心不全急性期(急性心不全・慢性急性増悪)の看護

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心不全急性期(急性心不全・慢性急性増悪)の看護について解説します。

 

中嶋ひとみ
集中ケア認定看護師
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

心不全急性期の患者さんはどんな状態?

急性期の患者さんは、呼吸困難、胸部不快などをはじめとする症状、病状や死への不安、動作制限による苦痛など、さまざまなストレスにさらされています。そのような状態に配慮して患者さんへ介入しなければなりません。

 

あらかじめ既往歴現病歴の経過、家族背景、環境、今回入院した理由などを情報収集して、今どのような状態なのか予測を立てて、身体所見の観察、問診を行うことで、患者さんの心身の負担軽減を図ります。

 

 

身体所見の観察

情報収集後、ベッドサイドへ行き、身体所見の観察を行います(表1)。

 

患者さんに声をかけ、受け答えの様子、特に呼吸状態、疲労状態も合わせて観察します。

 

鎮静薬投与中の場合は鎮静レベル、意識レベルの変化に注意します。

 

表1身体所見の観察のポイント

心不全急性期の身体所見の観察のポイント

 

 

 

 

安全・安楽のための看護

患者さんが安全に治療を受け、少しでも安楽に日常生活を送れるように介入します(表2)。

 

表2心不全急性期の看護のポイント

心不全急性期の看護のポイント

 

★1 血液ガス分析
※1 バルサルバ効果
※2 等尺性負荷
※3 せん妄

 

 

心不全急性期の看護の経過

心不全急性期の看護を経過ごとにみていきましょう(表3-1表3-2)。
心不全の看護の経過の一覧表はこちら

 

表3-1心不全急性期の看護の経過 発症から入院・診断

心不全急性期の看護の経過 発症から入院・診断

 

 

 

 

 

表3-2心不全急性期の看護の経過 入院直後・急性期

心不全急性期の看護の経過 入院直後・急性期

 

表3心不全の看護の経過 一覧

 

横にスクロールしてご覧ください。

 

心不全の看護の経過 一覧

 


[memo]

  • ※2 等尺性負荷(上へ戻る
    重い物を持ち上げるときに力がかかり、筋肉の収縮を持続する負荷。筋肉が収縮して太くなった状態で血管を圧迫し心負荷(後負荷)となる。排便や歯みがき動作でも起こる。
  • ※3 せん妄(上へ戻る
    急性の機能不全。意識混濁、意識変容、認知の変化を呈する症候群。1日のなかで変動することが多い。注意力の障害を中心とする。不穏=せん妄ではないことに注意しよう。

 


文献

  • 1)Yancy CW, Jessup M, Bozkurt B, et al. 2013 ACCF/AHA guideline for the management of heart failure:a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on practice guidelines. Circulation 2013;128:e240-e327.
  • 2)Ponikowski P, Voors AA, Anker SD, et al. Authors/Task Force Mem-bers. 2016 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure:The Task Force for the diagnosis and treat-ment of acute and chronic heart failure of the European Society of Cardiology( ESC). Developed with the special contribution of the Heart Failure Association(HFA) of the ESC. Eur J Heart Fail 2016;18:891-975.
  • 3)日本循環器学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
  • 4)日本循環器学会:心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版).(2019.09.01アクセス)
  • 5)日本循環器学会:循環器疾患における末期医療に関する提言(2010年).(2019.09.01アクセス)
  • 6)2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure:Executive Summary.(2019.09.01アクセス)
  • 7)加藤真帆人:心不全とはなんだろう?~慢性心不全という新しい概念とその管理~.日大医誌 2015;74(4):153-160.(2019.09.01アクセス)
  • 8)市田聡:ハート先生の心不全講座 改訂第三版.医学同人社,東京,2018.
  • 9)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,大阪,2015.10. 葛谷恒彦,堀正二:主な循環器疾患の診断・管理治療. 標準循環器病学 第4版,小川聡,井上博編,医学書院,東京,2007.
  • 10)葛谷恒彦,堀正二:主な循環器疾患の診断・管理治療. 標準循環器病学 第4版,小川聡,井上博編,医学書院,東京,2007.
  • 11)長谷部直幸,菊池健次郎:本態性高血圧症.小川聡,井上博編,標準循環器病学 第4版.医学書院,東京,2007:335-341.
  • 12)岡田隆夫:循環系の調節.小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:630-631.
  • 13)厚生労働省:第4回心血管疾患に係るワーキンググループ 資料2 心血管疾患の医療提供体制のイメージ.(2019.09.01アクセス)
  • 14)小田切菜穂子:慢性心不全患者の特徴と療養上の課題.循環器ナーシング 2014;4(10):6-15.
  • 15)宮下光令,柴信行,下川宏明:循環期看護の最前線を知る 第9回 末期心不全の緩和ケアを考える.HEART 2012;2(5):501-511.
  • 16)日本集中治療医学会看護テキスト作成ワーキンググループ編:集中治療看護師のための臨床実践テキスト 疾患・病態編.真興交易医書出版部,東京,2018.
  • 17)JSEPTIC看護部会監修,卯野木健,森安恵実編:ICUナースポケットブック 第3版.学研メディカル秀潤社,東京,2016:29.

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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