在宅で看取るということ、訪問看護師ができること|ゼロからの訪問看護

訪問看護師になって一年が経ち、自宅で亡くなっていく患者さんのケアにあたることもありました。

さまざまな状況の中で、多くの患者さんが亡くなっていきましたが、自宅で過ごせたことでどの方も最期までその人らしく生きぬかれたように思えます。

「その人らしく最期まで」を支える。訪問看護師の大事な仕事です。

 

ゼロからの訪問看護 最終回

Vol.6 在宅で看取るということ、訪問看護師ができること

 

在宅での看取りを選ぶ

人生の最期の時間を自宅で家族に見守られて過ごしたいと考える患者さんが多いにもかかわらず、現実には病院で亡くなられる方のほうが多いのが現実です。

 

自宅でのターミナルケアは、ご家族の負担や急返時の対応など、さまざまなハードルがあります。患者さん自身が「家族に迷惑をかけたくない」という思いを抱く場合も多くあります。

それでも自宅に戻りたいと患者さんが希望し、ご家族も同意した場合、在宅でのターミナルケアが始まります。

 

在宅ケア開始時のアセスメント

患者さんが在宅でのターミナルケアを選択されると、私たち訪問看護師への連絡は病院の地域連携室やケアマネージャーなどから入ります。退院前に関係者が集まる退院時カンファレンスに参加する場合もありますし、情報だけ先にいただいて退院してから訪問が始まることもあります。

 

私たちは最初の訪問で、患者さんの状態を把握すると共にご家族の精神・身体的状態をつぶさにみてきてアセスメントします。そして患者さんやご家族と信頼関係をつくれるように注意をはらうのです。

 

ご家族が精神的に不安定な場合には、初回訪問でご家族の気持ちや今後起こってくるであろうことなどをまったく話さず、できるケアだけして様子をみることもあります。

無神経に患者さんやご家族の心に踏み込むことが、その後の信頼関係の構築に大きく影響することがあるからです。

 

「治す」治療から「死へ向かう」治療に変わるということ

ご家族が在宅での看取りを行うためには、患者さんの治療が治す治療から痛みを緩和し自然に死へと向かっていく治療に変わったことを、患者さんご本人、ご家族に理解していただく必要があります。

(もちろん全ての患者さんにすべての事実をお話するわけではありません。ご家族とも相談して、どうすべきかを患者さんごとに考えていきます)

 

そのためには機会を見計らって、ご家族に在宅での看取りをどう考えているか、患者さんに今後起こってくる症状と対応の仕方などを話していかなければなりません。

 

もちろん、これは訪問看護師だけでなく主治医と連携して行なっていきます。(医師が話した内容を看護師が補足するなど)そして、ご家族には、つらくなったらいつでも方向転換して構わないことや何でも相談してもらえるようにお伝えします。

 

病院でケアをしているのであれば、ご家族は病院でから一歩外へ出ればつらい現実から少しだけ離れられます。でも在宅の場合、同じや屋根の下で暮らしているので、常に患者さんの様子がわかってしまいます。少しずつ弱っていく様子を見続けることが耐え難くご家族の心がゆれることもあるのです。

 

そんな時はご家族に声をかけてゆっくり話を聞くように努めます。ご家族が正直な気持ちを吐き出せるように、話を誘導してしまうことがないように注意するよう先輩からも言われています。

 

これからの変化と対応を徐々にお伝えする

ある患者さんは自宅に戻り、大好きだったうなぎをほんの一口食べたり、ベランダの植物を愛でたり、愛犬を撫でたりして最期の時を過ごされました。

 

介護していた娘さんには、気持ちが落ち着いている時を見計らって患者さんの病状がどう変化していき、どう対応すればよいのかをその都度お伝えしていきました。

今後どう変化していくのかがわかっていれば、病状の変化がみられた時にも慌てずにすむからです。それでも不安な時は往診医や訪問看護師に電話するように言ってありました。

 

エンゼルケアもご家族と一緒に

自宅に戻って十日程経った頃、その患者さんは静かに息を引き取られました。最期まで娘さんに声をかけられながら。

 

往診医の死亡確認が終わってから、娘さんと一緒にお見送りの支度をさせていただきました。体を拭いて、患者さんが好きだった服を着せて旅立ちの準備をします。葬儀社の方が本格的なエンゼルケアはしてくださるので私たちは旅立ちのための身づくろいをさせていただく気持ちでケアを行いました。

 

娘さんはもうすでに心の準備ができていたのでしょう。患者さんの思い出話をしながら、落ち着いてお見送りの支度をしていました。

思い出話に耳を傾けて、ご家族の気持ちが少しでも落ち着くようにエンゼルケアを行うことも、とても大事なことです。

 

ご本人が納得できる最期を

前述の方のようにご家族の献身的な介護のもとに亡くなられる方ばかりではありません。一人暮しで誰にも看取られずに自宅で亡くなる方もいらっしゃいます。

 

それでも、自分の慣れ親しんだ自宅で自分の好きなように過ごしながら最期の時を過ごすことを選んだ患者さんは、その選択について少なからず納得されていたのではないかと思えるのです。

もちろん不安をたくさん抱えてはいますが、そういった気持ちを抱えた患者さんを支えるのも訪問看護師の仕事だと思います。

 

 

私は訪問看護師になったことをまったく後悔していません。体力的にも精神的にもつらい時はありますが、それを差し引いても訪問看護師はやりがいのある仕事だと思っています。

病院での看護から在宅での看護が比重を増していくなか、もっともっと訪問看護師が増えて欲しいと思いますし、自分も僅かながらですが志をもって訪問看護師を続けていきたいと思います。

 


【筆者】なつのようこ

訪問看護師2年目。一般企業で勤務する中で在宅医療に触れ、自ら訪問看護師になるべく辞職し42歳で看護学校に入学。看護師として一般病院で1年勤務後、訪問看護ステーションに入職し勤務中。

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