PAD患者と知らずに弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を行った場合の対策は?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「PAD患者に弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を行ってしまった場合」に関するQ&Aです。

 

清水貞利
大阪市立総合医療センター肝胆膵外科副部長
池田克実
大阪市立総合医療センター乳腺外科担当部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

PAD患者と知らずに弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を行った場合の対策は?

 

ただちに弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法は中止し、PADの病態について評価しましょう。

 

〈目次〉

 

常にPADを念頭に置いた対応を

末梢動脈疾患(PAD)をもつ患者に、深部静脈血栓症(DVT)予防を目的として弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法を行うことは、末梢の動脈血流障害を増悪させ、重篤な病態に進展させる可能性があり、一般的には禁忌と考えられています(1)。

 

そのため、深部静脈血栓症予防法を決定する際にPADの既往の有無を確認することは非常に重要となります。

 

PADと診断されていない患者でも高齢者糖尿病を合併している場合は注意が必要で、下肢痛や間欠性跛行の有無を事前にチェックするなど、常にPADを念頭に置いた慎重な対応が必要です。

 

早期の異常発見が重要

弾性ストッキング装着後または間欠的空気圧迫法開始後は、経時的に自覚症状(足趾のしびれ、疼痛、瘙痒感)の有無、他覚所見(皮膚の色調の変化、浮腫、びらんなど)の有無をチェックし早期に異常を発見することが重要となります(図1)。

 

図1弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法施行後のチェック項目

弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法施行後のチェック項目

 

下肢に壊死や潰瘍を認めた場合は、PADが合併している可能性を考慮し、ただちに弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法を中止します。

 

PADの可能性について検討するには、まず足関節血圧や足関節上腕血圧比(AB1)の測定が重要となります。

 

PADが疑われた場合には末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2)にもあるように、超音波ドプラ法やMR angiography、造影CT等各種画像検査を行い動脈の血流や狭窄の程度について評価を行います。

 

PADと診断されれば、ガイドラインにしたがって薬物療法、カテーテル治療を行うことになります。

 

その他の対処法としては、下肢を温めることにより血流の改善を図る、潰瘍部には局所の血流促進や肉芽形成の促進を目的とした軟膏や感染に対する抗生剤軟膏の塗布などが考えられます。

 

コラム術中体位と気をつけたい神経麻痺

きっちり足先まで履けていない場合には、先端のゴムによって足先の知覚障害を生じることもあります(図2)。早期に発見して、専門医に相談することが大切です。

 

図2起こりやすい神経麻痺(意識がない患者)

起こりやすい神経麻痺(意識がない患者)

 


[文献]

  • (1)平井正文,岩井武尚編:新弾性ストッキング・コ ンダクター静脈疾患・リンパ浮腫における圧迫療 法の基礎と臨床応用.へるす出版,東京,2010.
  • (2)循環器病の診断と治療に関するガイドライン.末 梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン 2014 年4月10日、日本循環器学会HP閲覧、最 新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご 覧ください。

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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