閉塞性動脈硬化症(ASO)

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は閉塞性動脈硬化症(ASO)について解説します。

 

大久保愛
新東京病院看護部
恩田香織
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

閉塞性動脈硬化症(ASO)はどんな疾患?

閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)は慢性動脈閉塞症の1つで、動脈硬化や炎症によって四肢の動脈が狭窄・閉塞する疾患です。

 

50歳以上の男性に多くみられます。高血圧糖尿病喫煙歴などが誘因となります。

 

 

患者さんはどんな状態?

代表的な症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)四肢冷感しびれなどです。

 

Fontaine(フォンタン)分類は、下肢の慢性動脈閉塞症※1を症状から病期分類したものです(表1)。

 

表1Fontaine分類

Fontaine分類

 

 

どんな検査をして診断する?

血管造影、MRA、MDCTで確定診断を行います(表2)。

 

表2閉塞性動脈硬化症に特徴的な検査所見

閉塞性動脈硬化症に特徴的な検査所見

 

 

どんな治療を行う?

治療は、運動療法、薬物療法(抗血小板薬、血管拡張薬)、血行再建術(経皮的血管形成術[PTA]、バイパス術、血栓内膜摘除術)が中心となります。

 

壊死例では、患肢の切断術を行います。

 

 

看護師は何に注意する?

下肢の状態の観察

小さな足の傷やトラブル、白癬(はくせん)が原因となって感染を起こし、下肢の状態が速に悪化してしまうことがあるため、フットケアがとても重要です。

 

病状悪化につながる傷や皮膚変化がないか、普段行うケアのときから注意深く観察を行うことが大切です(表3)。

 

表3下肢の観察ポイント

下肢の観察ポイント

 

これらの観察は、看護師だけでなく、セルフケアが可能な患者さんに対して、セルフケアの1つとして在宅で観察を続けるように指導する必要があります。

 

切りや巻き爪のセルフケアは重要ですが、患者さん自身が爪切りをした結果、深爪や創傷をつくってしまい、そこから感染を起こしてしまう危険もあります。そのため、患者さん自身で爪切りが難しそうな場合は、通院の際、医師の指示のもとで看護師が爪切りを行います。

 

足浴

閉塞性動脈硬化症の患者さんの足浴は、温熱効果によって代謝亢進し、虚血を助長することもあるため、低温(重症下肢虚血[CLI]※2では体温よりも低い温度)で実施することが望ましいとされています。高濃度炭酸泉浴であれば35~37℃でも温かいと感じ、血管新生が促進されます。

 

感染徴候や深い潰瘍が生じている場合は、足浴することによって逆に感染を広げる危険があります。そのような状態の場合は、足浴の実施に関して医師へ確認してから行うようにしましょう。

 

 

退院支援のポイント

入院中の時点で、退院後の患者さんの生活を見すえ、患者さんのADLについてアセスメントしておくことが大切です。患者さんが以前の生活場所(自宅や入所施設)で生活を送っていけるよう、患者さんに適した方法、必要な社会支援を抽出し看護介入していくのは、看護師の大きな役割です。

 

表4のような情報を収集し、アセスメントに組み込むことで、退院後に必要な社会支援が抽出でき、患者さんのQOL維持に向けた看護介入が行えます。また、必要な社会支援提供のために、ソーシャルワーカーやケアマネジャーとの早期連携が可能になります。

 

表4閉塞性動脈硬化症の退院支援に関する情報収集のポイント

閉塞性動脈硬化症の退院支援に関する情報収集のポイント

 

閉塞性動脈硬化症の患者さんにとって、自己でフットケアを行う、感染を起こさないために気をつける、などのセルフケアはとても重要です。なぜなら、それらを行うことは、閉塞性動脈硬化症を悪化させず、疾患のコントロールにつながるからです。疾患のコントロールが行えることは、病状の悪化や痛みの増悪も防げ、患者さんのQOL維持につながります

 

 

閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過

閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護を経過ごとにみていきましょう(表5-1表5-2表5-3)。
看護の経過の一覧表はこちら

 

表5-1閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 発症から入院・診断

閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 発症から入院・診断

 

 

 

表5-2閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 入院直後・急性期

閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 入院直後・急性期

 

 

表5-3閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

★1 爪切り

 

 

表5閉塞性動脈硬化症(ASO)の看護の経過 一覧

横にスクロールしてご覧ください。

★1 爪切り

 

 


[memo]

  • ※1 閉塞性血栓血管炎(TAO)(上へ戻る
    バージャー病ともよばれ、慢性動脈閉塞症の1つです。ASOと症状が似ているが、特別な基礎疾患はありません。ASOが50歳以上の男性に好発するのに対し、TAOは20~40歳代の比較的若年男性に好発します。
  • ※2 重症下肢虚血(CLI)(上へ戻る
    慢性動脈閉塞による下肢の重症虚血。安静時疼痛または潰瘍・壊死を伴い、血行再建なしでは下肢の組織の維持や疼痛の解除が行えない。

 


文献

  • 1)アステラス製薬株式会社ホームページ:動脈硬化のメカニズム.(2019.09.20アクセス)
  • 2)セルフドクターネット:生活習慣病とは?.(2019.09.01アクセス)
  • 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
  • 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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