術前に患者にストーマ装具を見せておくほうがいいの?
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、ストーマの術前ケアについて解説します。
術前にストーマ装具を見せておくほうがいいの?
術前オリエンテーションやストーマサイトマーキングの場など,自然な流れで,患者が装具を見たり触れたりできる場をもうけるとよいでしょう.
解説
ストーマを造設後は,肛門や尿道によるコンチネンス(禁制)の機能が喪失します.そのため排泄物を一時的に貯留する生活用具として,ストーマ装具を使用することになります.手術後はどこからどのように排泄するのか,実際にストーマ装具を見せることで患者が落胆してしまうのでは,と心配になることがあるかもしれません.
しかし,患者が「何だかよくわからない」状況のまま,漠然とした不安を抱いているのであれば,正確な情報提供によって,安心を得ることにつながります.
不安は,心身の健康に影響を及ぼす要因によって,自己の存在や自己のイメージが脅かされた時にひきおこされる心理的反応です.知覚を鋭くし,危険な状況を知らせる信号として,正常な反応ともいえます.不安の程度は,3段階に区別されますが,その人のパーソナリティーや成熟度,過去の経験などによってあらわれ方は異なります(表1).
表1不安の程度2)
軽度や中等度である場合の不安の緩和には,患者自身が自己を洞察し,不安を解消するように働きかける方法と,鎮静や安楽をもたらす方法があります.また,先のことを予測して不安や心配を悩む予期的不安に対しては,予期的指導を行うことで,不安を緩和できる場合があります.
ストーマ装具を見せることで,排泄方法だけでなく,入浴方法など具体的な生活への影響について,質問が出てくることがあります.予期的不安がコントロールできる状況では,問題に立ち向かう準備となり,問題を処理する自信を強めることができます.
したがって,単に装具の説明をする場をつくるのではなく,患者の反応を引き出し,精神的支持や,うまく対処できそうだと思えるようかかわることが重要です.
[引用・参考文献]
- 1)診療点数早見表2012年4 月版.医学通信社,2012,597─8.
- 2)小島操子.看護における危機理論・危機介入.金芳堂,2004,26─33.
- 3)大井綱朗.皮膚科疾患.中川秀己編.中山書店,2001,42─7,(看護のための最新医学講座,19).
- 4)西出薫ほか.“ストーマケア技術の文献的考察とエキスパートオピニオン”.ストーマケア エキスパートの実践と技術.日本ET/WOC協会編.照林社,2007,44─6.
[Profile]
大溝 茂実 おおみぞ・しげみ
川崎市立井田病院看護部教育研修担当師長/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行