慢性過敏性肺炎患者さんの聴診音
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
[前回の内容]
今回は、アレルギー性肺疾患である「慢性過敏性肺炎患者さんの聴診音」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
ここでは、慢性過敏性肺炎の患者さんの聴診音を紹介します。
鳥やカビが原因で発症する肺炎ってどんな音が聴こえるんですか?
普通の肺炎とは違った音なんでしょうか?
一般的な肺炎の場合は、水泡音や捻髪音が聴こえましたよね(参考:『肺炎(市中肺炎)患者さんの聴診音』)。
では、慢性過敏性肺炎の聴診音はどんな音なのか、実際に耳で確認してみてください。
〈目次〉
症例:一般的な慢性過敏性肺炎の患者さん
ここでは、慢性過敏性肺炎の患者さんの症例について簡単に紹介します。自分の担当の患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。
【69歳、女性】
既往歴:なし。
内服薬:なし。
現病歴:某年3月より乾性咳嗽が出現。同年7月には呼吸の際に、パチパチと胸の方から音が聴こえるのを自覚し、症状出現から10か月後に当院受診。
画像所見:両側中下肺野に網状影を認める(図1)。
図1慢性過敏性肺炎の患者さんの胸部X線画像
身体所見:体温 36.3℃、SpO2 96%、呼吸数 16回/分、血圧 135/85 mmHg、脈拍 70回/分。
両側下肺野背側で右優位に捻髪音(チリチリ、パリパリ)を聴取。
自宅は築5年で、カビはなかったが、よく使用している離れの茶室内の畳にカビが多数生えていたことが判明。鳥関連抗体(抗ハト、抗セキセイインコ、抗オウム)は陰性だが、抗トリコスポロン抗体陽性のため、真菌(トリコスポロン)の持続曝露による慢性過敏性肺炎と診断。
聴診音:右下肺野背側で聴いた聴診音
ココを聴こう!
1秒手前、2秒前後、4秒、5.5秒、9秒付近:「チリチリ、パリパリ」という音
- 本症例では、「チリチリ、パリパリ」という捻髪音が聴こえるのがポイントです。この音に気付きましょう。
- 専門的に聴いてみると、各吸気時間の真ん中辺りで、捻髪音が最も強く聴こえているのがわかります。
ナースへのワンポイントアドバイス
慢性過敏性肺炎の患者さんは、両側下肺野背側を中心に聴診しましょう。
また、過敏性肺炎の疑いがある患者さんは、吸入抗原の曝露の可能性を常に考えましょう。
- 急性過敏性肺炎の疾患解説
- 慢性過敏性肺炎の疾患解説
- ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る
*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
協力:株式会社JVCケンウッド