基底細胞癌|悪性腫瘍③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は基底細胞癌について解説します。
清原祥夫
静岡がんセンター皮膚科
Minimum Essentials
1基底細胞に類似した腫瘍細胞で構成される。
2高齢者の顔面に、中央が陥没した黒褐色の結節として生じる。
3治療は手術が第一選択である。
4転移はきわめてまれで、完全切除できれば予後は良好である。
基底細胞癌とは
定義・概念
皮膚癌のなかでもっとも多く、表皮の基底細胞に類似した腫瘍細胞で構成される。
原因・病態
紫外線曝露、放射線照射、外傷、熱傷などが誘因となる。また、脂腺母斑、色素性乾皮症では、基底細胞癌が好発する。わが国では高齢化により患者数が増加している。転移はまれだが、術後、時に局所再発を繰り返し、局所破壊性に進行するケースもある。
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診断へのアプローチ
臨床症状・所見
患者の約90%は高齢者で、顔面に好発する。黒褐色の光沢を呈する結節で、中心が陥没し、時に潰瘍形成する(図1)。瘢痕のように見える場合や、扁平で隆起がないケースもある。
検査
ダーモスコピー診断は有力な術前検査である。確定診断は腫瘍の生検による。皮下の病変の広がりと深さを正確に知るためには、超音波検査が有用である。画像診断としてCT、MRIを行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
完全切除すれば完治できる腫瘍なので、治療の第一選択は手術である。腫瘍の大きさと発生部位、再発リスクを考慮した切除範囲を設定し切除する。
手術以外に、凍結外科療法、電気凝固法、放射線療法などがある。
合併症とその治療
ほかの皮膚癌や新たに別の基底細胞癌を生じるリスクが高いので、定期的に皮膚を観察する。
治療経過・期間の見通しと予後
完全に切除すれば完治する。再発は腫瘍細胞の不完全切除が原因で、多くは術後3年以内に起きる。術後2~3年間は定期的に経過観察する。
看護の役割
治療における看護
顔面の手術の場合が多く、患者は術後の容貌の変化に対し不安をもつことが多いので、それを理解し、支援するよう心がける。
医師の説明した手術法、術後に予想される容貌の変化について、患者が十分に理解できたか確認する。
フォローアップ
数回にわたり手術が行われる場合もあり、医師・看護師・患者間の信頼関係を築いておくことが大切である。
経過観察のために、2~3年間は定期的に受診することを確認する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂