「発汗」「血圧高め」は、ショックのサイン?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「発汗」「高めの血圧」とショックの関係について解説します。
宮沢 寿
新潟市民病院 検査放射線科急患外来/救急看護認定看護師
「発汗」「血圧高め」は、ショックのサイン?
「発汗(冷汗)」はショックの徴候の1つです。また、血圧が低下していないからといって、ショックを否定することもできません。
ショックと発汗
汗が分泌される原因は、①体温調節を目的とする温熱性発汗、②緊張・不安を感じたときや苦しいときにみられる精神性発汗、③辛いものを食べたときにみられる味覚性発汗、④ショック状態、の4つです。
ショックは「有効循環血液量の急激な減少により、広範な臓器において循環不全による機能低下を生じた病態」です。身体の危機的状態なので、身体は重要臓器への循環を維持するため、さまざまな反応(=代償機転)を示します。その反応の1つが、交感神経の亢進です。
交感神経は、生体内のほとんどの臓器に存在します。通常、心臓では心拍数増加、消化管では消化管運動低下などのはたらきを示しますが、危機的状態であるショック時には、身体を闘争状態にさせるようにはたらきます。
なぜショック時に発汗するのでしょうか?これは、汗腺が交感神経に支配されているためです。交感神経が亢進すると汗腺も刺激され、汗が分泌されるのです。
また、交感神経が亢進すると、重要臓器への循環を維持するために末梢血管抵抗を上げるので、手指末梢の血流が低下し、それに伴って皮膚の温度も低下します。
ショック状態でみられる手指の発汗(冷汗)は、手指の温度低下と発汗が重なるために生じます。
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ショックと血圧
血圧は、血液が血管壁に与える血管内圧のことで、「心拍出量(一回拍出量✕心拍数)✕末梢血管抵抗の因子」によって規定されます。身体は、臓器循環を維持するために、常に血圧を一定に保とうとします。
血圧は、身体活動や精神的影響、飲酒や喫煙、寒冷などによって容易に変化しますが、ショック時には、血圧を規定する因子を変化させて循環を保とうとします。
このとき、痛みや緊張・不安に伴って交感神経が亢進し、血圧を上昇させていることがあります。つまり、臓器血流が低下していても、血圧が低下せず、上昇していることがあるのです。
血圧が高くてもショックの病態が隠れている可能性があることを知っておきましょう。
なお、血圧低下はショックが進行している状態です。血圧低下の前に発見して対応できるとよいでしょう。
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「発汗」「血圧高め」のときは…
温熱性・精神性・味覚性の発汗でないなら、ショック状態かショック直前(プレショック)かもしれません。患者に声をかけて触れながら系統立てて観察し、バイタルサイン・意識状態を含めて総合的に判断する必要があります。
なお、血圧は、体位や行動によって容易に変化するため、観察時は安静にして行います。血圧の「数値」にとらわれないこと、1回の測定で判断せず、継続して測定し、点ではなく線として考えることも大切です。
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引用・参考文献
1)道又元裕 編:重症患者の全身管理.日総研出版,愛知,2009:6‐31.
2)山口弘子:発汗のフィジカルアセスメントとは?.森田孝子 編,ナーシングケアQ&A No.53 救急・急変に役立つ フィジカルアセスメント.総合医学社,東京,2015:106‐107.
3)『救急医学』編集委員会:特集 ショック 救命へのアプローチ.救急医学2015;39(5):525‐547.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社