透析患者の「頭痛・頭重感」は、急変のサイン?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は透析患者の 頭痛・頭重感と急変の関係について解説します。
濵井 章
杏林大学医学部付属病院 腎・透析センター 師長補佐/透析看護認定看護師
透析患者の「頭痛・頭重感」は、急変のサイン?
急変のサインかもしれません。必ずしもすべてが急変につながるわけではないものの、見逃してはいけない症状の1つです。
透析患者と頭痛
頭痛は、器質的疾患によるものと、機能性の頭痛に大きく分けられます。
透析患者が訴える頭痛の多くは、機能性の頭痛です。その原因として挙げられるのが、透析導入期に起こりやすい不均衡症候群による頭痛および頭重感です(図1)。
不均衡症候群は「血液と脳の間に生じた老廃物の濃度差」によって生じます。透析を行うと、血液中の老廃物は、急激に除去されます。しかし、脳内の老廃物は除去されにくいため、体と脳との間で濃度差が生じます。そのため、浸透圧の力がはたらき、脳が老廃物を薄めようとして水を吸収した結果、脳浮腫が生じて脳圧が高くなり、頭痛や頭重感が生じるのです。
また、体外循環・除水による血圧の変動によっても、頭痛が生じます。
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透析患者の脳出血は予後不良
透析患者は、心筋梗塞、心不全、脳卒中など心血管疾患の発症率および死亡率が高いことが知られています1)。
また、治療の特徴として、抗血栓薬の内服や、透析中に使用する抗凝固薬の影響で、出血のリスクが高くなります。
加えて、透析患者が脳出血を発症するのは1,000人(年あたり3.0~10.3)と報告されており、通常の成人に比べてきわめて高いです。大部分が高血圧を原因とする脳出血で、非透析患者より血腫が大きく、予後不良であるのが特徴です2)。この脳出血発症時の症状の1つとして、頭痛が挙げられます。
透析患者が頭痛や頭重感を訴えた場合、「いつものこと」と軽視せず、バイタルサイン、意識レベル、頭痛の部位、程度などの観察を行い、異常があれば早急に対応する必要があります。
患者の普段の血圧の推移や、頭痛の訴えの有無を知っておくことも大切です。
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引用・参考文献
1)日本透析医学会:血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン.透析会誌 2011;44(5):337‐425.
2)日本腎臓学会:医師・コメディカルのための慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル.[2018.7.2アクセス]
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社