小児の採血の目的と部位
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児の採血の目的と部位について解説します。
風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室
検査に応じて静脈血、動脈血、毛細血管血を採取し、診断・治療に生かす目的で採血を行う。
患児と家族に必要性をよく説明し、理解・協力を得るとともに、苦痛を和らげるケアが大切である。
小児の採血時の注意点
採血前
- 1患児と家族に説明を行う。患児には成長・発達段階に合わせた説明を行う。
- 2苦痛を伴う検査であるため、患児と家族の納得を得て実施することが大切である。
- 3「痛くない」とうそをつかないようにし、例えば翼状針なら「ちょうちょに似ている」などと話し、不安を和らげる。
- 4幼児以上の患児は、採血前に排尿をすませる。
採血時
- 5解剖学的に正しい方法で、安全に配慮し、正確に行う。
- 6原則として病室ではなく処置室で行い、プライバシーに配慮する。
- 7必要であれば、抑制を行う。
- 8採血中は「もうすぐ終わるからね」など声をかけ、患児の状態を観察する。
採血後
- 9採血終了後は、止血を十分に行う。静脈血採血は3〜5分、動脈血採血は5分以上圧迫し、確実に止血されたことを確認する。
- 10がんばったことをほめ、乳幼児なら落ち着くまで抱っこする。
目次に戻る
小児の採血部位
静脈・動脈・毛細血管から採取する。
静脈血採血
静脈血採血には肘の静脈のほか、内踝部・外踝部の静脈、手首・手背の静脈、外頸静脈、大腿静脈が用いられる(図1)。
図1静脈血の採血部位
動脈血採血
動脈血採血には橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈が用いられる(図2)。
図2動脈血の採血部位
毛細血管血の採血
毛細血管血の採血は、乳児では足底、年長児では指や耳朶が用いられる(図3)。
図3毛細血管血の採血部位
POINT
静脈採血時の注意点
■点滴をしている腕または足からの採血はやめる。
→溶血や凝固になりやすい。
■手を握ったり開いたり(クレンチング)をさせない。
→カリウムが血中に出てきて、異常高値を示す場合がある。
■長時間のうっ血をしない。
→血管内の水分が組織に移動して、血球、蛋白、蛋白に結合した物質が濃縮される。循環障害のため、乳酸が上昇する、または凝固系が活性化されるなど、多くの検査に影響がある。
※凝固系の検査は2分以内での採取が望ましい。
溶血させないポイント
■皮膚の消毒剤が乾いてから穿刺する。
■無理に圧をかけて吸引しないで、泡が立たないようにする。
■特に細い針を使用するときは、ゆっくり採血する。
■分注するときは、針をはずして注射筒の先を容器の壁につけ、ゆっくり流し込む。
■注射器に残った泡の部分を容器に入れない。
目次に戻る
採血の目的
- 1疾患の診断・症状の程度を知る。
- 2静脈血採血 : 一般血液検査、生化学検査、血清学的検査などに用いる。
- 3動脈血採血 : 血液ガス分析、血液培養などに用いる。
- 4毛細血管血採血 : 血糖、ビリルビン、血液ガス分析、新生児マススクリーニング、ガスリー検査などの微量測定に用いる。
目次に戻る
本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ