小児の静脈血の採血
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児の静脈血の採血について解説します。
風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室
静脈血を採血するには注射針、翼状針、留置針を用いる方法がある。
適切な血管を穿刺し、検体容器は乾燥したものを使用する。
1 必要物品の準備と説明
看護師は手洗いを行い、必要物品を準備する(図1)。翼状針とシリンジは、あらかじめ接続しておく。
指示の採血量を確認。患児と家族に検査の目的を説明する。患児には発達段階に応じた説明を行い、採血時は動かないように話す。
図1 必要物品
❶注射針+シリンジ、翼状針+シリンジ、留置針
❷検体容器(微量採血管)
❸駆血帯
❹肘枕
❺70%アルコール綿
❻手袋
❼絆創膏
❽針捨て容器
❾処置用シーツ
❿検体ラベル
⓫検査伝票
※採血後に輸液を開始する場合は、留置針を用いる。
※採血のみの場合は、注射針(23G)を用いる。
※乳児・小児では、少量の血液で検体検査ができる微量採血管を用いる。
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2 静脈穿刺(手背の場合)
留置針を用いる場合
❶採血部位を決定し、露出する。
駆血帯を巻き、静脈を触知。採血部位の上下の関節部を抑制し、穿刺部が動かないよう固定する。介助者が、穿刺部と反対側の腕を押さえる。
採血部位を70%アルコール綿で消毒し、乾燥を待つ。皮膚を伸展させ、15〜30度の角度で針を刺入する(図2)。
図2 15〜30度の角度で針を刺入
POINT
■採血部位の上下の関節を抑制。
■15〜30度の角度で針を刺入。
❷穿刺針に血液の逆流を確認したら、 血管の走行に合わせてゆっくりと針を進める。
針の2/3ほど挿入したところで、内筒を少し引き抜いて再度、血液の逆流を確認する(図3)。
内筒を抜去する。
図3 血液の逆流を確認
POINT
■血液の逆流が確認できない場合は、内筒針を少し抜いて確認するか、穿刺しなおす。
静脈穿刺(手背の場合)の流れは、以下のとおり(図4)。
図4 静脈穿刺(手背の場合)の流れ
CHECK!
スムーズに採血を実施するには
・検体を取り違えないよう注意
検査目的を理解し、採血前に検体容器にラベルを貼って患者氏名を確認。
検体を取り違えないよう注意する。
・おもちゃ、音楽を活用
採血時は、患児の好きなおもちゃや音楽を活用して、できるだけ不安や緊張を和らげる。
・静脈がわかりにくい場合は
静脈が触知しにくい場合は、蒸しタオルなどで温めるとよい。
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3 静脈血の採取
シリンジを接続する場合
留置針の刺入部を絆創膏で固定する。シリンジを接続し、内筒をゆっくりと引いて、指示量の血液を採取する(図5)。
強く引くと陰圧がかかり、血管が虚脱して血液が採取しにくくなる。
図5 シリンジを接続して採取
POINT
■シリンジの内筒はゆっくりと引く。
■強く引くと、血管が虚脱する。
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滴下法による採取
小児は血管が細いため、シリンジで採取すると陰圧がかかって血液が引けない場合には、滴下法を用いる(図6)。
留置針から滴下する血液を検体容器で受ける。凝固剤が入っている場合は、時々回して凝固を防ぐ。
図6 滴下法による採取
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翼状針を用いる場合
翼状針を穿刺し、シリンジを接続して血液を採取する方法もある(図7)。
シリンジの内筒をゆっくりと引き、血液を採取する。
図7 翼状針を用いての採取
EVIDENCE
■急激にシリンジを引くと、血管が虚脱し、血液の流出が悪くなる。
CHECK!
採血後のポイント
①十分な量の血液が採取できたら、70%アルコール綿を刺入部に当て、針を抜く。そのままアルコール綿で刺入部位を圧迫する。
②止血は3~5分行う。出血傾向が強い場合は、圧迫時間を延長する。
③止血後、絆創膏を貼る。
④検体容器に血液を必要量入れ、検査に提出する。
⑤患児ががんばったことをほめ、家族にも伝える。
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穿刺時の抑制方法
肘窩部
肘関節の上下2箇所の関節(肩・手首)を固定する(図8)。
反対側の腕ごと体幹をタオルでくるんで全身を抑制する。
図8 肘窩部の抑制
POINT
■穿刺部の上下2箇所の関節を固定する。
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手背
実施者の示指・母指で、患児の手首と指を固定する(図9)。
反対側の腕ごと体幹をタオルでくるんで全身を抑制する。
図9 手背の抑制
POINT
■穿刺部の上下2箇所の関節を固定するのが原則。手首の関節、指の関節を固定している。
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ