大動脈解離とは・・・
大動脈解離(だいどうみゃくかいり、aortic dissection)とは、大動脈に生じた入口部(entry)から中膜内に血液が流入して大動脈壁が解離することで生じる疾患である。
流入した血液は入口部から前方または後方に進展し、流入した血液で満たされた腔は偽腔と呼ばれる。偽腔から元の腔(真腔)への出口(re-entry)や、新たな入口部を形成することがある。
原因
高血圧や動脈硬化が関連していると言われているが、原因は明らかになっていない。
分類
大動脈解離は、解離の部位によって以下に分類される(表1)。
表1大動脈解離の分類
症状
最も頻度が多いのは前胸部・背部の激烈な痛みで、典型例では突然始まり、始まりが最も痛く、時間経過とともに痛みが移動する。頻度は少ないが、発症時に心不全、失神、脳梗塞、対麻痺のこともあり、最悪の場合、心停止、突然死も起こる。
検査・診断
緊急造影CTが確定診断かつ最も急がれる検査である。すぐにCTに行けない場合や疑わしい場合には、ベッドサイドで経胸壁心エコーにて心嚢水や胸水の貯留、大動脈にflapの形成がないかを確認する(図1)。
看護師も行える検査としては、上肢の血圧の左右差を測定する。大動脈解離により、両上肢へ分岐する動脈の一方のみが閉塞した場合には、血圧に左右差が生じる。
治療
大動脈解離を診断した場合には、ただちに降圧を行う。Ca拮抗薬や硝酸薬が用いられる。また、頻脈は解離の進行を助長するため、β遮断薬も投与される。
上行大動脈に解離が及ぶ場合(Stanford分類:A型、DeBakey分類:Ⅰ型、Ⅱ型)には、緊急手術の適応がある。手術が遅れれば生命予後は不良である。
引用参考文献
1)杉本恒明ほか.内科学.朝倉書店.第8版,2007,2350p.(ISBN 9784254322316)