「気胸」は、フィジカルアセスメントだけで見抜けるの?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は気胸をフィジカルアセスメントのみで見抜けるかどうかについて解説します。
田中裕子
高松赤十字病院 集中治療室 看護部/救急看護認定看護師
「気胸」は、フィジカルアセスメントだけで見抜けるの?
フィジカルアセスメントだけでは見抜けません。
急に出現した乾性の咳嗽や一側性の胸痛を伴う呼吸困難感があり、自然気胸の特徴を満たす場合や、気胸を起こしやすい処置があった場合、気胸を疑います。
気胸とは
気胸は、何らかの原因により、胸膜腔に空気あるいはガスが貯留した状態1)です。機序によって内因性気胸(体外からの影響がない自然気胸)と外因性気胸(外傷性気胸と医原性気胸)との2つに分けられます(図1)。
特徴的な自覚症状は、突発する一側性の胸痛や乾性咳嗽、呼吸困難感です。入院患者も外来患者も同様に、これらの症状を訴えます。
症状を訴えられない患者の場合、呼吸数増加と続発するSpO2低下がみられます。
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気胸の見抜き方(図2)
気胸は、呼吸のフィジカルアセスメントだけでなく、病態生理や分類、疫学的特徴、症状や身体的特徴をとらえたうえで判断することが重要です。
1 「気胸かも…」と疑う症候
急に出現した乾性の咳嗽、一側性の胸痛、呼吸困難感は、気胸を疑う症候です。このような症状を患者が訴えた場合は、気胸を想定しながら視診・聴診・触診・打診とアセスメントを進めていきます。
2 フィジカルアセスメント
視診では、呼吸数、呼吸補助筋の使用状況や、呼吸パターンを確認します。
続けて聴診で呼吸音減弱の有無を、触診で皮下気腫の有無を、打診で鼓音の有無を確認します。その他、SpO2の測定、既往歴や年齢・体型、当日に実施した検査・処置の確認も行います。
急に出現した呼吸困難感に咳嗽・胸痛を伴い、呼吸数増加や患側の呼吸音減弱、鼓音の出現、SpO2低下がみられ、既往歴・年齢・体型が自然気胸の特徴と合致しており、気胸を起こしやすい処置があれば、気胸を強く疑う状況であると判断できます。
3 緊急性の高い他の病態との鑑別
胸痛が主訴の場合は、緊急性の高い大動脈解離や動脈瘤、急性心筋梗塞、狭心症、頻拍発作、胸部外傷(転倒・転落も含む)、肺塞栓などの鑑別を考えたフィジカルアセスメントが重要です。
また、人工呼吸管理中の患者は、ファイティングやバッキング、気道内圧や換気量の変化、呼吸数の増加を早期にとらえなければ、緊張性気胸という重篤な状況に陥りやすいため、注意が必要です。
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引用・参考文献
1)和田攻,南裕子,小峰光博 監修:看護大事典 改訂第2版,医学書院,東京,2010.
2)藤野智子,三上剛人,柳努 編:特集 重症患者を見逃さない!.救急看護&トリアージ 2011;1(2):2‐91.
3)佐藤憲明 編:急変対応のすべてがわかるQ&A.照林社,東京,2011.
4)道又元裕 監修:CDブック救急トリアージシナリオ集.日総研出版,愛知,2012.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社