熱いものに触れると思わず手を引っ込めるのはなぜ?|脊髄反射
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「反射」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
熱いものに触れると思わず手を引っ込めるのはなぜ?
目の前にボールが飛んできたときに無意識に目をつぶったり、熱い鍋に触ったときに思わず手を引っ込めたりする反応を、脊髄反射(せきずいはんしゃ)といいます。
もし、鍋がそれほど熱くなかったら、ちょっと熱いという感覚と、手を引っ込めようという行動の間には、皮膚で触れた感覚→感覚神経→中枢神経→大脳皮質→中枢神経→運動神経→骨格筋という過程があります。
すなわち、脳がちょっと熱いから、手を引っ込めようと判断して行われた行動ということになります。これを器官でたどると、皮膚→脊髄→脳→脊髄→筋という流れです。
しかし、鍋があまりにも熱いときには、このような経路で情報や命令が伝達されていては大やけどをしてしまいます。そのため、脊髄が脳の代役を務める脊髄反射が起こります。すなわち、脳にまで情報を送らず、脊髄が手を引っ込めろと指令を出すのです。
この指令は脳を経由していないので、無意識に行動されます。脊髄反射は、生体の安全を守るために備わっている緊急避難的な運動なのです。
脊髄反射にはほかに、膝蓋(しつがい)腱反射、排便・排尿反射、歩行反射などがあります。
なお、自律神経にもこうした反射があり、延髄が反射中枢となります。酸っぱいものを見ると唾液が出るのは、延髄による反射です。
MEMO膝蓋腱反射
ハンマーで膝を叩くと、下腿が跳ね上がる反射。脳出血や脳炎などの中枢神経障害で亢進し、錐体路症状といいます。反対に、脚気や末梢神経炎の場合には、反射が弱くなったり、全く現れなくなります。
MEMO歩行反射
新生児期にみられる原始反射で脇を支えて足を床につけるようにすると、左足を出したら次に右足を出すという、左右の足を交互に出す反射です。
※編集部注※
当記事は、2018年4月9日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版