パッチテスト、光テスト、光パッチテスト|皮膚科の検査③

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はパッチテスト、光テスト、光パッチテストについて解説します。

 

横山知明
静岡市立清水病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1パッチテストは、接触皮膚炎や金属アレルギーなどの遅延型(Ⅳ型)アレルギー疾患の原因物質特定のための検査である。

2光接触皮膚炎の検査では、パッチテストに光線照射を加える光パッチテストが行われる。

3光線過敏症の診断のために光テストを行い、最少紅斑量を測定する。

 

パッチテスト、光パッチテストとは

接触皮膚炎は、刺激性とアレルギー性に分類される。光線の関与したタイプを加えると、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、光接触皮膚炎(光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎)、全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群に分類される。

 

パッチテストはこれら接触皮膚炎や金属アレルギーなどの原因となっている物質を特定するために行われる検査である。皮膚に被疑物質を貼付し、それに対する反応を観察する。接触皮膚炎の治療目標達成には原因物質との接触を断つことが不可欠であり、パッチテストの重要性は高い。光線が関与している光接触皮膚炎については光パッチテストが行われる。

 

 

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パッチテストの実際

パッチテストに用いる器材

パッチテストユニットは、被疑物質を載せるアルミニウムや布のチャンバーと絆創膏からなる。Finn Chambers®や、鳥居薬品のパッチテスター「トリイ」®が頻用されている。Finn Chambers®はチャンバー部分のアルミニウムが水銀と反応してしまうため、水銀製剤の検査には適さない。パッチテスター「トリイ」®は水溶液アレルゲンをそのまま滴下することができる利点がある。

 

皮膚炎を起こしやすい抗原として、スタンダードアレルゲンが規定されている。日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会では、25種類の抗原をジャパニーズスタンダードアレルゲンとして選定している。最近、ジャパニーズスタンダードアレルゲンに対応する21種の抗原を事前にユニットに配置したパッチテストパネル®が発売され、より簡便にパッチテストを実施することが可能になった。

 

パッチテストユニットの貼付

パッチテストの手技について具体的に説明する。

検査対象となる物質をパッチテストユニットに載せ、上背部や上腕外側などに貼付する(図1図2)。軟膏や固形物は20mg、水溶液の場合は15μL滴下する。

 

パッチテスター「トリイ」®は水溶液をそのまま滴下できるが、Finn Chambers®の場合はワセリンを糊にして付属の濾紙をチャンバーに固定し、その上に滴下する。

 

光パッチテストの場合は、同じ抗原を載せたユニットを2列用意し貼付する。貼付48時間後にユニットを剝がし、一方のみにUVAを照射する。

 

図1 パッチテスト(a)、光テスト(b)、光パッチテスト(c)

パッチテスト

光テスト

光パッチテスト

 

図2 パッチテスターを用いたパッチテスト

パッチテスターを用いたパッチテスト

 

判定

48時間後にパッチテストユニットを剝がし、のちの判定のために抗原が貼付されていた部位を油性マジックなどでマーキングする。絆創膏の影響がなくなる1時間半~2時間後に判定を行う。判定までの間にパッチテスト貼付部位に圧力をかけないよう患者に指示する。

 

判定基準としてICDRG(International Contact Dermatitis Research Group)基準が用いられている(表1)。+以上を陽性と判定する。

 

表1 ICDRG基準

ICDRG基準

+以上を陽性と判定する。

 

光パッチテストの場合は、光線を照射した列のみが陽性の場合に光パッチテスト陽性と判定する。パッチテストの判定は複数回行うことが推奨されており、具体的には48時間後、72時間後または96時間後、そして1週間後に判定を行う。これは金属抗原では遅れて陽性反応がみられることがあるためと、刺激反応は時間とともに反応が減弱するためである。事前に患者と検査スケジュールを共有しておくことが重要である。

 

日常生活のなかでマーキングが徐々に薄れてくるので、油性マジックでマーキングをなぞり書きすることを患者に指導しておく。独居などの理由でこれができない場合は、ユニット貼付部の四隅をテープで「」型にマーキングすると良い。

 

 

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パッチテストの注意点

パッチテストを行う際の注意点として、第一に抗原の貼付部位の選定がある。

貼付部位に皮膚炎症状があると判定に影響するので、皮膚炎がない場所を選んで貼付しなければならない。

 

貼付後はシャワーを含めた入浴や、発汗を伴う労働・スポーツなどは控えるように指導する。暑い時期にパッチテストを実施することは好ましくない。妊婦に対するパッチテストは禁忌である。検査部位へのステロイド薬外用、また、抗ヒスタミン薬内服は偽陰性の原因となりうる。

 

抗原によっては強い反応を惹起し、のちに色素沈着や色素脱失を残すことがある。患者に事前にリスクを説明しておく必要がある。

 

 

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光テストとは

光テストとは、光線過敏症や光線曝露によって悪化する種々の疾患の診断・重症度判定のための検査である。

 

光線過敏症には色素性乾皮症、ポルフィリン症、種痘様水疱症、日光蕁麻疹、多形日光疹、慢性光線過敏性皮膚炎、光線過敏症型薬疹、光接触皮膚炎などがあげられる。いずれも顔面など露光部に皮疹が出現し、春から夏に悪化、秋から冬にかけて軽快するという特徴がある。

 

光線曝露で悪化する疾患としては、全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎などの膠原病が代表的である。

 

光テストの実施にはUVAおよびUVBの照射が可能な紫外線照射装置が必要である。背部に段階的に時間を変えて紫外線を照射し、24時間後に判定する(図1)。

この際、電動式で照射時間を調整できるメドオート2®などの機器や、透過率の異なるフィルターが測定孔に組み込まれたUVスキンテクターなどの機器を利用するのが簡便である(図3)。

 

図3 UVスキンテクター

UVスキンテクター

 

UVB照射後に紅斑を示す最少の照射量を最少紅斑量(minimal erythema dose:MED)とする。

 

日本人ではMEDは60~100mJ/cm2であり、MEDが低下している場合に光線過敏症が疑われる。

 

光線過敏症型薬疹ではUVAに反応して生じることが多い。日本人ではUVA照射後の最少反応量(minimal response dose:MRD)は約10~15J/cm2であり、それ以下の照射量で反応がみられた場合は光線過敏を疑う。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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