最終更新日 2018/10/24

ペプシノゲン

ペプシノゲンとは・・・

ペプシノゲン(ぺぷしのげん、pepsinogen)とは、のタンパク分解酵素であるペプシンの不活性前駆物質である。胃底部にある主細胞から主に合成・分泌される。

 

働き

ペプシノゲンは胃の中の酸性環境により、分解されてペプシンとなる。ペプシンの活性化には、低いpH環境(pH<2)が必要で、ペプシンの活性はpH4以上で著しく低下し、pH7以上では変性して機能を失う。主細胞より分泌されたペプシノゲンは、1%程度が血中に取り込まれるため、測定が可能となる。
免疫学的にペプシノゲンⅠとペプシノゲンⅡに分けられる。ペプシノゲンⅠは主に胃酸を分泌する胃底腺粘膜から分泌され、ペプシノゲンⅡは胃底腺のほか、噴門腺、幽門腺および十二指腸腺の広範囲から分泌される。
胃粘膜に炎症が生じるとペプシノゲンⅠ、Ⅱともに分泌量が増加する。胃粘膜の萎縮が進行すると胃底腺領域も萎縮し、幽門腺領域が拡張することから、ペプシノゲンⅠに対してペプシノゲンⅡが相対的に増加し、Ⅰ/Ⅱ比が低下する。

 

活用

ペプシノゲンⅠ値は、胃酸分泌能と相関しており、ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比は胃粘膜の萎縮を伴う疾患で有意に低下することから、ペプシノゲンⅠ値およびペプシノゲンⅠ/Ⅱ比の組み合わせによる解析は、消化性潰瘍、萎縮性胃炎の診断に有用である。また慢性胃炎患者では、胃の萎縮が進むほど胃がんが発生しやすいことから、ヘリコバクター・ピロリ菌感染検査と組み合わせて、胃がん危険群のスクリーニング「ABC検診」が推奨されている。

 

判別することのできる疾患

(1)ペプシノゲンⅠ値が高値の場合

胃粘膜内での産生増加、あるいは腎からの排泄低下があり、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、腎不全プロトンポンプ阻害薬などの胃酸分泌抑制薬内服時など

 

(2)ペプシノゲンⅠ値が低値の場合

胃粘膜内での産生減少か、胃粘膜量そのものの減少であり、萎縮性胃炎、胃がん、切除胃、悪性貧血など

執筆: 浅香葉子

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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