皮膚試験|皮膚科の検査④
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚試験について解説します。
横山知明
静岡市立清水病院皮膚科
Minimum Essentials
1即時型(Ⅰ型)アレルギーの原因を特定するための検査である。
2オープンテスト、プリックテスト、prick to prickテスト、スクラッチテスト、皮内テストがある。
3刺入される抗原量が多くなるに伴い、アナフィラキシーを誘発するリスクがある。
4アナフィラキシーのリスクに備え、アドレナリン製剤や点滴の準備をしておく。
皮膚試験とは
皮膚試験とは、アナフィラキシーや口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)など即時型(Ⅰ型)アレルギーが疑われる場合の原因特定のための検査である。
オープンテスト、プリックテスト、スクラッチテスト、prick to prick テスト、皮内テストがあり、順に吸収される抗原量が増えるため、アナフィラキシーのリスクも高まる。
アナフィラキシーを誘発してしまったときに対処できるよう、アドレナリン製剤や点滴の準備をしておくことが重要である。リスクの高い症例では、事前に血管ルートを確保しておくと良い。
皮膚試験では抗原と生体内の肥満細胞表面の抗原特異的IgEが結合することでヒスタミンなどのケミカルメディエーターが放出され、膨疹形成などの生体反応を生じる。
偽陰性を避けるために抗ヒスタミン薬はテストの3日前から中止しなければならない。非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)はヒスタミンを遊離させやすくすることがあり、偽陽性の原因になるのでやはりテスト前に中止する必要がある。
オープンテスト
アナフィラキシーが誘発された患者や、乳幼児などリスクの高い症例に対してはオープンテストから始めるのが安全である。皮疹のない前腕屈側に抗原物質を塗布して反応を見る。
プリックテスト
プリックテストは刺入する抗原量が少ないので比較的安全に実施できる。検査用のプリックランセットが市販されており、手技も簡便で施行者間の差が出にくい(図1)。
検査は前腕屈側で行う。
抗原液を皮膚に滴下し、プリックランセットで刺して皮膚に抗原を取り込ませる。素早くティッシュなどで抗原液を拭き取り、15分後に判定を行う。陰性コントロールとして生理食塩水、陽性コントロールとして1%二塩酸ヒスタミン水溶液を用いる。
一度に多数の抗原を検査できるが、各抗原の間は3cm以上の間隔を空け、肘から3cm、手首から5cm離す必要がある。
プリックランセットは原則としては各抗原ごとに交換することが望ましいが、実際には1人の患者に対して1つのプリックランセットを使用し、各抗原ごとにアルコール綿などで拭き取って抗原のキャリーオーバーを避けるようにしている。
判定はヒスタミンの陽性コントロールとの比較で行う。膨疹の最長径と、その中点に垂直な径の平均値を測定し、陽性コントロールの1/2以上を陽性とする。紅斑は判定対象ではないが参考のために計測しておく。
prick to prickテスト
OASなどの症例で果物や野菜などの新鮮材料の検査を行う場合は、prick to prickテストを行う。プリックランセットを果物などに直接刺し、次いで皮膚を刺す。判定はプリックテストと同様に行う。
スクラッチテスト
プリックテストで陽性反応が得られなかった場合はスクラッチテストを行う。プリックランセットもしくは23G針で5mmほど線状に皮膚を傷つけ、その上に抗原液を載せティッシュで拭き取る。判定はプリックテストと同様に行う。
皮内テスト
臨床経過や問診から即時型アレルギーが強く疑われるにもかかわらずこれまでの検査で陽性反応が得られない場合は、皮内テストを行う。
抗原液を0.02mL患者の前腕屈側に皮内注射する。同量の生理食塩水をコントロールとして用いる。注射後15~30分後に膨疹と紅斑を測定し、判定する。
皮内テストは体内に入る抗原量がもっとも多くなるため、アナフィラキシー発症のリスクも高い。実施時には血管ルートの確保が必須であり、入院管理下で行うことが望ましい。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂