その日に限って「眠れない」「夜中に突然目が覚める」と訴えるのは、急変のサイン?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は眠れないと訴える患者の急変について解説します。
喜井なおみ
三豊総合病院 看護部 地域救命救急センター 主任/救急看護認定看護師
その日に限って「眠れない」「夜中に突然目が覚める」と訴えるのは、急変のサイン?
急変のサインかもしれません。
心疾患や脳疾患の可能性があります。
一過性の眠れないという訴えには、さまざまな原因があります。まず思い浮かぶのは、環境問題(騒音、暑い、寒いなど)、生活リズムの崩れ、緊張やストレス、身体的苦痛(疼痛、瘙痒感など)などでしょう。
しかし、背後に大きな疾患が隠れている可能性があるため、油断してはいけません。心疾患や脳疾患の患者が「眠れない」と訴えることもあるのです(図1)。
「眠れない」で危険な場面
心不全の徴候に「寝つけない」という訴えがあります。これは、心臓がしっかり動脈血を送り出せず、脳が酸素不足となることで生じます。
また、脳疾患の場合、脳を休めることができないため、眠れなくなります。睡眠中枢(視床下部の視索前野)が障害されると、深刻な睡眠障害が生じることもあります。
なお、甲状腺機能亢進では、甲状腺ホルモンによりエネルギー代謝が活発になり、眠れなくなることもあります。
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なぜ眠れないのか、何か他の症状は現れていないか、どのように「いつもと違う」と感じているかなど、患者からのサインを見逃さないことが大切です。
ちょっとした患者の変化に気づき、全身状態のアセスメントを行って早期に対応することで、急変に至らないようにする必要があります。
引用・参考文献
1)池上敬一,浅香えみ子:患者急変対応コースfor Nursesガイドブック.中山書店,東京,2008:28.
2)芝田里花:ナビトレ病棟で絶対に見落としてはいけない危険な症状17.メディカ出版,大阪,2012.
3)医療情報科学研究所 編:病気がみえるvol.7脳・神経 第2版.メディックメディア,東京,2017.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社