの1日ってどんなスケジュール?
消化器科のナースはどんなふうに日勤を過ごしているのでしょうか?
外科と内科、それぞれのタイムテーブルを先輩ナースのお話から作成しました。
消化器外科ナースのある日勤
※5年目ナース、300床民間病院、消化器外科30床の場合
◆先輩の声
私が勤務している消化器外科は、とにかく入退院の回転が早いイメージです。
午前中に、入院の患者さんの対応を行い、外来の看護師から回ってくる情報とあわせつつ、生活歴や生活習慣・食習慣について細かく伺っていきます。
お酒・タバコはもちろん、既往歴として欠かせないのが、糖尿病、高血圧、喘息です。
日勤の中で、個人的に大切にしている業務は入浴・シャワー介助です。
特に術後の患者さんで、はじめて入浴できる瞬間って大事なものだと思っています。
消化器外科の手術だと、飲食や排泄に関わるものがほとんどなので、口から食べられない、トイレに自分で行けない、など根源的な生活の楽しみや尊厳が、一時的に損なわれてしまっている状態の方もいます。
そのような中でも「さっぱりしたー」と喜ぶ顔を見ると、短い入院期間の中でも“快”を感じてもらうことができたんじゃないかな、と嬉しくなります。
(民間病院 消化器外科勤務 看護師5年目)
消化器内科ナースのある日勤
※3年目ナース、500床総合病院、消化器内科30床の場合
◆先輩の声
昼食前には、血糖測定・バイタル測定が欠かせません。
血糖が高かったら、医師に報告して皮下注射や自己注射などの処置を行う可能性があるからです。
消化器外科もそうだと思うのですが、消化器の持病を持っている患者さんは特に、生活習慣が病状を大きく左右します。
退院後の生活も見据えて、患者さんに指導したりコミュニケーションをとるように心がけています。
(総合病院 消化器内科 看護師3年目)
【3】新人ナース必見!消化器科ナースの特徴
消化器科の看護師さんってどんな感じなんでしょう?
現役ナースの方々への取材・アンケートからイメージを作成しました。
頭:検査データを把握
臓器機能に異常があっても、目に見えてはわからないことがあります。
看護師としては、患者さんの身体の状態を知るために、検査値データを読み取るスキルが欠かせません。
目:排液・排泄物の異変を察知
排液・排泄物に異変があればすぐに気づくアセスメント力!
耳:傾聴上手
がん終末期の患者さんをはじめ、さまざまな不安をもつ患者さんと接する消化器科ナースは傾聴上手!
口:生活指導がうまい
患者さんに生活習慣を改善してもらうため、さまざまな会話の引き出しを持っている!
胸:度胸がある
大量の吐血・下血があっても冷静に対応できる度胸!
手:チューブ挿入が素早い
患者さんの負担が減るよう、素早くチューブを挿入するスキル!
腹:患者さんの回復が喜び
食形態のアップなど、患者さんの回復が目に見えるのが喜び!
足腰:パワフル
入退院や、オペ出し・オペ迎えが多い消化器外科でも、パワフルに動き回ります!
がま口:ふつう
消化器科に特別な手当はない場合がほとんどです。
※あくまでインタビューや取材から作成したイメージです。
【4】消化器科ナースのキャリアプラン。3つの実例
消化器科という経験からどのようなキャリアプランが考えられるでしょうか?
先輩たちの経験を聞いてみました!
1. 消化器内科→循環器内科
循環器内科へ移った先輩は、その静かな雰囲気に最初は慣れなかったといいます。
◆先輩の声
入職時から循環器を希望していたんですが、たまたま希望者が多くて…。
師長に「消化器は上半身のほとんどをしめる長い器官だから、経験しておけばあとで役立つわよ」と言われて、まずは消化器で3年働きました。
私が勤務していた消化器内科は活気ある雰囲気で、どんどん患者さんが回復していくし、ベッドの回転も速くて明るい感じだったんです。
循環器内科に移ったら、すごく静かな雰囲気だったのでそれが圧倒されましたね。
雰囲気は、まだ消化器とのギャップを感じていますけど、消化器での経験が役立っていると感じることもあります。
それは生活指導の場面です。
消化器では、絶飲食など患者さんの生活指導にたくさんの時間をかけてきたので、そのスキルが、生活習慣病の多い循環器の勤務でも役立っていると感じます。
(転属時、看護師4年目)
2. 消化器外科→手術室
消化器外科で周術期のケアを経験したあと、オペ室に異動した先輩もいます。
◆先輩の声
消化器外科で、周術期の患者さんを看てきて、オペナースとの連携も多く経験しました。
そこでの情報交換が、病棟でのケアにもすごく役立ったんですよね。
入職のときからの憧れもあって、手術室の人手が足りないと、募集がかかったタイミングで、異動を志願しました。
最初に器械出しをしたときは、師長の計らいもあって大腸がんの患者さんの手術だったんです。
とても緊張しましたけど、これまでずっと勉強してきた臓器を目の当たりにして、変な言い方ですけどすごく感動したんです。
よりリアルに疾患のことを考えられるようになって、勉強もはかどっています。
(転属時、看護師3年目)
3. 消化器外科→整形外科
患者さんのADL向上にさらに貢献したいと、整形外科に移った先輩のケース。
◆先輩の声
私が勤務していた消化器外科の病棟は、とにかく転倒が多くて…!
看護師として予防に努めるんですけど、内臓系の疾患でご本人にあまり自覚がなかったりして、防ぎきれない事例に悔しい思いをしていました。
転倒すると一気に入院期間が長引いてしまう場合もあるので、いつもほんとうに歯がゆかったです。
外科の病棟で、回転が早いのもちょっと物足りなさを感じていて、もっと患者さんの生活に近いのでは?と考えて整形外科に移りました。
整形外科に移っても、入退院のスパンが短いのは変わらないですけど…(笑)
ADL向上のための知識と、転倒予防を徹底している同僚ナースの姿勢に、毎日刺激を受けています。
(転属時、看護師5年目)
【5】現場のリアルがわかる!消化器科ナースのあるあるエピソード
消化器科の先輩たちが経験してきた「消化器あるある」を集めました。
消化器内科・外科の雰囲気をとらえてみてください。
昨日食べたステーキの話を同僚としていたら…
話題のステーキ屋さん「い◯なりステーキ」が、病院近隣にオープンした話を同僚としていたら…!
ナースステーションに絶飲食中の患者さんがやってきた、という先輩のエピソードが聞かれました。
絶飲食中であったり、嚥下機能の障害などで思うように食べられない患者さんが多いのが消化器科の特徴。
うかつに食事の話をできないのも消化器科あるある。
マーゲンチューブ攻防戦!!
マーゲンチューブを患者さんに抜かれ、看護師がまた入れるという攻防戦も消化器あるある。
自己抜去にはさまざまな理由があるので、その背景も理解し、ケアしたうえでの対応が原則です。
術後せん妄や、認知症がある方はよく注意をしていても、「抜かなそうな人がパッと突然抜く」ときに「予測できなかった悔しさがある」という声も聞かれました。
患者さんを覚えきれない
腹腔鏡下での手術もあり、トラブルがなければ3~5日で退院する場合も多い消化器科。
入退院が早いので「患者さんを覚えられない…」というのも消化器科あるある。
カレと会うときはお風呂セット一式!!
ドレーンからの排液のにおいに慣れてしまう、というのも消化器あるある。
自分は慣れているけれど、カレと会う前は「もしかしたら、いま私におってる…?」と気にする先輩ナースの声が聞かれました。
シャワー室がある病院では、日勤後、シャワーを浴びてからデートに行く先輩もいるそうです。
【6】消化器科を目指す新人の疑問に答える!3つのQ&A
消化器科ナースの先輩に新人ナースからの質問をぶつけてみました!
Q:消化器科での勉強法のコツはありますか?
A:「全体のつながり」を意識するとうまくいきます。
とにかく、消化器は範囲が広いので、私は最初、疾患から先に学んでいきました。
入院している患者さんや、次の日に受け持つ患者さんの勉強をしていくうちに、自分たちの病棟でよく看る患者さんの疾患がわかってきます。
そこで、その疾患の病態生理や、治療・ケア、薬などを一通り学んでいった感じです。
疾患と薬を結びつけるのが、難しいと思います。
「この疾患にはこの症状」「この症状にはこのデータ」「こういう症状が出ているから、いま○○が起きてるってことだな」ということがわかるようになってきて、元気になるのが目に見えてわかるのがすごく面白いと気づきました。
キライな分野だったのですが、5年目にもなってみると「面白い」と思えるようになりました!
最初は“点”の知識だったものが、最終的につながってくるととても嬉しいですね。
いってみれば消化器は長い長い1つの器官なんだなぁ、と最近改めてよく思います。
(民間病院 消化器外科 看護師5年目)
Q:消化器科に入職して一番驚いたのは何ですか?
A:「ガーレ還元」を目の当たりにしたときは驚きました。
新卒に消化器で入職して、一番驚いたのがガーレ還元です。
ガーレ還元は、ドレナージした胆汁を体内へ戻すこと。
経口で行う患者さんも多く、排液を飲むという光景に最初は驚いてしまいました。
自分の体から出たものとはいえ、排液なので感染面が大丈夫なのか…なども含めて衝撃的でした。
患者さんによると、すっごくまずいみたいで、心理的な抵抗感もあいまって飲みづらさもひとしおです。
朝食のときに、りんごジュースと一緒に一気飲みしてもらうなどで飲めるようになる方もいますね。
ただ、必要な治療なので、看護師としても患者さんの気持ちに寄り添いつつ、頑張って飲んでもらう工夫が必要だと感じました。
(総合病院 消化器内科 看護師3年目)
Q:消化器科でのやりがいは何ですか?
A:患者さんが回復していく姿。
消化器科に勤務していて、一番のやりがいは患者さんが回復していく姿を見られることです。
もちろん、ほかの診療科でもそうだと思うのですが、消化器はとくに食形態のアップなど、目に見えて元気になっていく患者さんが多いように思います。
自分で食べられること、自分で排泄できることがどれだけ患者さんを活き活きさせるか、日々感じています。
その分、経管栄養の患者さんやストーマ造設の患者さんの負担がいかに大きいかも実感します。
心理面のケアも含めて看られる看護師になることがいまの目標です。
(民間病院 消化器外科 看護師5年目)
(取材・文)看護roo!編集部、新田哲嗣
(イラスト)明(みん)
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