PAD(末梢動脈疾患)をもつ患者のDVT予防対策は?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「PADをもつ患者のDVT予防対策」に関するQ&Aです。
清水貞利
大阪市立総合医療センター肝胆膵外科副部長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
PAD(末梢動脈疾患)をもつ患者のDVT予防対策は?
〈目次〉
- 1.PAD患者の特徴
- 2.DVT予防はどう行う?
PAD患者の特徴
末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)には、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)とバージャー病(thromboangitis obliterans:TAO)があります。
PADをもつ患者に術後深部静脈血栓症(DVT)予防として弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を行うと、動脈の血流障害を引き起こす可能性があり、一般的には禁忌であると考えられています。
安静時の下肢痛や間欠性跛行などの症状を認める場合、症状がなくても足関節血圧が80mmHg未満、足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)が0.8未満の場合は、特に注意が必要であると考えられています(1)。
PADをもつ患者は一般的に抗凝固薬を内服していることが多く、術前は抗凝固薬を中止しますが、症例によってはヘパリンに変更し術直前まで抗凝固を継続することがあります。術後は出血の危険性がなくなれば(術後24~36時間後とされています)すみやかに、ヘパリンを開始することが望ましいと考えます。
ヘパリンは半減期が短く、中和剤(プロタミン硫酸塩)があり、なかでも低分子ヘパリン製剤は従来の未分画ヘパリン製剤と比べ出血助長作用が特徴です。またヘパリン誘発性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia:HIT)などは副作用も少ないとされており、比較的安全に使用することができると考えられています。
DVT予防はどう行う?
術直後はヘパリンを使用することができないため、足関節の自動もしくは他動運動を積極的に行い、うっ滞を防ぐことが重要です(図1)。
それ以外にも、
- ①十分な輸液
- ②下肢挙上
- ③下腿マッサージ(図2)
などがDVT予防対策として挙げられます(2)。
これらは、単独での有用性についての報告は認められていないため、組み合わせて慎重に対応することが必要です。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社