体温測定の意義と注意点は?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は体温測定時の意義と注意点について解説します。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

〈目次〉

 

体温測定の意義

人は体温を一定に保たないと生きて行けない恒温動物であり、熱の産生(産熱)と放散(放熱)によって一定の体温を維持しています。

 

視床下部にある体温調節中枢には、放熱中枢(温中枢)と産熱中枢(冷中枢)があり、皮膚の温度受容器(温点、冷点)で感受されたもの(神経経路)や体温調節中枢を流れる血液温度(体液性経路)をセットポイント(中枢の基準値)と比較して、産熱と放熱の調節を行っています。

 

体温の上昇(発熱)は、多くの疾患の徴候や症状であり、体温測定を行うことによって異常を早期に発見することができます。

 

体温計の種類

体温は個人差以外にも、年齢、運動、食事、入浴、日差(日内変動)、月経周期、精神的な感動や興奮、安静や睡眠などによって変動します。したがって、これらの生理的な変動要因を考慮しながら、測定部位や時間を決定します。その測定部位や計測時間に応じた体温計を選択します(図1)。

 

図1体温計の種類

体温計の種類

 

腋窩検温

  • 測る前は、必ず腋窩の汗はしっかりと拭きとっておきましょう。汗があると、体温計が密着せず、放熱によって皮膚が冷やされてしまい、正しい値となりません。
  • 腋窩に体温計の先端が触れるよう、体温計の先を下から上に向けて押し上げるようにはさみます(図2部位による温度分布参照)。
  • 手のひらを上向きにすると脇が閉まるので、検温部位が密閉され放熱を避けられます。

図2腋窩検温

腋窩検温

 

直腸検温

  • 直腸検温は手術中に選択される方法です。深部検温に近い測定値を得られますが、不快感や羞恥心を伴うため、プライバシーに配慮します。
  • 呼吸を促し、体温計を直腸内にゆっくりと挿入します(図3)。

図3直腸検温

直腸検温

 

耳式検温

  • 乳幼児に、よく使われる方法です。の中から放出している体温に相当する赤外線を体温計が感知する測定です。
  • 外耳道が短く太いため正確に測定しやすい方法です。
  • とくに注意することは、体温計のプローブカバーを必ず着け、耳の奥(鼓膜)に向けて入口をぴったりふさぐように深く入れることです(図4)。

耳内温

耳式検温で測定している「耳内温」とは、耳の中の鼓膜及びその周辺の温度のことです。

 

図4耳式検温

耳式検温

 

口腔検温

図5口腔検温

口腔検温

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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