内分泌系の副司令塔はどこにあるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「内分泌系の副司令塔」に関するQ&Aです。
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山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
内分泌系の副司令塔はどこにあるの?
視床下部からのホルモンを受け取り、その情報を下位に伝えるホルモンを分泌するのが下垂体前葉と下垂体後葉です。下垂体は視床下部から細い茎で下垂し、蝶形骨(ちょうけいこつ)のトルコ鞍の中央に収まっています。
下垂体前葉は腺細胞の集合体で、6種類のホルモン(成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、乳腺刺激ホルモン)を分泌します(表1)。
下垂体後葉は神経線維でできており、オキシトシンと抗利尿ホルモン(バゾプレシン)という2種類のホルモンを分泌します。
表1下垂体ホルモン
この2種類のホルモンは、視床下部の前方にある視索上核と室旁核の神経細胞の中で合成され、下垂体後葉まで伸びる軸索の中を移動してきて下垂体後葉部に貯蔵され、必要に応じて分泌されます。
COLUMNビールを飲むと分泌が抑制されるホルモン
下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンは、腎臓の集合管に作用して水の再吸収を促進する働きがあります。血液の浸透圧が上昇すると、抗利尿ホルモン(ADH、バゾプレシン)の分泌が増加し、尿量を減少させて浸透圧を正常に近づけようとします。また、血圧が低下したときも抗利尿ホルモンの分泌が増加し、末梢血管を収縮させて血圧を上昇させるという調節を行っています。
この抗利尿ホルモンの分泌が抑制されると、どうなるのでしょう。抗利尿ホルモンが減少すると、腎臓での尿の再吸収が抑制されます。すると尿量が増加し、1日に5~10Lの尿が排泄されます。さらに、水を飲まなくても尿量が増え続け、体重減少や脱水症状を引き起こします。これを尿崩症といい、下垂体付近の腫瘍や外傷などが原因で起こります。
このように何らかの疾患が原因で尿量が増える以外にも、日常生活のなかで尿量が増える場合があります。それはビールなどのアルコール飲料を飲んだときです。アルコールには、抗利尿ホルモンの分泌を抑制する作用があるため、トイレに何度も通うことになるのです。
※編集部注※
当記事は、2017年9月15日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版