慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんの聴診音
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
[前回の内容]
今回は、気道閉塞性疾患である「慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんの聴診音」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
COPDの恐ろしさはわかっていただけましたか?
一度なってしまうと、二度と正常な肺には戻らないというのは、ものすごく怖い疾患ですね。
タバコの吸い過ぎには、くれぐれも気をつけましょう!
実は、COPDが増悪する要因には、タバコ以外にも注意するものがあります。
ここで解説するので、聴診音と併せて覚えておいてください。
〈目次〉
症例:COPDの急性増悪が起こった患者さん
ここでは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんの症例について簡単に紹介します。自分の担当する患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。
【68歳、男性】
主訴:数日前から労作時の息切れを主訴に来院。
既往歴:昨年、インフルエンザ感染で、同様のエピソードあり。
喫煙歴:元喫煙者(50 pack years)。
画像所見:胸部X線では、肺が過膨張しているため、横隔膜は平低化し、心臓の下縁まで見えている。また、空気が溜まっているため、透過性が亢進し、血管の狭小化も見える(図1)。
図1COPDの急性増悪が起こった患者さんの胸部X線画像
身体所見: 体温 37.8℃、SpO2 89%(室内気)、呼吸数 20回/分、血圧 144/70mmHg、脈拍 86回/分。
聴診音①:前胸部右中肺野で聴いた音
ココを聴こう!
2秒~4秒、8秒~10秒:「ヒューヒュー」と「グーグー」という音
- 本症例では、「ヒューヒュー」という笛音と、「グーグー」といういびき音が混じって聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
- COPDの患者さんでは、呼気時にこのようにさまざまな音の高さ(周波数)の笛音やいびき音が聴こえます。また、呼気時の音が、吸気時にはピタッと止まっています。
聴診音②:背部右中肺野で聴いた音
ココを聴こう!
1秒~3秒、7秒~9秒:「グーグー」という音
- 本症例では、呼気全般に「グーグー」という強いいびき音と、「ヒューヒュー」という笛音が混じって聴こえるのがポイントです。
ナースへのワンポイントアドバイス
本症例の患者さんは、数日前に鼻汁や咽頭の痛みがあり、その後、呼吸困難になったことから、ウイルス感染に伴うCOPDの急性増悪と診断されました。
図1の画像所見は、重症のCOPDの患者さんや、COPDの急性増悪の患者さんでよく認める所見です。血管の狭小化、心臓の下縁が見える、横隔膜の平低化が見えるなどのポイントだけでも覚えておいてください。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疾患解説
- ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る
*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
協力:株式会社JVCケンウッド