血液検査1(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)|産婦人科の検査
『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- 血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)とはどんな検査か
- 血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)の目的
- 血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)の実際
- 血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)前後の看護の手順
- 血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)において注意すべきこと
血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)とはどんな検査か
- 脳下垂体からは、ゴナドトロピン〔LH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)〕が分泌され、卵巣ホルモンを調整することで受精・妊娠に関与している。
- 卵巣ホルモンは卵巣から分泌されるホルモンで、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(主にプロゲステロン)がある。
- エストロゲンは卵巣と胎盤で産生され、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)エストロール(E4)に大別され、生物学的活性が最も高いのがE2である。非妊娠時の卵巣機能の指標としては血中E2が、妊娠時の胎児胎盤系の機能の指標としては尿中E3が測定される。
- プロゲステロン(P4)は黄体機能を反映し、主に排卵後の黄体で合成され、妊娠が成立しないと黄体は自然に退縮する。一方、妊娠が成立するとP4は上昇し、妊娠10週頃がピークで、その後は胎盤がP4分泌の主体となる。
- P4は受精卵の着床と初期の妊娠維持に重要である。
血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)の目的
- 無月経の原因推定。性機能の低下による無月経ではE2が低値となるが、ゴナドトロピンが低値なら中枢に、高値なら卵巣に障害がある。
- 不妊の原因の推定。黄体中期のP4が低値であれば黄体機能不全を疑う。
- 女児における性成熟異常(思春期遅発症や思春期早発症)の診断。
血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)の実際
- 採血を行い、血清(もしくは血漿)を用いてE2とP4を、尿を採取して尿中E3を測定する。
血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)前後の看護の手順
- 不妊の時はP4を測定するが、同時に基礎体温を測定して2相性となっているかを確認する。
血液検査(脳下垂体、卵巣ホルモン基礎測定)において注意すべきこと
- 生理的変動を考慮し、ライフステージや月経周期、妊娠週数に応じた評価を行う。
- 1回の測定値で評価するのではなく複数回の測定を行うとともにゴナドトロピン(LHとFSH)と総合的に判定する。
- E2は肝臓で代謝されるため、肝疾患で血中濃度は高値となる。
- 尿中E3は個人差が大きいので、経日的に変動を検査する。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版