「ショックの5P」。5つそろわないと、ショックじゃないの?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「ショックの5P」について解説します。
宮沢 寿
新潟市民病院 検査放射線科急患外来/救急看護認定看護師
「ショックの5P」。
5つそろわないと、ショックじゃないの?
1項目でも当てはまる場合は、ショック状態か、プレショック(ショックに至る前)を疑いましょう。
ショックの5Pとは
ショックの5Pとは、ショック状態で現れる多彩な症状のうち、特徴的な5つの症状を表す英語の頭文字からきています(図1)。これらは、医療機器がなくても、患者に声をかけて手に触れながら、私たちの五感を活用して観察できる、とても有用な指標です。
5Pすべてがそろった状態は、すでに重症なショックであり、急激にショック状態に陥る心筋梗塞などの病態で現れます。しかし、5Pのすべてがそろわなくても、ショックを否定することはできません。
身体は、危機的状況に陥ると、恒常性を維持するために交感神経が亢進します。つまり「脈拍が触知できない」「(意識消失して)虚脱する」「(SpO2が低下する)呼吸不全」などは、すぐには起こらないと考えられます。
ショックであっても、顔色は蒼白ではなく土気色かもしれません。また、血液分布異常性ショックでは、顔面の紅潮や手指末梢の温感がみられます。このように、ショックであっても、ショックの5Pすべてにあてはまらないこともあります。
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1つでもショックを疑う
ショックの5Pのなかで、視診によってわかる蒼白や虚脱をみた場合、何かが変だとすぐに気づきます。
また、頻脈や呼吸促拍など、交感神経が関与する変化に気づいたら、ショック状態か、ショックの前ぶれサインかもしれないと疑って観察を進め、異常があれば、ただちに対応が必要です。明らかな異常がみられなくても、その原因がわからなければ経過観察を続け、原因を考える必要があります。
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引用・参考文献
1)佐藤憲明 編:急変アセスメント.照林社,東京,2015:2‐22.
2)日本救急看護学会 監修,日本救急看護学会教育委員会 編:ファーストエイド[補訂版].へるす出版,東京,2013:53‐55.
3)佐仲雅樹:理論と直感で危険なサインを見抜く.カイ書林,東京,2013.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社