循環調節
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は循環調節について解説します。
中嶋ひとみ
新東京病院看護部
〈目次〉
循環調節って何だろう?
循環調節(循環調節機構)とは、身体活動や低酸素、出血など身体の需要に応じて血流量を正常に保つための調節機構です。
循環調節の役割は下記の2つです。
①組織への血液量の維持と調節(運動時や低酸素時の血流配分)
②血圧を正常範囲に保つ
循環調節は、受容器という血行動態をモニタリングする感知器で血行動態の変化をモニタリングして行います(図1)。
循環調節の中枢(司令塔)は延髄(えんずい)です。
調節機構からみた循環調節には、神経性調節、液性調節、局所調節があります。
受容器からみた循環調節
受容器からみた循環調節のしくみには下記の3つがあります(表1・表2)。
①圧受容器
②化学受容器
③腎臓の圧受容器・浸透圧受容器
表2延髄からの指令が作用する部位と内容
調節機構からみた循環調節
神経性調節
神経性調節を担うのは自律神経で、交感神経と副交感神経です(表3)。
交感神経※1の興奮は心拍数を上昇、心収縮力を増加、血管を収縮させることで血圧を上昇させます。副交感神経系※2の興奮は心拍数を減少、心収縮力を低下させることで血圧を低下させます。
液性調節
ホルモンなど液性因子による循環調節を液性調節といいます。
血圧低下に対して腎臓ではレニンを分泌し、レニン-アンジオテンシン系(RA系※3)・レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系※4)と呼ばれる代償機転をはたらかせ、心拍出量を増加、血圧を上昇させます。
血圧を上昇させるホルモンには、アンジオテンシンⅡ、アルドステロン、バソプレシン、アドレナリン、ノルアドレナリンがあります。
血圧を低下させるホルモンには、心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)があります。
局所調節
平滑筋や心筋自体に備わった調節機構を局所調節といいます。
局所調節には、短期的な調節と長期的な調節があります(表4)。
★1 Frank-Starlingの法則
※5 自己調節
※6 血管新生
※7 腎臓-体液系による血圧調節
循環調節機構と作用発現時間
それぞれの調節系は作用発現までの時間により、調節能力の差があります(表5)。
[memo]
- ※1 心臓の交感神経の分布(上へ戻る↑)
洞結節、房室結節、ヒス束、プルキンエ線維、心房筋、心室筋。
- ※2 心臓の副交感神経の分布(上へ戻る↑)
洞結節、房室結節、心房筋。
- ※3 RA系(上へ戻る↑)
レニン分泌からアンジオテンシンⅡ分泌まで。
- ※4 RAA系(上へ戻る↑)
RA系後のアルドステロン分泌と飲水量の増加、血管の収縮まで。
- ※5 自己調節(上へ戻る↑)
オートレギュレーションといい、血圧を一定に保とうとする調節のこと。
- ※6 血管新生(上へ戻る↑)
必要に応じて新しい血管を新生すること。
文献
- 1)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017:2-29.
- 2)稲田英一,医療情報科学研究所:イメカラ 循環器 ̶イメージするカラダのしくみ.メディックメディア,東京,2010:2-19.
- 3)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,東京,2015.
- 4)小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:632-654.
- 5)坂井建雄,河原克雅編:カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
- 6)増田敦子編著:身体のしくみとはたらき̶楽しく学ぶ解剖生理.サイオ出版,東京,2015.
- 7)大谷修,堀尾嘉幸:カラー図解 人体の正常構造と機能 第2巻 循環器 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社