関連痛|感覚

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、関連痛について解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 1. 内臓の痛みを皮膚の痛みと錯覚することを関連痛という。
  • 2. 狭心症や心筋梗塞の痛みを左肩から左手内側の皮膚の痛みと感じる。

 

関連痛とは

内臓痛を伝える感覚神経と皮膚の痛覚を支配する感覚神経が同じ高さの脊髄後角に入り、共通の脊髄視床路の神経に接続する。その結果、大皮質の体性感覚野が内臓痛を皮膚痛と誤認することを関連痛という(図1)。

 

図1関連痛の発生機序

関連痛の発生機序

 

関連痛には表1のようなものがある。

 

表1関連痛の例

関連痛の例

 

イギリスの生理学者ヘンリー・ヘッド(Henry Head、1861~1940)により示されたヘッド帯はこの関連痛を感じる皮膚の位置にほぼ対応している。鍼灸では、ヘッド帯(Head Zone)に相当する位置を経穴(けいけつ)、あるいは「つぼ」とよぶ。

 

脊髄神経

脊髄から左右に出ている末梢神経系を脊髄神経(spinal nerves)とよび、31対ある(「末梢神経系」参照)。

 

31対は、頸神経(cervical nerves)8対(C1~C8)、胸神経(thoracic nerves)12対(T1~T12)、腰神経(lumber nerves)5対(L1~L5)、仙骨神経(sacral nerves)5対(S1~S5)および尾骨神経(coccygeal nerve)1対(C0)からなる。

 

脊髄神経が脊髄に出入りするところは細い糸状の神経が並んでいて根(こん〔root〕) とよぶ。感覚神経が脊髄に入るところは後根(こうこん、〔dorsal root〕)、運動神経が 脊髄から出るところは前根(ぜんこん〔ventral root〕)である。

 

前角および後角は脊髄の灰白質の部分の名称である。ヒトはほかの動物に比べ後根/前根の神経線維の比率が高く、感覚が繊細な上肢の領域で特にそれが顕著である。後根が感覚神経、前根が運動神経という規則をベル・マジャンディーの法則(Bell-Magendie's rule)という。

 

皮膚分布

顔面および頭部前面の皮膚は脳神経(脳から出る末梢神経系)で支配されるが、その以外の皮膚は脊髄神経で支配される。31対の脊髄神経が帯状に皮膚を支配し、それぞれの脊髄の後角に入る脊髄神経(感覚神経)が支配する皮膚領域を皮膚分節(dermatome)とよぶ(derm および tom は、それぞれギリシャ語で「皮膚」および「切る」の意味)。

 

関連痛は内臓と皮膚の障害受容器の軸索が同じ経路で脊髄後角に入るので、脊髄神経で支配される皮膚分節にしたがって内臓の痛みを皮膚の痛みとして感じる。

 

NursingEye

アイスクリームやかき氷など冷たいものを食べたときコメカミがキーンと痛むことがあり、アイスクリーム頭痛 (icecream headache)とよばれている。これは冷たいものを食べて喉の奥が刺激されると、顔全体の痛覚の感覚神経である三叉神経が活動し、直接には触れていないコメカミなどに刺激を受けたと脳が勘違いを起こすもので関連痛の一種である。

 

※編集部注※

当記事は、2017年6月9日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ