リオ五輪、女性アスリート活躍の陰にこの人!
【日経メディカルAナーシング Pick up!】
リオデジャネイロパラリンピック、とうとう始まりましたね。どんな名場面が誕生するのか楽しみです。また、それに先立つ、リオデジャネイロオリンピック、感動しました。皆様それぞれ、あの場面が忘れられないというお気に入りの一瞬をお持ちと思います。
私はといえば、男子の体操や卓球、400メートルリレーなどに大興奮しましたが、女子の卓球団体に涙し、バドミントンダブルスの高橋選手、松友選手のメンタルの強さに驚愕し、ド根性を見せたシンクロナイズドスイミングの結果に歓喜するなど、女性アスリートの活躍に目が離せない毎日でした。
(小板橋律子=日経メディカル)
そんなオリンピック、パラリンピックを陰で支える医師が、多数いることは皆様ご存じのことでしょう。
オリンピック、パラリンピックとも日本代表選手団の編成を見ると、本部員に3人ずつのスポーツドクターの名前が挙がっていました。加えてオリンピックでは、競泳と柔道、自転車に2人ずつ、陸上競技とサッカー、ラグビーフットボールに1人ずつ専任のスポーツドクターが付いていました。もちろん選手団に名前が載っていなくても、選手たちをサポートしている医師はさらにいるはずです。
日経メディカルでは、隔月のコラム「人物探訪」を掲載していますが、10月号では、国立スポーツ科学センターメディカルセンタースポーツクリニックで、特に女性アスリートを支えている産婦人科医の能瀬さやか氏をフューチャーする予定です。
能瀬氏は、女性アスリート特有の問題の改善に尽力している医師です。女性アスリートは、「女性アスリート三徴(利用可能エネルギー不足[以前は摂食障害]、視床下部性無月経、骨粗鬆症)」という問題を有しやすいことが知られています。欧米では、これらの問題への対策が行われてきていますが、国内では、実態も明らかになっていないという状況だったようです。
そのような中、能瀬氏は、オリンピックに出るようなトップアスリートをはじめとする女性アスリートの健康状態を広く調査し、彼女たちが抱える問題を明らかにするとともに、対策を推し進めています。
例えば、ロンドンオリンピック出場選手を含むトップアスリート630人を対象とした調査で、調査対象者の4人に1人が治療を必要とする月経困難症を有することを明らかにしています。また、月経困難症を主訴に婦人科を受診したことがあるのは、月経困難症を有する女性アスリートの1割(10.6%、17人)のみで、月経困難症の女性アスリートの93.2%が鎮痛薬を使用していたが、53.0%は市販の鎮痛薬でお茶を濁しているという状況でした。
また、月経に伴いパフォーマンスの低下を自覚する女性選手が多いにもかかわらず、大事な試合に合わせて月経周期を調節するアスリートはほとんどいなかったという結果も出ています。一方、海外では近年、女性アスリートの8割以上が低用量ピルを使用しているという報告があるとのこと。
この結果、女性読者の皆様はどう受け止められますか。
男性読者には分かりにくいかもしれませんが、多くの女性にとって生理というのは煩わしいだけでなく、体調不良の原因となり得るものです。私自身、月経困難症だったので、生理のつらさはよく分かります(ひどい時期は、生理痛で丸1日寝込むことが普通でしたので学校を休む、仕事を休むことも多々ありました)し、低用量ピルでいかに体調が良くなるか(天と地ほどの差があります!)を実感しています。
アスリートであれば、生理のパフォーマンスへの影響がより大きいと予想しますが、それに対する対策がほぼ皆無だったというのは本当に驚きですし、そのような状況の中で世界と戦ってきた日本の女性アスリートの忍耐力はすさまじいと思います。でも、根性でなんとかさせるのはあまりに時代錯誤でしょう。そもそも、医学的サポートで容易に解決できる問題が放置されていたなんてショックです。
能瀬氏は、婦人科的な視点を持つスポーツドクターとして女性選手の体調管理に関わっています。今回のリオオリンピックにおける舞台裏も紹介する、次回の人物探訪(日経メディカル10月号に掲載予定)をお楽しみに。
<掲載元>
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