乳房外パジェット(Paget)病|悪性腫瘍④
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は乳房外パジェット(Paget)病について解説します。
清原祥夫
静岡がんセンター皮膚科
Minimum Essentials
1アポクリン汗腺、肛門腺などに由来する腺癌。
2高齢者の陰部・肛門周囲に好発する。紅斑、まれに黒褐色調の斑で始まり、徐々に拡大し、びらん、結節を生じる。時に色素脱失もみられる。
3治療は手術が第一選択である。年齢やQOLを考慮し、放射線療法、化学療法も検討する。
4初期は表皮内癌であるが、進行すると浸潤癌となる。遠隔転移した場合、予後は悪い。
乳房外パジェット病とは
定義・概念
皮膚癌のなかではまれな腺癌である。アポクリン汗腺、肛門腺などが由来と考えられている。なお乳房に生じるものは乳房パジェット病とよばれ、前者は乳癌の亜型として扱われる。
原因・病態
原因は不明である。直腸・肛門癌や子宮癌が皮膚に浸潤した場合もある。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
高齢者の陰部・肛門周囲、鼠蹊部に好発する。まれに、腋窩部、臍周辺部にも生じる。紅斑、まれに黒褐色調の斑や脱色素斑で始まり、徐々に遠心性に拡大し、びらん、結節を生じる(図1)。
湿疹や白癬(たむし)などと誤診され、あるいは羞恥心のため受診せず、長期にわたり適切な治療がなされない場合が少なくない。医療者や家族の“気づき”がもっとも重要である。
検査
陰部病変の場合、全体像がわかりにくいので、必ず剃毛のうえ明るい診察台で観察する。腫瘍の生検により確定診断する。さらに、腫瘍周囲の正常に見える皮膚を数ヵ所生検し、病変の広がりを評価する。
合併癌の検索のために、泌尿器科、婦人科、直腸・肛門外科の併診が不可欠である。併せて CT、PET、超音波検査など全身検索も行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
表皮内癌のうちに完全切除すれば完治できるので、早期発見、早期切除が第一である。リンパ節転移例には郭清術も行うが、多発リンパ節転移や遠隔転移例では放射線療法、化学療法などを併用する。
合併症とその治療
約10%の患者で、直腸・肛門癌、子宮癌などを合併する。病期に対応した治療をする。
治療経過・期間の見通しと予後
初期は、表皮内癌としてきわめて緩徐に進行するので、この時期に完全切除すれば予後は良好である。しかし、リンパ節転移後の進行は早く、拡大手術が必要となるが、予後不良である。
看護の役割
治療における看護
外陰部原発のことが多いので、診察や処置時は患者の羞恥心を増強させないように露出部を最小限にし、プライバシーを保護する。
術後は排泄物により創部が汚染されやすいので、患者の同意を得て膀胱留置カテーテルを使用する。排便により創部のガーゼが汚染されないように、ガーゼの当て方や被覆剤の使用など工夫する。また、排便後の処理は手際良く行うようにする。
フォローアップ
患者が術後の外観の変化を受容できるようになるまでには時聞がかかる。その間、看護師は患者の精神的フォローを心がける。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂