汗疹(あせも)|付属器疾患③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は汗疹(あせも)について解説します。
政次朝子
さくらこまち皮フ科クリニック皮膚科
Minimum Essentials
1大量に発汗したあと、エクリン汗腺が閉塞し、貯留した汗が汗管周囲組織に漏出して生じる。いわゆる「あせも」。
2もっとも多いのは、夏期に小児、肥満者にみられる紅色汗疹である。頸部・腋窩・肘膝関節屈側・鼠蹊(そけい)部など「むれる」部位に好発し、かゆみを伴う。搔破により湿疹になり、時に細菌感染を合併し膿疱化する。
汗疹(あせも)とは
定義・概念
汗管が閉塞し、貯留した汗が汗管周囲組織に漏出して生じる病変。
成因・病態
汗管が閉塞する機序は明らかではないが、大量の発汗後に発症する。
夏期、高温多湿の環境でみられる。汗管の閉塞する部位によって水晶様汗疹、紅色汗疹、深在性汗疹の3つに分けられる(図1)。
もっともよくみられるあせもは紅色汗疹と水晶様汗疹である。深在性汗疹は熱帯地方にみられ、日本ではまれである。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
紅色汗疹では紅色の小丘疹が多発する。かゆみを伴い、しばしば搔破により湿疹化する。
小児や肥満者の頸部、腋窩、肘膝関節屈側、鼠蹊部などの「むれる」部位に生じやすい。
時に細菌感染を併発し、膿疱が生じる。感染が拡大すると、痛みを伴う膿瘍(あせものより)が出現することがある。また、伝染性膿痂疹(とびひ)を併発することもある。
水晶様汗疹では紅斑を伴わない1~3mmの小水疱が多発し、かゆみや痛みはない。1~2日で細かい鱗屑となり軽快する。
汗をかきやすい幼児、発汗しても管理がうまくできない長期臥床の高齢者にみられる。
検査
腋窩、鼠蹊部では、カンジダ症と鑑別するため鏡検により真菌を検索する。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療
スキンケアが大切である。汗をよく拭き、涼しい環境に身を置く。発汗後はシャワーや清拭で体を清潔に保つ。入浴する場合は、汗を石鹸で洗い流す。
夏季には吸湿性の高い木綿や、速乾機能のある素材を使った衣類を着る。そのうえで、紅色汗疹ではステロイド外用剤を塗布する。水晶様汗疹では薬剤治療は必要ない。
合併症とその治療法
搔破による湿疹が重篤な場合は、ステロイド薬内服を考慮する。また、膿疱や膿瘍が出現した場合、抗菌薬の外用さらには内服を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
予後は良く、治療に良く反応する。
看護の役割
治療における看護
繰り返しやすいため、以下の日常生活指導を行う。
・エアコンを活用し、涼しい環境をつくる。
・こまめな清拭、シャワーなどで皮膚の清潔を図る。
・通気性の良い服を着用する。
・アトピー性皮膚炎患者では容易に湿疹化しやすく、また細菌感染を伴いやすいため多汗を避ける。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂