「トイレに行きたい」という訴えは、急変のサイン?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は尿意や便意のサインについて解説します。
喜井なおみ
三豊総合病院 看護部 地域救命救急センター 主任/救急看護認定看護師
「トイレに行きたい」という訴えは、急変のサイン?
尿意や便意は、とても重要な急変サインです。特に、呼吸不全や心不全徴候がある患者や、「何か変」と感じる患者が尿意・便意を訴えたときは危険です。
排尿には、飲水量、環境、不安、緊張、年齢、性別、膀胱容量の個人差など、さまざまな要因が関係します。
尿意は、膀胱に尿がたまり、「排泄せよ」という指令が脳から出たときに感じます。
頻繁に尿意を感じるのは、飲水量が多い、膀胱炎、前立腺肥大、神経因性膀胱、膀胱・尿管結石などです。また、過活動膀胱では、不意に強烈な尿意を自覚します。
「頻繁な尿意」の危険な原因
注意が必要なのは「脳や神経が障害されて機能しなくなること」で感じる尿意です。そこには、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍など、脳や神経に関連する疾患が隠れている可能性があります。
バイタルサイン、意識レベル、麻痺の有無などABCDEに沿って観察し、総合的にアセスメントしてください。
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「夜間の尿意」の危険な原因
夜間の頻尿は、慢性心不全の可能性があります。
通常、睡眠中には脳から分泌される抗利尿ホルモンがはたらき、睡眠を妨げないように尿量が減ります。心臓ポンプ機能が低下して心不全になると、血液が心臓に戻りにくくなり、下肢に血液が滞って下肢がむくみます。その結果、臥床すると下肢にたまっていた血液が心臓に戻るため、心臓の血液量が増え、増えた血液量を減らすために利尿ホルモンが分泌されて、尿量が増えるのです(図1)。
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引用・参考文献
1)医療情報科学研究所 編:病気がみえるvol.2循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
2)医療情報科学研究所 編:病気がみえるvol.7脳・神経 第2版.メディックメディア,東京,2017.
3)岡田隆夫 編:カラーイラストで学ぶ集中講義 生理学 改訂2版.メジカルビュー社,東京,2014.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社