術直後のストーマの観察ポイントは?|消化管ストーマの術後ケア

ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、術直後のストーマの観察ポイントについて解説します。

 

術直後のストーマの観察ポイントは?

 

基本的なストーマの観察ポイントとして,サイズ,形状,色調,浮腫の有無・程度,出血の有無・程度,排泄孔の位置や向きなどがあります.
基本的な観察ポイントをおさえるとともに,手術前・中・後を通しての全身状態がストーマに与える影響も意識して観察を行います.

 

〈目次〉

解説

手術直後は術前の腸管の状態(強い炎症など)によりストーマの浮腫が強くみられる場合があります.また術後の全身状態によっても,ストーマの色調や浮腫・出血などの影響を受けます.これらを適宜確認できるよう術直後に装着するストーマ装具は袋部分が透明のものを選択し,装具を装着した状態でいつでも観察可能な状態にしておきます.

 

注意が必要な観察ポイント

術直後でとくに注意が必要な状態として,ストーマの血流障害による色調不良〔強い充血や紫色(図1)〕,浮腫(図2),出血(図3)などがあげられます.

 

図1強い充血

強い充血

 

図2浮腫

浮腫

 

図3ストーマからの出血

ストーマからの出血

 

① ストーマの血流障害

ストーマの血流障害の大半は時間の経過とともに改善しますが,なかにはストーマ粘膜の壊死を起こすことがあります.まれに完全壊死となり,再手術を必要とする場合があります.血流障害による色調不良が認められる場合は範囲・粘膜の乾燥の有無などを観察し,医師に報告します.さらにはストーマ孔から肛門鏡や透明のスピッツを入れて,内部の腸管の色調がどのような状態かを観察する場合もあります(図4).

 

図4血流障害

血流障害

 

ストーマ孔からスピッツを入れて内部を観察する.

 

② ストーマの浮腫

ストーマの浮腫は,術直後にはある程度みられるものですが,術前の腸管の炎症や低栄養状態,全身の循環不全,腸管の血流障害などにより強くみられることがあります.

 

③ ストーマからの出血

消化管穿孔などの緊急手術後のDIC(播種性血管内凝固症候群)や肝疾患がある場合に,ストーマ粘膜やストーマ粘膜皮膚接合部からの出血が続く場合があります.止血処置が必要になる場合もありますので,出血が持続しているかどうかはとくに慎重に観察します.

 

注意が必要な患者へのケア

ストーマの色調が悪く血流障害が懸念される,浮腫が強い,出血のリスクがある,このような患者のストーマケアは通常以上に愛護的なケアが必要です.

 

ストーマ装具のホールカットはストーマ粘膜を損傷しないように大きめとし,露出皮膚は粉状皮膚保護剤や用手形成皮膚保護剤などで保護しましょう.少しでも安全なケアにつなげるために術直後のストーマの観察は非常に大切です.

 

コラム安否確認ができなかったAさん

直腸がんのため,ストーマ造設術を受けたAさんは独り暮らしで兄弟とは疎遠でした.転移があり神経内科でのフォローも受けていて,言葉数は少ないものの真面目で外来予約時間に遅れることのなかった方です.

 

ところがある日,ストーマ外来予約日にAさんが来院されませんでした.その日はストーマ外来の前にCT検査も予定されていたので,放射線室にも確認しましたがやはりみえていないとのこと.時々,外来予約日を勘違いされる患者さんはいますが,なぜかこの日は妙に胸が騒ぎました.ご自宅に電話しましたが誰も出ません.携帯電話も同じでした.

 

外来主治医に相談し「部屋の中で倒れているかもしれない」と,遠方の兄弟に連絡し,「確認を取ってもらいたい」旨を伝えました.医療安全管理部にも安否確認をする手だてを相談し,警察に電話相談したり,ソーシャルワーカーに相談したり,バタバタと動きましたが,実際に安否を確認する手だてはありませんでした.

 

そうこうしているうちに,自宅近くの駐車場で倒れていたAさんが通りがかりの方に発見されて,救急車で搬送されてきたのです.脳転移巣の影響による意識消失を起こしたようです.妙に胸が騒いだのは虫の知らせだったのかもしれません.Aさんが家の中でなく,駐車場で倒れてくれたおかげで通行人の方に発見されたことは不幸中の幸いでした.

 

近年,独り暮らしで家族との関係性が密でない患者さんがたくさんいます.孤独死をされて,あとから連絡が入る患者さんもいます.

 

今回も何人もの病院職員が安否確認の手立てを考えましたがその手立ては見つかりませんでした.私たち医療者に何ができるのか,今もその答えはありませんが,Aさんが大きな問題を投げかけてくれたような気がしています.

 


[引用・参考文献]

 

  • 1)宮本和俊.“消化管ストーマの手術と合併症”.小児創傷オストミー失禁管理の実際.溝上祐子ほか編.照林社,2010,23─32.
  • 2)津畑亜紀子.トラブルが起こった時のための指導.消化器外科ナーシング.14(2),2009,178─85.
  • 3)山田陽子.“周術期ケア”.ストーマリハビリテーション 実践と理論.ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編.金原出版,2006,166─72.
  • 4)中越亨.“消化管ストーマの種類”.前掲書 3),42─5.
  • 5)日本ストーマリハビリテーション学会編.ストーマリハビリテーション学用語集.第2 版.金原出版,2003.

 


[Profile]
保刈 伸代 ほかり・のぶよ
東邦大学医療センター大森病院看護部/皮膚・排泄ケア認定看護師

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。

 

[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行

 

ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!

 

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