急性動脈閉塞症
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急性動脈閉塞症について解説します。
〈目次〉
急性動脈閉塞症はどんな疾患?
急性動脈閉塞症は、動脈が急に詰まってしまう疾患です。
動脈が急に詰まる誘因には、不整脈(心房細動[AF])、心臓粘液腫(心臓の原発性良性腫瘍)、血液凝固能の亢進、動脈硬化などがあります。
詰まってしまうおもな原因は、塞栓症(そくせんしょう)、血栓症、外傷などです(表1)。
患者さんはどんな状態?
突然、手足に激痛、末梢冷感、しびれが出現します。5つのPが代表的です(図1)。
首や脳へいく血管が詰まると脳梗塞になり、意識障害や手足の麻痺が起こることもあります。
どんな検査をして診断する?
閉塞の位置を確認し、側副血行路を同定し、治療方針を決定するために、早めに血管造影検査を行う必要があります(表2)。
どんな治療を行う?
診断がついたらただちに抗凝固療法を開始し二次血栓の進行を抑えます(表3)。
塞栓症では外科的血栓除去療法を行います※1。
血栓症では外科的血栓除去術あるいは危機的状況でない早期であれば、血栓溶解療法が適応となります。
不十分な場合には、追加でバイパス術を行います。どちらを行うかは虚血の重症度、血栓の範囲または部位、患者さんの状態によって決定されます。
★1 血栓塞栓除去術
看護師は何に注意する?
発症後からの治療が予後を左右するため、5つのPの症状の有無など細かな観察が必要です。
急性動脈閉塞症の看護の経過
急性動脈閉塞症の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1、表4-2、表4-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表4-2急性動脈閉塞症の看護の経過 入院直後・急性期
表4-3急性動脈閉塞症の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて
★1 循環器疾患の患者指導
★1 循環器疾患の患者指導
[memo]
- ※1 急性動脈閉塞症の予後(上へ戻る↑)
発症から手術までの時間が、肢の予後を左右するともいわれている。発症6時間以内に血流再開が得られれば、高率に救肢が可能だが、24時間を経過すると、約20%が切断に至るとされている。
文献
- 1)アステラス製薬株式会社ホームページ:動脈硬化のメカニズム.(2019.09.20アクセス)
- 2)セルフドクターネット:生活習慣病とは?.(2019.09.01アクセス)
- 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
- 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社