達人が明かす「服薬を嫌がる小児」への秘策

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

小児に薬を処方したときに、保護者から「子どもが薬を飲んでくれない」と相談されたら、どのようなアドバイスをしているだろうか。

小児の処方箋を応需する薬局には保護者から様々な質問や相談が寄せられる。中でも多いのが、「子どもが薬を飲まない」という相談だという。特に苦みが強い抗菌薬などは、患児が服薬を拒否したり吐き出したりして、処方されても「実は飲めていない」ケースは少なくないと考えられる。

(富田 文=日経ドラッグインフォメーション)

 

 

筆者も、薬剤師向けの雑誌『日経ドラッグインフォメーション』で、「子どもへの苦い薬の飲ませ方」といった記事を何度か担当してきたが、実際に子育てに関わることになって初めて、子どもに薬を飲ませるのがこんなに難しい(あるいは面倒くさい)ものなのかと驚いた経験がある。

 

『日経ドラッグインフォメーション』6月号では、小児科診療所の門前薬局で保護者からの相談に日々対応している、小児の服薬指導の達人に話を聞いた。その中から、「子どもが薬を飲まない」と訴える保護者に対する服薬指導のエッセンスを紹介したい。

 

小児への投薬の特徴は、投与量や服薬方法、子どもの薬への反応が、発育に伴って変化することだ。

保護者の希望により500人以上の子どもに薬を飲ませた経験があるアップル薬局(山口県下関市)管理薬剤師の三浦哲也氏は、「生後6カ月までは薬を飲ませるのにあまり苦労しないことが多いが、その後、服薬を嫌がる子どもの割合は徐々に増え、1歳の誕生日前後が服薬を嫌がる子どもが最も多い時期」と話す。

 

これは、成長に伴い味覚が発達し、自我が芽生えるためと考えられる。薬を嫌がる傾向は、3歳ごろまで続く。2~4歳に見られる第1次反抗期(いわゆるイヤイヤ期)が重なり、この傾向が長引くことも少なくない。

 

一方、4~5歳になると、大人の話が十分に理解でき、自尊心も育っているため、指導方法は大きく変わる。この時期の子どもには、服薬の必要性を理解させ、自ら飲もうとする気持ちを引き出すような指導が必要になる。 

 

新生児~1歳はスポイトやお薬団子で

ワタナベ薬局上宮永店(大分県中津市)の松本康弘氏が、初めて散剤を飲む乳児の保護者に勧めるのは、散剤を水で溶かして、スポイトや哺乳瓶の乳首で飲ませる方法。水の量が多いと飲み切れないことがあるので、小さじ2分の1杯(2.5cc)程度の少量の水で溶かす。乳児が動いて薬がこぼれるのを防ぐために、乳児を写真1のように横抱きにする。

 

写真1 乳児へのスポイトを使った飲ませ方(提供:松本氏、図1とも)

写真1 乳児へのスポイトを使った飲ませ方(提供:松本氏、図1とも)

乳児の右手と脇の間に、投薬者の体を入れて、乳児の右手を固定する。さらに、投薬者の左腕で乳児の左手を固定して動けなくして、薬を飲ませる。 

 

スポイトでの飲ませ方のコツは、少しずつ飲ませること。「薬を0.5mLずつ口に入れては、スポイトを口から出して10秒間待つ」という動作を繰り返す。横抱きにして少量ずつ飲ませると子どもは薬を吐き出せないという。

 

もう1つ、松本氏が勧めるのが、「お薬団子」を作って頬の内側や上顎に塗る方法。よく知られた方法だが、実際に作ってみると意外と難しい。コツは、加える水の量を「1滴ずつ」にすること。1滴垂らしては混ぜることを繰り返して、しっとりとした泥団子のようになったら完成だ(図1)。 

 

図1 「お薬団子」の作り方

図1 「お薬団子」の作り方

薬を小さい皿に入れ、スポイトやスプーンを使って、水を1滴垂らしては混ぜることを繰り返す。水が少な いと粉が残る、水が多いとべちゃべちゃして皿から取りにくい。水の量が適量なら、泥団子のようになる。 

 

服用のタイミングも、乳児にうまく飲ませるための工夫の1つ。松本氏は「乳幼児はおなかがいっぱいになると薬が飲めなくなるため、吸収率などへの影響がない薬であれば、食前に服用させるのも一案」と話す。

 

また、乳児では睡眠や食事の時間が一定しないことが多く、「1日3回朝昼夕食後」などと指示してもうまく飲めないことがある。保護者から相談を受けたら、例えば、分2なら12時間ごと、分3なら8時間ごとにというように、時間で区切って服用するよう勧めるのも一手。松本氏は、一般的な薬物動態の傾向から考えて、「服薬の時間間隔が均等にできなくても、分2なら前回の服薬から6時間、分3なら4時間経過していれば、飲ませても大丈夫」と伝えているという。

 

1歳前後~3歳は、一時的には食品との混合も

薬は本来、水と一緒に服用すべきものだが、薬をひどく嫌がる1歳前後~3歳の幼児に対しては、食品と混合して飲ませる方法がある。

 

気を付けたいのは、食品との混合でかえって苦味が強くなる薬や、薬効が減弱する薬があること。マクロライド系の抗菌薬は、スポーツドリンクなどの酸性飲料と混ぜると苦味が出現する。またミノサイクリン塩酸塩(商品名ミノマイシン他)、トスフロキサシントシル酸塩水和物(オゼックス他)などは粉ミルクや牛乳、乳製品と混ぜると薬効が落ちる、吸収率が低下するなどの可能性がある。

 

一方、服薬時に苦味が問題になりやすい薬は、マクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシンドライシロップ(クラリシッドドライシロップ他)やアジスロマイシン水和物細粒(ジスロマック細粒小児用他)、セフポドキシムプロキセチルドライシロップ(バナンドライシロップ他)、タミフルドライシロップなど。これらは、ハーゲンダッツなどの乳脂肪分の高いアイスクリームや練乳に混ぜて患児に与えると飲んでくれることが多い。

 

また松本氏は、苦い薬が処方された場合に、医師に単シロップを追加で処方してもらうことがある。単シロップは、粉薬に足して服用すると、シロップが薬の苦味をマスクして飲みやすくなる。中性のため混ぜても苦くなる薬がなく、アレルギーの子どもにも使いやすいという。

 

小児にクラリスロマイシンドライシロップやアジスロマイシン水和物細粒などの苦い薬を処方した場合は、患児が薬を飲めたかどうか、医師からも保護者に尋ねてみてほしい。そして飲めていない場合は、薬局でより具体的に服薬指導を受けるよう患者に勧めてほしい。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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