トラスツズマブ療法(看護・ケアのポイント)/乳がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、乳がん(乳癌)の患者さんに使用する抗がん剤「トラスツズマブ療法」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『トラスツズマブ療法(化学療法のポイント)/乳がん

トラスツズマブ療法

 

元木崇之
(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)

 

トラスツズマブ療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:患者さんが感じる副作用には、infusion reactionがあります。初回投与時は、心電図モニターパルスオキシメーター(SpO2モニター)を装着し、患者さんの状態を確認しよう。
  • ポイントB:初回投与時のinfusion reactionとして、38℃以上の発熱が出現する場合があるので、患者さんに説明しよう。
  • ポイントC:可逆性の心機能障害があるので、動悸息切れなどの心不全症状に注意しよう。

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! トラスツズマブ療法の注意点

投与前の注意点

投与前には患者さんの心機能に問題がないかを確認しましょう。足のむくみや、動悸、息切れなど、心不全症状がないか確認しましょう。

 

投与中の注意点

トラスツズマブ(ハーセプチン)は、アレルギー症状が比較的少ない薬剤ですが、infusion reactionとして発熱・悪寒・嘔気・頭痛などがみられる場合があります。投与中のバイタル変化や症状の訴えに注意しましょう。

 

トラスツズマブ療法のポイントA

  • 患者さんが感じる副作用には、infusion reactionがあります。初回投与時は、心電図モニターやパルスオキシメーター(SpO2モニター)を装着し、患者さんの状態を確認しよう。

 

トラスツズマブ療法のポイントB

  • 初回投与時のinfusion reactionとして、38度以上の発熱が出現する場合があるので、患者さんに説明しよう。

 

投与後の注意点

心肺機能の低下症状(下肢のむくみ、動悸、息切れなど)の出現がないか、観察しましょう。

 

トラスツズマブ療法のポイントC

  • 可逆性の心機能障害があるので、動悸・息切れなどの心不全症状に注意しよう。

 

トラスツズマブ療法の申し送り時のポイント

アレルギー反応は比較的少ない薬剤ですが、もし認められた場合は必ず伝えましょう。

 

また、投与中に発熱が生じる場合があるので、認められた場合は伝えましょう。なお、発熱が見られるのは、初回投与時のみの場合がほとんどです。

 

発熱があった場合の申し送り例

トラスツズマブ(ハーセプチン)投与開始50分で発熱が認められました。しかし、明らかな血圧低下・呼吸器症状の出現はなく、全量投与完了いたしました。
2回目以降の発熱出現の可能性は非常に低いと考えられますが、念のため観察をお願いします。

 

トラスツズマブ療法時の看護記録に書くべきこと

来院時の発熱の有無、下肢のむくみ・動悸・息切れの状況などを記載しましょう。

 

前回投与時の血管の色調変化や痛みの状況についても記載するとよいでしょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

トラスツズマブ療法では、初回投与時の発熱が比較的高く起こります。患者さんの来院時には、日常の体温の経過について確認しましょう。可能であれば、「抗がん剤日誌」のような手帳をお渡しし、日々の症状・熱型を記載してもらうとよいでしょう。

 

トラスツズマブ療法は、ほかの薬剤と併用して行われることが多い治療法です。その他の薬剤の症状も理解しておきましょう。

 

自宅近くで日常的な症状を相談できる「かかりつけ医」の有無についても、確認しておきましょう。

 

[関連記事]

 


[文 献]

 

 


[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
元木崇之
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

SNSシェア