解離性大動脈瘤(DAA)

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は解離性大動脈瘤(DAA)について解説します。

 

大久保愛
新東京病院看護部
恩田香織
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

大動脈解離はどんな疾患?

動脈瘤のように血管壁が弱くなり膨らむのではなく、裂けてしまうと大動脈解離(だいどうみゃくかいり)となります。血管壁の内膜が傷ついてそこから中膜に流れた血液は、中膜が裂けてできた偽腔(ぎくう)と呼ばれる中を通ります。

 

裂けたときに激痛が走り、上行大動脈で解離が起こると、裂けた血液が心臓の心囊(しんのう)にたまり、心臓が圧迫されて拡張できなくなり、心タンポナーデを発症します。

 

50~70歳代に多くみられ、本態性高血圧が誘因となることが多いです。

 

 

大動脈解離はどのように分類する?

大動脈解離の分類には、Stanford(スタンフォード)分類DeBakey(ドベーキー)分類の2種類があります(表1)。

 

解離の場所が弓部に及べば、総頸動脈に血液がいかなくなり、頭部への血液が途絶えてしまいます。そのため、緊急手術が必要であり、上行大動脈にある大動脈解離はStanford A型と呼ばれます。

 

それ以外はStanford B型と呼ばれ、緊急性は低くなります。ほかの臓器に向かう部分で解離が起これば血液の流れが途絶えるため、解離した血管壁は非常に弱くなり、出血する危険性が高く、手術が必要となることもあります。

 

表1Stanford分類とDeBakey分類

Stanford分類とDeBakey分類

 

 

患者さんはどんな状態?

突然現れる激しい痛みが特徴的です。

 

解離部位により、痛みの部位も異なります。上行~弓部部では胸背部痛咽頭痛、下行部では腰痛腹痛もみられます(図1)。

 

図1解離性大動脈瘤の閉塞(狭窄)部位別の症状

 

★1 虚血性心疾患

 

 

どんな検査をして診断する?

解離性大動脈瘤(dissecting aortic aneurysm;DAA)を疑った場合、まずCT検査を行います(表2)。それにより、大動脈の裂け目が確認でき、偽腔(ぎくう)の大きさを測定することができます。

 

そのほかに併発症状の確認として、胸腹部のX線検査心電図、心エコーなどを行います。

 

表2解離性大動脈瘤に特徴的な検査所見

解離性大動脈瘤に特徴的な検査所見

 

 

どんな治療を行う?

Stanford A型の場合は、命にかかわるため、緊急手術(人工血管置換術、ステントグラフト内挿術)となります。術後は厳密な循環管理が必要になります。

 

Stanford B型の場合は、血圧コントロール疼痛緩和が必要になります。緊急手術が適応でなく保存療法(薬物療法[降圧、疼痛]、安静療法)となった場合でも、病状の進行によっては手術が必要になることがあります。

 

Stanford B型の慢性期では、薬剤コントロールがついても6~12か月ごとに定期受診、CTのフォローアップ、解離の進行の有無を確認します。

 

 

看護師は何に注意する?:保存療法の看護

Stanford B型の場合は、保存療法が選択されます。ただし、Stanford B型でも病状が進行し、腹腔動脈や両側腎動脈、上腸間膜動脈に解離が及んだ場合は、手術の適応となります。そのため、看護師は大動脈解離で保存療法が選択された場合でも、異常(血圧変動、疼痛の部位・程度・継続の時間)の早期発見に努めなければいけません。

 

Stanford B型の患者さんは、大動脈解離が起こったことでの疼痛緩和血圧コントロールが重要になります(表3表4)。疼痛があると血圧が上昇するため、血圧の変化には注意する必要があります。

 

表3疼痛緩和のための看護のポイント

疼痛緩和のための看護のポイント

 

表4血圧コントロールのための看護のポイント

血圧コントロールのための看護のポイント

 

血圧の目標値は患者さんの状態によって異なることがあるので、医師の指示に従うようにしましょう

 

 

看護師は何に注意する?:術後の看護

Stanford A型の場合は、緊急手術が必要になります。緊急手術後の看護では、異常の早期発見が最も大切になります。術後の異常の早期発見のための観察項目を確認しておきましょう(表5表6)。

 

表5術後の異常の早期発見のための観察項目

術後の異常の早期発見のための観察項目

★1 ドレーンの管理

 

 

表6解離性大動脈瘤の看護のポイント

解離性大動脈瘤の看護のポイント

 

 

解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過

解離性大動脈瘤(DAA)の看護を経過ごとにみていきましょう(表7-1表7-2表7-3)。
看護の経過の一覧表はこちら

 

表7-1解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 発症から入院・診断

解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 発症から入院・診断

 

 

表7-2解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 入院直後・急性期

解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 入院直後・急性期

 

 

表7-3解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

★1 循環器疾患の術後の患者指導

 

 

表7解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 一覧

横にスクロールしてご覧ください。

解離性大動脈瘤(DAA)の看護の経過 一覧

 

★1 循環器疾患の術後の患者指導

 


文献

  • 1)アステラス製薬株式会社ホームページ:動脈硬化のメカニズム.(2019.09.20アクセス)
  • 2)セルフドクターネット:生活習慣病とは?.(2019.09.01アクセス)
  • 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート 改訂増強版.日総研出版,愛知,2017.
  • 4)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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