逆行性腎盂造影(RP)|腎・泌尿器系の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、逆行性腎盂造影(RP)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- 逆行性腎盂造影(RP)とはどんな検査か
- 逆行性腎盂造影(RP)の目的
- 逆行性腎盂造影(RP)の実際
- 逆行性腎盂造影(RP)前後の看護の手順
- 逆行性腎盂造影(RP)において注意すべきこと
- 逆行性腎盂造影(RP)に関する患者との問答例
逆行性腎盂造影(RP)とはどんな検査か
逆行性腎盂造影(RP)は、 膀胱鏡下で尿管内にカテーテルを挿入し、造影剤を直接腎盂内に注入し、腎盂、腎杯、尿管を撮影する。
逆行性腎盂造影(RP)の目的
腎、腎杯、腎盂、尿管、血管の形態や位置確認、出血の原因、結石や腫瘍、血管病変の評価、腫瘍の存在、腫瘍の栄養血管の同定などの観察をする。
※ 腎機能低下・ヨードアレルギーなどのために静脈性尿路造影が行えない、または画像が不明瞭であるCTなどでも診断が難しい場合に適応となる。
逆行性腎盂造影(RP)の実際(方法)
医師から患者・家族へ検査の必要性、方法、合併症の可能性について説明し同意を得る。
1)患者の準備
排尿後、貴重品を除去し、検査着に着替える。
2)検査の準備
- ①必要物品を広げた滅菌処置用シーツの上に準備する。
- ②滅菌カップに造影剤と生理食塩液を混和させる。
- ③検査台に処置用シーツを敷く。
- ④患者を検査台に移動し、下半身の脱衣後、仰臥位になり、露出部をバスタオルなどで覆い、体位を砕石位とする。
- ※股関節の開脚の角度を患者に苦痛がないような調節と保温に努める。
3)手順
- ①陰部を広範囲に消毒し、布片を大腿部から下腿にかける。
- ②膀胱鏡の準備をする(「膀胱鏡検査」を参照)。
- ③還流液(生理食塩液1000mL)を輸液ルートに接続し、輸液スタンドにかける。
- ④還流液を膀胱鏡に接続する介助を行う。
- ⑤男性の場合:表面麻酔薬(リドカイン塩酸塩ゼリー)を尿道口より10~20mL注入し、10分間ペニスクレンメで尿道口をクランプする。
- ※リドカインショックなどの過敏反応の観察のため、その間患者から離れず全身状態の観察を行う。
- ⑥女性の場合:膀胱鏡に滅菌グリセリンを充填し、挿入時のすべりをスムーズにする。
- ⑦患者に口呼吸を促し、リラックスした状態で医師が膀胱鏡を挿入し、観察する。必要時、吸引する。
- ⑧膀胱鏡が挿入されている間は、動かないよう説明し、口呼吸を促し、腹圧がかからないよう声かけを行う。
- ⑨医師は膀胱内を観察し、目的の尿管に造影をしながら尿管カテーテルを進め、腎盂・腎杯を造影し、X線撮影を行う。
- ※左右の尿管カテーテルから分腎尿を採取するときはスピッツを準備しておく。
- ※尿管狭窄や尿管結石の処置として、尿管ステントの留置または交換をすることもある。
- ⑩膀胱鏡を抜去する。
- ⑪検査終了後は、陰部を清拭し、患者の更衣を介助し、検査台より降ろす。
- ⑫検査後の注意点について説明する。
- ※感染予防のため抗生物質が処方されることがある。また同様の目的で飲水指導(1,500~2,000mL)をする。
- ⑬バイタルサインと一般状態は検査前後に観察する。
逆行性腎盂造影(RP)前後の看護の手順
患者への説明
- 尿道から膀胱鏡を挿入し、カテーテルを尿管に進め、造影剤を注入しX線撮影する。
- 検査前1食を食止め(4時間あける)とし、水分摂取は可能である。
- 感染予防のため抗菌薬が処方された場合は、必ず服用する。また同様の目的で水分を1,500~2,000mL多めに摂り、排尿を促す(表1)。
- 検査にかかる時間は、30~40分である。
※尿管ステントを留置する場合は、60分程度である。
準備するもの
滅菌処置用シーツに準備するもの
・注射器数本(造影剤注入用麻酔用) ・ガーゼ数枚滅菌カップ2 個 ・滅菌穴あき布片
造影剤(非イオン系:60%ウログラフィンなど)
・20mL数本・生理食塩液20mL数本(造影剤と混和する。使用量は医師の指示による)還流液(生理食塩液)500mLまたは1,000mL輸液ルート・鑷子・消毒液(0.05%塩化ベンザルコニウム液または10%ポビドンヨード)・綿球・膿盆・処置用シーツ・露出部を覆うバスタオルまたは布片
男性の場合
・ペニスクレンメ ・表面麻酔薬(リドカイン塩酸塩ゼリー) ・ガーゼ
女性の場合
・潤滑剤2%キシロカインゼリー
検査後の管理
- 検査後の安静、飲食は制限ない。
- 発熱、尿道からの出血、尿道痛、排尿時痛などを観察する。
- 感染予防のため飲水(1500〜2000mL)指導を行い、排尿を促す。同様の目的で抗生物質が処方された場合は服薬指導を行う。
逆行性腎盂造影(RP)において注意すべきこと
1)検査前
- アレルギーの体質、また既往症はないか、以前の造影剤の使用歴、その副作用の有無を確認する。
- 高齢者や四肢機能に障害があり、砕石位をとることが困難な人もいるため、開脚の角度や体位に留意する。
2)検査中
- 造影剤および表面麻酔薬、使用薬剤の副作用に注意し観察する。
- 声をかけ、不安の除去を行うと共に、顔色、表情から患者の苦痛、不快の有無を観察する。
- 還流液が空にならないよう補給する。
- 検査前、検査後を通して患者を内視鏡台に一人きりにしない。女性患者の場合は、医師と二人きりにしない。
- 羞恥心を伴うものであるため、プライバシーに十分配慮した関わりをもつ。
- 露出部位は最小限とし、保温に努める。
3)検査後
- 検査終了後、出血がある場合はガーゼをあてておく。その後は汚染されたときは尿取りパットなどを使用する。
※汚染されたら、尿取りパットを交換し、清潔を保持する。 - 排尿時痛や不快感・残尿感、血尿を伴うことがあるため十分な説明を行う。
- 飲水および内服の必要性について、確実に実施できるように説明する。
4)合併症
- 尿閉、排尿困難:操作による尿道浮腫である。女性の場合はまれであるが、特に前立腺肥大がある場合注意が必要である。
- 尿路感染:操作による細菌の侵入、膀胱壁や尿道の炎症、尿管ステントの留置による。膀胱炎では排尿痛、頻尿強い尿臭であるが、38.0℃以上の発熱や吐き気、腰痛がある場合。腎盂腎炎を疑う。
- 出血:重度の出血が起きることがある。
- 膀胱刺激症状、排尿痛:操作や尿管ステントの留置による炎症である。
- 腰背部痛:尿管ステント留置による刺激や炎症である。
逆行性腎盂造影(RP)に関する患者との問答例
検査着に着替え、下半身の衣服は脱いでください。
痛くないですか?
内視鏡を尿道から挿入するため、多少痛みがあります。力を入れると痛みが強くなるので口で呼吸をしてお腹に力を入れないようにリラックスしてください。
また体を動かさないようにしてください。膀胱内にお水を入れるため、お小水をしたいような感じになります。
痛みによっては鎮痛剤も使用することがあるので、痛みが強いようでしたら、遠慮なくおっしゃってください。
出血しませんか?
検査後お小水に血液が混じったり、排尿の時の痛みが数日あると思いますが、2~3日でよくなります。
血尿や尿道の痛みなど症状が続くようでしたら病院へ連絡してください。
略語
- RP:retrograde pyelography(逆行性腎盂造影)
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版