すぐベッドサイドに駆け付けられないから―訪問看護師が守るべき3つのこと|ゼロからの訪問看護

入社から約3ヶ月。

道にも慣れて患者さんのケア内容も頭に入り、やっとひとり立ちできるように。

どこの新人もそうであるように、私も失敗の連続でした。

先輩からひとり立ちにあたり守るべきことを教えてもらっていたのですが、それを守れず大きな失敗もしてしまいました。

 

ゼロからの訪問看護

Vol.5 すぐベッドサイドに駆け付けられないから―訪問看護師が守るべき3つのこと

 

すぐにベッドサイドに駆けつけられない訪問看護師が守るべきこととは

夏に入った頃、ほとんどの患者さんのお宅にひとりで行けるようになりました。患者さんの特徴を覚えて自分なりに工夫してケアを行なうおもしろさはありましたが、知識も経験も少なく家族からの質問に答えられず、あせることもよくありました。

私はひとり立ちする際に先輩からいくつかの注意事項を言い含められていました。

 

①「家族からの質問には、わかったふりをせずに一旦持ち帰り調べてから答えること」

②「もし患者さんの状態に異常が見られたら、すぐに医師に連絡して指示を仰ぐこと」

③「次の訪問まで患者さんが何のトラブルもなく過ごせるように先をみて看護すること」

 

この3つを守るように言われていました。

これは看護師としては当たり前のことかもしれません。でも、特に3つ目は、病院のようにナースコールひとつで駆けつけることのできない訪問看護師が心しておかなければならないことだったのです。

 

家族の関係か?患者さんの安全か?

脳梗塞の後遺症で右側の手足が上手に動かない80代の女性の患者さんがいました。お嫁さんと一緒に暮らしていて、介助を受けながらトイレに何とか歩いて行っていました。

 

私が訪問した時は少し体調を崩されていて、トイレに歩いて行くのはつらそうな様子。一時的にベッド上でトイレを済ますことができたら楽だろうと思ったのですが、患者さんに相談したところ「お嫁さんの前で恥ずかしいし迷惑をかけたくない」との答えが返ってきました。

 

お嫁さんは感じのよい方で義母である患者さんを大切にしているようでしたが、少し疲れている様子もあり、私は訪問時この提案を言葉にすることができなかったのです。心の中で「もしかしたら転ぶのではないか」という考えがよぎりはしたのですが、口にすることはできませんでした。

 

訪問時のケアだけでは不十分。次までの間のケアも

訪問の翌日、患者さんが転んで骨折し救急搬送されたという連絡が入りました。

「ああ、やっぱり」という気持ちと後悔が一気に押し寄せてきました。「あの時、手をうっておけば」と。

 

訪問時の私の迷いを先輩に話したところ、「家族の関係を考えるのも大事だけれど、まずは患者さんの安全を考えて先を考えて看護しなければいけなかったね。迷ったらまずは相談して」と言われました。

 

訪問看護師は病院のように患者さんの元へすぐに駆けつけることはできません。だからこそ、先の先をみて次の訪問時まで患者さんが安全に自宅で過ごせるように考えることがとても大事なのです。

この患者さんの今の問題は何か、問題があれば主治医、ケアマネージャー、先輩、ありとあらゆる関係機関に相談し、解決方法を見出していく、その大切さを学んだ出来事でした。

 

次回最終回、在宅で看取るということについてまとめてみたいと思います。

 


【筆者】なつのようこ

訪問看護師2年目。一般企業で勤務する中で在宅医療に触れ、自ら訪問看護師になるべく辞職し42歳で看護学校に入学。看護師として一般病院で1年勤務後、訪問看護ステーションに入職し勤務中。

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