有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)|悪性腫瘍②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は有棘細胞癌について解説します。
清原祥夫
静岡がんセンター皮膚科
Minimum Essentials
1有棘細胞が癌化したものである。
2悪臭を伴うカリフラワー状の結節や腫瘤、難治性潰瘍を呈する。
3紫外線、ヒト乳頭腫ウイルス、ヒ素摂取、外傷による瘢痕が発癌因子である。
4治療の第一選択は手術であり、進行期には化学療法や放射線療法も併用する。
有棘細胞癌とは
定義・概念
皮膚癌の代表的疾患で、表皮や粘膜を構成する有棘細胞の癌化により生じる。
原因・病態
紫外線、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、ヒ素などの化学物質、放射線、また熱傷やケガによる陳旧性瘢痕が発癌因子として知られている。前駆症として日光角化症、ボーエン病、熱傷瘢痕、慢性放射線皮膚炎、色素性乾皮症などがある。
とくにわが国では、高齢化に伴い日光角化症の進行・悪化による有棘細胞癌が激増している。
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診断へのアプローチ
臨床症状・所見
易出血性のカリフラワー状の結節、腫瘤や難治性の潰瘍を呈し、特有の悪臭(癌臭)を伴う。周囲に日光角化症のような前駆症がしばしばみられるので、丹念に観察する(図1)。
検査
腫瘍の生検により確定診断する。ダーモスコピー所見も有用である。原発巣だけでなく、リンパ節転移や遠隔転移の全身検索としてX線、CT、MRI、超音波検査、FDG-PET検査などの画像診断が行われる。血液中の腫瘍マーカーとして抗SCC抗体測定も有用である。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
治療の第一選択は手術である。リンパ節転移例では郭清術も行う。放射線感受性が高いため、放射線療法は手術困難例や補助療法として有用である。進行期ではプラチナ製剤やフルオロウラシル(5-FU)などの化学療法が併用される。
一方、日光角化症を含めたごく早期の例では、イミキモドクリーム外用療法や液体窒素による凍結療法も適応になることがある。
合併症とその治療
手術あるいは治療に伴う合併症があるため、それぞれに対応する。
治療経過・期間の見通しと予後
術後3週間ほどで退院となることが多い。放射線療法、化学療法を行う場合はさらに治療経過が長くなる。5年生存率は、早期では良いが、III期では約60%、遠隔転移のみられるIV期では30%以下である。
看護の役割
治療における看護
医師の説明した手術法、術後に予想される外観の変化について、患者が十分に理解できたかを確認する。
化学療法、放射線療法に伴うさまざまな身体的苦痛を和らげるよう、患者のQOLをしっかり把握する。
フォローアップ
他部皮膚にも日光角化症などの前癌病変をもっていることが多く、新たな有棘細胞癌の発生が懸念されるため、早期発見に努めるように指導する。
ライフスタイルに合った紫外線対策をしっかり行うよう指導する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂